テラーノベル
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昇降口。
「じゃあ、俺は保健室行ってくる」
赫が小さく言う。
分かってる、って顔で
黄が頷いた。
「うん。一緒に行こ」
瑞も手を振る。
「終わったら迎え来るから!」
翠は、その後ろで静かに立っていた。
——赫ちゃんは守られてる
——今日は、安全な場所に行く
羨ましい、なんて思っちゃいけない。
そう自分に言い聞かせて、翠は歩き出す。
日直だから、と言い訳をして廊下の角で、三人と別れる。
「……行ってきます」
小さく言って、教室のドアに手をかけた。
その瞬間。
ばしゃっ。
冷たい水が、容赦なく頭から降りかかる。
「——っ!?」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
制服が重くなる。
前髪から、水が滴り落ちる。
教室の中で、笑い声。
「うわ、びしょびしょ」
「朝から汚ね」
バケツが、床に転がっていた。
翠は、立ち尽くす。
心臓が、どくん、と大きく鳴った。
——やっぱり
——俺は、守られてない
「保健室行けよ」
「病人なんだろ?」
誰かが言う。
でも、それは“心配”じゃない。
追い払うための言葉。
翠は、何も言えずにドアを閉めた。
廊下に出た瞬間、
一気に力が抜ける。
制服の袖から、水が落ちていく。
——赫ちゃんだったら
——今頃、みんながついてる
そう考えてしまった自分が、
一番嫌だった。
廊下を歩く足が、少しふらつく。
そのとき。
「……翠?」
後ろから、聞き覚えのある声。
振り返ると、
黄と瑞が立っていた。
赫を保健室に送った、その帰り。
「……どうしたの、その濡れ方」
黄の声が、低くなる。
瑞は一瞬で察した。
「……やられた?」
翠は、反射的に首を振る。
「ちが……っ」
でも、水が滴る制服が、
全部を物語っていた。
「……俺らが、赫っちゃんを送ってる間に」
黄が、ぎゅっと唇を噛む。
「危険だから、送ったのに」
瑞の声が震える。
「次は、翠にぃが……」
翠は、視線を落とす。
「……大丈夫だから」
——また、それ
黄が、翠の前に立った。
「大丈夫じゃない」
強くは言わない。
でも、逃がさない声。
「今日は……」
「一緒に保健室、行こ」
翠は、一瞬だけ迷った。
——俺が行ったら
——赫ちゃんの場所、奪うみたいで
でも。
制服が冷たすぎて、
体が言うことを聞かなかった。
瑞が、翠の袖を引く。
「ほら。風邪ひく」
三人で、保健室へ向かう廊下。
赫のために用意された“安全”に、
翠は、偶然、滑り込む形になった。
でも。
——まだ
——気づかれてない
これは、
“ついで”だから。
翠は、そう思いながら歩いた。
コメント
1件

進歩した!!! えでもまだまだあるよな( 喘息のこと言ってないんかな 普通にさ、赫っちゃんと翠っちゃんのクラスメイトの息の根を止めたい((( いつも通り続き全力待機なう(