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「おい!待ちやがれ!」
頭に乗っかっているリヴァレーをエラリスへ投げ渡し、走って追いかけようとするフィニス。自分の横を通り過ぎようとしたその瞬間、フィニスに向かってバリルシウスが槍を構える。
「フィニス!」
ニティアの声と同時にただならぬ殺気を感じ取ったフィニス。走っていた足を止め、後ろに飛ぶことで間一髪バリルシウスの槍をかわした。
ビュン!
目の前を通り過ぎる閃光。地面が抉れるほどの槍撃が飛んできていた。
『アニタ様の命だ。ここから後ろへ行けると思うなよ』
「アニタって……白髪の魔女の名前か?お前そんな傷だらけで……仲間割れでもしてたんじゃねーのか?」
バリルシウスを睨みつけるフィニス。傷だらけのバリルシウスの元へやってきたアルドムリアが杖をかざした。
「魔族の……回復魔法……」
見たことのない魔族が使う治癒の魔法に驚くアルテア。
魔女から供給される魔力量を増やしているのか、自分の魔力を分け与えているのか……白い光がバリルシウスの周りを漂い、傷が一気に癒えていった。
『私達はアニタ様に生み出された存在です。アニタ様の考えに反することなどありません。それに……アニタ様が死ねと命じるのであらば、この命などいくらでも捧げましょう』
バリルシウスの周りを漂う光が消える。傷が癒えたのだろう。バリルシウスは力強く槍を空高く回転させ、再びフィニス達を睨みつけた。
『そういうことだ』
「……」
じっとバリルシウスとアルドムリアを見つめるルシオ。
「ルシオ?」
魔族から視線を動かさず、弓を握りしめたままルシオに尋ねるエラリス。
アクリムでのカエデの言葉を思い出していたルシオがポツリと呟く。
「……ただただ空中に浮かび、何か祈るような仕草をしていた魔族と……かなりの重装甲で大きな槍を武器とした魔族……」
「!?……もしかして……」
その言葉が聞こえたアルテアが視線を魔族から移さずに反応する。
「あぁ。こいつらがアクリムを襲撃した2体の魔族ってことみたいだな」
『それがどうした』
バリルシウスがルシオを見ながら盾を上空に構える。
ガキーン!
上空から飛びかかってきたフィニスの攻撃。一切見もせずに盾で攻撃を防がれたフィニスが、防がれた反動で再び後ろへ飛び、ルシオの近くに着地する。
「どれだけの人間が死んだと思ってんだ……」
『アニタ様の命だ。知らぬ』
「人の命を……ふざけんじゃないわよ……!」
バリルシウスの言葉に怒りの表情を浮かべるニティア。杖を構えて術式を構築し始める。
『アニタ様はあなた方を【殺せ】ではなく、【奥の部屋へ連れてくるな】と命じました。誠に申し訳ございませんが、皆様しばらく大人しくしていただけませんか?』
「そんな殺気剥き出しの魔族を前に、そんなことできると思う?」
術式の構築が終わったニティアが杖を2人に向ける。
『致し方ありませんね』
アルドムリアが術式の構築を始めると同時に打ち出されるニティアの魔法。それを合図に全員が戦闘体勢に入った。
『ふん!』
アルドムリアに放たれた魔法をバリルシウスが盾でルシオへと弾き返す。
それと同時に手に持った槍を盾を構えているルシオに向けて放つ。槍先から放たれた光の閃光が、弾き返されたニティアの魔法の後ろを追いかけるようにルシオへ向かっていった。
跳ね返された魔法を盾で受け止めるルシオ。その瞬間を狙い、フィニスが術式を展開しているアルドムリア目掛けて突っ走る。
それを見ていたアルテアがフィニスに速度上昇の補助魔法をかけ、エラリスがフィニスの攻撃に邪魔が入らないよう、バリルシウスへ矢を放ち、同時にリヴァレーの力を借りて部屋一面に水を広げた。
ニティアはふわりと上空へ浮かび上がり、また別の術式を構築し始める。
一撃目の魔法。跳ね返されたニティアの魔法をそのまま盾で吸収し、2撃目の衝撃に備えるルシオ。
バリルシウスから放たれた攻撃は盾に当たる直前に分散し、ルシオを除く4人の元へ分かれていった。
「なにっ?!」
「え?!」
後ろからの攻撃に一瞬身体が止まるフィニス。
「間に合って……!」
バキーン!
バリルシウスの攻撃が当たる直前……全員の目の前に展開されたアルテアの防護結界。全員の槍撃による攻撃を防いだものの、一瞬動きが止まったフィニスに対してバリルシウスが矢の攻撃は無視し、横殴りにした盾で脇腹を思い切り叩きつける。
「うぐっ!」
咄嗟に間に剣を入れることで直撃は防いだものの、ダメージを0にできるわけではない。そのまま吹き飛ばされ、地面を転がるフィニス。
「フィニス!」
吹き飛ばされたフィニスを上空から見ていたニティア。アルテアが急いで回復しに向かってはいるものの、フィニスが吹き飛ばされたことにより頭に血が登るニティア。構築していた術式にさらに上乗せして魔力を込め始める。
そんなことを気にも留めず、目を閉じたままバリルシウスに小さく礼を言うアルドムリア。
『これで休んでいただけるでしょう』
そう言って杖を下ろし、ゆっくりと目を開ける。
「あんたら……ふざけんじゃないわ……よ……?」
魔法を撃ち出そうとした瞬間……構築した術式が崩壊してゆく。
「なんで?!」
ふわふわと浮いていた身体も安定しなくなり、バランスを崩し始める。
「きゃあ!」
浮遊を維持できなくなり、真っ逆さまにニティアは落下していった。
コメント
1件
**はる。だわ。** 108話読み終えた!いよいよアクリム襲撃の魔族2体と直接対決か…。バリルシウスの「アニタ様の命だ、知らぬ」の冷徹さにゾッとしたよ。でもニティアが「人の命をふざけんじゃないわよ!」って怒り爆発させたのがめっちゃ共感。戦闘も連携が熱いんだけど、最後の術式崩壊と落下が不気過ぎる…続き気になる!🔥