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「え……と、ありがとう? 私何かしたっけ?」

「あーなんで! 助けてくれたじゃん! 何それ、自慢かよ! それとも、ぶっ倒れて記憶でも飛んだの!?」


ルフレは入ってくるなりそうそう暴言を吐くと私の横になっているベッド際まできて椅子にガッと座った。

そして、そのまま足をぷらぷらとさせる。

相変わらず、態度がでかいなあ……と私は苦笑いを零すしかなかった。

しかし、ここで喧嘩をしては駄目だと私は心を落ち着かせると、ルフレの方に向き直した。

すると、ルフレはふいっと顔を背けてしまう。そこで私は、さっきのお礼が気に入らなかったのかな。と思ってしまった。きっと素直になれないだけなんだよね。と勝手に解釈し、口を開く。

だけど、私が言葉を紡ぐ前に、ルフレが口を開いた。


「傷は、どうなの?」

「心配してくれるの? 優しいじゃん、ありがとう」

「え? だって死んだら僕達の責任になるじゃん」


と、ルフレはきょとんとした顔で言った。その顔から彼が本気でそれを言っているのだと私は思わずゾッとした。

本当に、私の心配ではなく自分たちの心配をしているのだと。

まあ、子供だから純粋というか無垢なところと言うか、配慮できない部分もあるのだろうと私は呆れつつも、自分の身体を見る。

先ほど、ブライトが包帯を取り替えてくれていたのだ。その時に、怪我の具合を教えてくれた。まず、腹部だが、少し痛むものの動けないという程ではない。

だから大丈夫だよ。と言ってやれば、ルフレは小さく良かったと呟いた。彼は聞えないつもりで言ったのだろうがはっきりと聞えてしまった。

その言葉に思わずにやついてしまう。


(好感度は10か……でも、出会ってすぐに3にあがって、報酬で5だから……)


彼の好感度を確認すると10を示しており、足しても数が合わないことに私は気がついた。だから、きっと先ほどの会話で上がったのだろうと私は結論づけ、機械音を聞き逃しただけなのだろうと私は納得することにした。


「そういえば、ルクスは?」


私がそう問うと、ルフレは眉間に皺を寄せダンと床を踏む。


「僕がせっかくお見舞いに来てあげたっていうのに、何さ! ルクスの方が良いって言うの!? 僕でも良いじゃん別に。僕もルクスも変わらないでしょ」

「そういう意味じゃなくて……何処に行ったのかなあって」

「ブリリアント卿とあの狼の調査に行ったの。ていっても、この屋敷の人に聞き込み調査って感じだけど」


成る程。と、私は納得する。

確かに、それならルクスの方が適任かもしれない。と、思っていると、ルフレは更に声を荒げた。

どうやら、私がルクスのことを話題に出したことについて怒っているようだった。

それにしても、ルフレは感情が豊かだなあと私は思った。ルクスの方が兄というのもあるけど大人っぽいと言うか、子供にしては落ち着いていような……まあ、双子だからそこまで大差ないけれど。


「もしかして怒ってる?」

「え? なんで? もし、僕が怒っているっていう風に見えてるんだったら、聖女さますっごく目悪いと思うよ? 眼球取り替えた方が良いと思う」

「ねえ、もうちょっと他の言い方ないの?」


私は思わず苦笑いを浮かべながらそう言えば、ルフレはムッとした表情で私を見つめてくる。そして、何かを言い返そうと口を開こうとしていたが、結局何も言わずに口を閉じる。

毒舌過ぎる……本当に。

そう思いつつ、私はルフレをじっと見つめると、ルフレは視線を逸らす。

完全に拗ねているのだろう。


「ルフレは怪我してない?」

「僕が怪我するわけないじゃん……してるのは、聖女さまと……ルクスだけだし」


ぼそりとそう呟くと、ルフレは顔を俯かせる。

そんな彼を慰めるように私は手を伸ばすと、彼はその手を掴んで自分の頬に当てる。

甘えたいのか、それとも寂しいのだろうか。

そう思っていると、彼はがぶりとわたしの手に噛みついた。


「いっったぁあああッ……! 何すんのよ!」

「ハハッ! ひっかかった、引っかかった~!」


私が痛みで叫ぶと、ルフレはケラケラと笑う。

その様子に私はむっとした表情を向けるが、彼は気にせず私の顔を見る。

その顔が妙に近くて、私の心臓は大きく跳ね上がる。すると、ルフレはニヤリと笑って言った。


「聖女さまってからかいやすくて、ほんと楽しい」


その言葉を聞いて、私はかあっと顔が熱くなるのを感じる。

それを誤魔化すように、私は「からかうんじゃない」と咳払いをし言う。


(わー何子供相手に顔赤くなってるの私!? 相手は子供よ! 確かに攻略キャラで顔はイケメンだし、声も甘いしかわかっこいいし……!)


と、心の中で叫んでいると、いつの間にかルフレはボリボリとお菓子を食べ始めていた。


「それ、私のお見舞いのお菓子じゃない!?」

「いいじゃん、どうせ僕の家で作ったものだし。また作って貰えばいいだけじゃん」


ルフレはそう言ってパクパクと食べ始める。その姿に私は呆れつつも、ルフレにとあることを聞いてみた。


「ねえ、ルフレって……魔法苦手だよね?」

「え……」


ルフレにそう聞くと、彼は驚いた表情を浮かべていた。何故分かったんだというような顔。

やっぱり、ルフレって魔法の扱いが苦手なんだなあと私は確信した。

というのも、ゲーム内で彼が魔法を使ってるところなんて見たことがないからだ。

彼って攻撃系の技が得意じゃなかった気がする。いや、魔法が上手く扱えず、魔力が少ないことで彼は魔法を使うことを嫌っていたのだ。兄と比べられるから。

ルフレは、隠すように何で?と質問を質問で返してきた。

きっと、バレたくなかったのだろう。

ちらりと見れば、好感度の数値がチカチカと輝き始めていた。私の答えようによってそれは下がりかねないと、私は思った。


「ううん、ただちょっとね。狩りをしているときとか、逃げるときルフレは弓矢ばかりだったから。魔法が苦手なんじゃないかなって」

「……別に。魔力が勿体ないだけ」


と、素っ気なく答えるルフレだが、少し動揺しているのは目に見えてわかった。

私は思いだしたことがある。それは、ルクスとルフレでは圧倒的にルクスの方が好感度が上がりやすかったこと。また、ルフレの方が好感度が下がりやすかったことだ。

活躍で言えば双子であるのに、ルクスの方が多くゲーム内でも優遇されていたのか見せ場が多かった。そのため、ルクスを褒めるイベントや言葉が多く、その言葉を選択するたびルフレの好感度は下がっていた。


(私には兄弟がいないし、双子でも下の子でもないから何も分からないけど……)


もし、自分よりも優秀な兄や姉がいたら? どれだけ努力しても似せても、それに届かないとしたら?

それがどれだけ苦しい事なのか、私は知っている。


「隠さなくて良いよ」

「だから、魔力が勿体なくて使わなかったの! しつこいな!」


そう、ルフレが叫ぶとともに彼の好感度が1下落する。

ルフレにとって、魔法を使えないというのは恥だったらしい。

そんなルフレに私は笑いかけると、彼は不機嫌そうな顔をしてそっぽを向いてしまった。

そして、ルフレはお菓子を一気に口に詰め込むと、立ち上がる。どうやら帰るようだ。


「何処行くの?」

「聖女さまが意地悪するから、居心地悪くなったの!」

「ええ、もうちょっと話そうよ。リュシオルも出て行っちゃったし、話し相手がいないの」

「寝てれば良いじゃん! けが人なんだし!」


と、ルフレは言いながら扉を開けようとするが、彼はドアノブに手をかけた瞬間ピタリと止った。如何したのかと、私が問えば、ああ、もう! と地団駄を踏んで私の方に向かってくる。

そうして椅子に再びガッと座り直し私に顔を近づけてきた。

その顔は真っ赤で、今にも泣きそうで、子供らしい顔だった。


「そうだよ! 僕は、魔法が苦手なんだよ! ルクスと違って、僕は魔法が苦手! 何か文句ある!?」


そういって、私を睨みつけるようにそう言うと彼は黙り込んでしまう。きっと、魔法が苦手だという事が恥ずかしくて仕方がないのだろう。

確かに、ルクスとルフレでは魔法に対する向き合い方が違った気がする。

ルクスは、バリバリ魔法が使えたし、前にブライトの話を聞いたところでは子供で魔法をしっかり操れ形に出来るものは少ないのだとか。だから、ルクスは所謂天才肌なのだろう。

それに比べてルフレは……

そんなことを考えながらルフレを見ていると、彼はまた私を睨み付けて、文句があるのかと再度聞いてきた。

だから私は、首を横に振って彼を宥めるように言った。


「辛かったんじゃないかって……だから、私でよければ話を聞くよ」



乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います

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