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「こんなにも想ってくださる部下がいて、店長はとてもお幸せだと思います。……ですよね?店長?」
そのまま視線は、私の少し先に向けられる。
どういうことだろう。
まるで店長がこの場にいるような…
まさかっ……
そこで私には今までの彼女の行為が全て理解できた。
何故彼女がわざわざ耳元で店長のことを悪く言ったのか。そして、急に本性を隠したのか。
最悪の事態が私の脳裏に浮かび上がり、ぎこちない首で振り返った。
そんなはずない、と僅かな希望を抱きながら。
「っ……!!代田…店長……」
しかし、その考えは脆く崩れ去った。
薄暗くて表情はよく見えなかったが、物陰にひっそりと隠れながら、こちらの様子を伺っている姿があった。
「どう…して…ここに…。」
「は…ははは…いやー…財布を忘れちゃってね…明日休みだから、ないと困るし…この時間ならぎりぎり遅番の人がいるかなーと思って慌て来たんだけど…タイミング…悪かった…みたいだね…」
何とも店長らしい理由だな、とぼんやり思いながらもまだ頭が付いていかず、立ち尽くしてしまう。
彼女は全部気づいていたんだ。店長が近づいていることに。
そうとも知らずに私は…
さっき自分自身で言った言葉が脳内でリピートされる。
今更、心臓の音がうるさく鳴り響いてくる。
「あー…えっ…と…」
恐らくそれは向こうも同じだろう。気まずい沈黙に支配される。
そんな中、彼女だけはいつも通りだった。
「ふふ、店長ったらおっちょこちょいですね。お店の鍵は藤塚さんが持ってますからお願いしますね。では、お疲れさまでした。」
「えっ…帰るんですか!?」
思わず反射的に引き留めてしまう。この状況で店長と2人っきりになるのは気まずかった。