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【3】正解のない日常
太宰さんは珍しい行動をしていました。
執筆していたのです。
太宰さん自身のお能力の名前のタイトルで。
何か考えがあるのでしょう。
太宰さんのことです。また自分を責めているのでしょうか。
僕だって、過去の自分を責めることはあります。
汚れてしまった過去を綺麗にするなんて、そんな想像は叶わないです。
一度あったことは、そのまま生涯抱えていくのです。
それがたとえどんなに辛いことであったとしても……。
宿命……運命は変えられない。
「人間って…なんだろう。」
そんなことを口に出すので、その場にいた乱歩さんも少し反応しましたが、
自分から話しかけようとはしませんでした。
「大概、私も人間失格なのだよ。人間でなくてもおかしくないと思う時点で、人間失格だ。この物語の彼は私ではないし、私も彼ではないけれど、何処か、共通点があるような気がするんだよ。私はやっぱり、人間失格だ。」
「太宰は人間だよ。」
「太宰さんは人間です。」
バッチリ息が揃いました。
否、太宰治という人物は、紛れもなく人間でありました。
人間とは思えない思考の深さと感情を持ってはいますが、
人間らしさもしっかりあります。
秘密を隠したいのも人間です。
苦い過去を思い出したくないのは僕も同じです。
たとえどんな過去を持っていたとしても、
太宰さんは紛れもなく人間です。
「ふふっ、二人の息が揃うなんて、珍しいこともあるものだね。」
「当たり前です。何故なら武装探偵社員皆んな、異能力者同等の力を持っていますから。」
「敦、それ僕に配慮してくれたんだよね?」
「勿論です。」
「そうだね。その通りだ。私は人間だ。過去がどうであれ、執筆している物語がどうであれ、私自身は人間だよね。」
「太宰さんは、何時までも人間ですよ。」
「……まぁ、死ぬまでは人間かな?」
「絶対に死なせませんよ⁉︎」
「それはどうかな?何時かこの小説を遺書にして君に渡すかもね。」
「その日が来ないことを祈っています、、、。」
太宰が遺書を渡す前に自殺に成功したのは、
38歳の頃の話であった。
太宰治という人物は、人間ではなかった。
『嘘』だったのだ。
その裏には、津島修治という、別の人物が隠されていた。
(あぁ、私は、本当は死にたくなかったのだね。
自分に嘘をついていたんだ。全く、これは汚れた嘘だね。
私が、付きたくもなかった嘘だ。)
『生きたい。』
それは、決して嘘ではなかった。
最初で最後の剥き出しの本音は、その言葉だった。
闇ばかりが目立つから、私は人間ではないことにした。