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「なぁ」
昼休み。
机に突っ伏していた神崎玲央(かんざき れお)は、隣の席の男を見た。
「世界、明日終わるらしいぜ」
窓際。
イヤホンを片耳だけつけたまま、三枝湊(さえぐさ みなと)はダルそうに顔を上げた。
「……は?」
「ニュース見てねぇの?」
玲央がスマホを見せる。
『巨大隕石、地球衝突確定』
『人類滅亡まで残り二十四時間』
『政府、避難勧告を――』
湊は数秒見つめたあと、また机に伏せた。
「じゃあもう数学やんなくてよくね」
「そこ?」
玲央が吹き出す。
クラスは大騒ぎだった。
泣いてる女子。
告白し始める男子。
動画を撮ってる奴。
でも湊だけは異常なくらい通常運転だった。
玲央は笑いながら言う。
「お前ほんとメンタル終わってんな」
湊:「うるせぇチャラ男」
玲央:「チャラ男言うな」
玲央は高校内でも有名だった。
顔が良い。
距離が近い。
コミュ力バグ。
女子人気もエグい。
でも本人は恋愛に興味が薄く、いつも適当に流している。
対して湊は、“静かなモテ男”だった。
話しかけづらい。
愛想悪い。
でも顔が良い。
結果、めちゃくちゃモテる。
玲央はよく言っていた。
「お前みたいな無愛想がモテるの理不尽だろ」
湊:「知らん」
そんな二人が仲良くなったのは、高一の春だった。
玲央が勝手に話しかけ続けた。
湊は最初、完全に無視していた。
でも。
気付けばずっと一緒にいた。
昼飯も。
帰り道も。
休日も。
距離感がおかしいくらい。
「てかさ」
玲央が椅子ごと湊に寄る。
肩がぶつかる。
玲央:「最後の日だぜ?」
湊:「近い」
玲央:「思い出作ろうぜ」
湊が面倒そうにため息をつく。
「何すんの」
玲央はニヤッと笑った。
「学校サボる」
湊:「最低」
でも。
湊は断らなかった。
二人は制服のまま街へ出た。
もう世界は半分壊れていた。
道路は渋滞。
多くの店は閉まっている。
泣いてる人。
叫んでる人。
空には、デカすぎる隕石。
現実感がなかった。
玲央はコンビニでアイスを二つ買った。
「ほい」
湊:「サンキュ」
公園のブランコに座る。
男子高校生二人。
世界終わる日にやることじゃない。
玲央が笑う。
「青春って感じ」
湊:「どこが」
玲央:「え、俺ら今めっちゃエモくね?」
湊:「自分で言うな」
でも。
湊は少し笑っていた。
玲央はそれを見て、満足そうに笑う。
「お前さ」
湊:「ん?」
玲央:「最近ちゃんと笑うようになったよな」
湊は黙る。
玲央は続けた。
「最初、死ぬほど感じ悪かったもん」
湊:「お前がウザかった」
「傷付いたわ〜」
玲央は大げさに胸を押さえる。
湊が少し吹き出した。
その瞬間。
玲央は固まる。
「……え」
「何」
「今の、女子なら全員惚れてる。」
湊:「キモ」
玲央:「お前ほんと顔面の暴力だな……」
湊は呆れた顔をする。
でも。
その空気が、妙に心地よかった。
夕方。
海へ行った。
人はほとんどいない。
空が赤い。
巨大な隕石が近付いている。
玲央は防波堤に寝転がった。
「なぁ湊」
湊:「ん?」
玲央:「怖くね?」
湊は少し黙った。
波の音。
風。
世界が終わる前とは思えないほど静かだった。
「……まぁ」
小さい声。
玲央は笑う。
「だよな」
数秒沈黙。
そして。
玲央が呟く。
「俺さ」
湊:「ん?」
玲央:「お前いてよかったわ」
湊が玲央を見る。
玲央は空を見たままだった。
「高校ん時、マジで友達いなかったし」
湊:「嘘つけ」
玲央:「いや浅い奴ばっかだった」
玲央は笑う。
「でもお前、なんかずっと隣いたじゃん」
湊は少し目を細める。
「……お前が勝手に来ただけ」
玲央:「それな」
玲央が笑った。
そして。
玲央:「ありがとな」
その言葉だけ、少し真面目だった。
湊は何も言わない。
でも。
しばらくして、小さく言った。
「俺も」
玲央が目を見開く。
「え」
湊:「……お前いて、楽しかった」
玲央が固まる。
数秒後。
「待って無理」
湊:「何が」
「今のセリフ惚れる。」
湊:「うるさい」
湊が玲央の顔を押す。
距離が近い。
近すぎる。
でも二人とも、それが普通だった。
夜。
世界終了まで、あと十分。
二人は海沿いに座っていた。
寒い。
玲央が欠伸する。
「眠」
湊:「こんな時に?」
玲央:「いやだって明日ないし」
湊が少し笑う。
玲央はふと聞いた。
「来世でも会うと思う?」
湊:「……知らん」
玲央:「会ったらまた友達な」
湊は少し黙ったあと。
「多分、お前また話しかけてくる」
玲央が吹き出す。
「確かに」
その時。
空が光った。
隕石。
世界が白く染まる。
風が吹く。
玲央は最後に笑った。
「じゃ、またな湊」
湊は静かに答える。
「……またな、玲央」
そして。
世界は終わった。