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朱音と神楽坂の出会いは、遡ること高校時代。二人は同じ学校に通っていたが、当時の朱音は今のように冷静で落ち着いた性格ではなく、心を閉ざし、周囲との関わりを極力避けていた。彼女の目には、常に鋭さがあり、同級生からは「近づきがたい存在」として恐れられていた。
一方、神楽坂はいつも明るく、笑顔を振りまく存在だった。彼は分け隔てなく接し、朱音のことを気にかけていた。
ある日、放課後の校舎裏で、朱音が一人座っているのを見かけた神楽坂は、何気なく彼女に声をかけた。
「朱音、また一人か?誰かと話してみたらどうだ?」
彼の言葉に、朱音は一瞬だけ驚いた顔を見せるが、すぐに冷たく言い放つ。
「放っておいて…私に近づくと、あなたも傷つくわ」
神楽坂はその言葉に微笑みながらも、朱音の悲しみを見逃さなかった。彼はあえて距離を詰めず、優しく言葉をかけ続ける。
「そんなことはないよ。俺には分かるんだ。朱音が本当は一人じゃいたくないってこと。」
それから、神楽坂は少しずつ朱音との距離を縮めていった。彼は決して無理強いせず、朱音が話したい時にだけ会話を交わし、彼女のペースに合わせることを心掛けていた。
神楽坂のそんな態度に、次第に朱音は心を開いていくようになる。いつも一人で過ごしていた朱音にとって、神楽坂の存在は初めて「安心できる場所」だった。神楽坂はいつも笑顔で接してくれ、その笑顔が次第に朱音の心に暖かさをもたらしていった。
ある日、二人は放課後の帰り道で一緒になることが多くなり、ふとした会話から互いの過去について話すようになる。
「私、子供の頃に父を…」朱音が震える声で話し始めた時、神楽坂は真剣な眼差しで彼女を見つめ、そっと手を握った。
「それでも、君は一人で痛みを抱えてここまで来た。それはすごいことだと思う。だから、もう一人で背負わなくていい。」
神楽坂の言葉に、朱音は胸が熱くなり、涙がこぼれそうになるのを堪えた。自分を恐れず、むしろ守ろうとしてくれる神楽坂の優しさに、朱音は次第に惹かれていく。
それ以来、二人はますます親しくなり、一緒に過ごす時間が増えていった。いつしか朱音の心の中に、神楽坂への特別な感情が芽生えていた。しかし、その感情をどう表現すればいいのか、朱音は戸惑っていた。