【能力者名】 栗毛色あるは
【能力名】 わたしのR
《タイプ:友好型》
【能力】 自殺衝動を吸い取る能力
【以下、細菌達の記録】
《昼休み、米津高校二年A組の教室にて》
私は栗毛色あるは、相手の悩み事を聞くことで 自殺衝動を吸い取ることができる能力
「わたしのR」を持つ可愛い可愛い高校二年生女子だ。
小テストが終わり、私はいつものように私の席に並ぶ死にたいやつらの相談事を聞きながらメロンパンをかじっていた。
ふと、私の前に珍しい客が来た。
米津高校現代文教師で私の元担任、切名旅行先生だ。
「あれ、めずらしいですね。先生もなんか
相談ですか?」
私は珈琲牛乳を飲みながら言った。
「あぁ、違う違う。一年担当のロカ先生から
頼まれてな。なんでも《制御不能型》の能力で悩んでる女子生徒がいるらしくて、その子が栗毛色の話を聞きたいそうだ。」
それを聞いて私はうーーんとうなった。
「私の話とかあんま参考にならないっすよ?」
私は珈琲牛乳を飲みながらそう言った。
実際、私は能力の専門家でもプロのカウンセラーでもない。ただ自殺衝動を吸い取ること
ができるだけの人間ダイソンに過ぎないのだ。
「もちろん、無理にとは言わない。邪魔して悪かったな。あんまり無茶しちゃ駄目だぞ。人より心や能力が強いからって無理していい理由にはならないからな。」
そう言って切名先生は去ろうとした。
「いや……別にその子に会ってもいいですよ、暇だし……。」
私はそうやって切名先生を引き留めた。
私も元《制御不能》型だから能力をコントロールできない苦しみはよく知っていた。
最悪、その子の自殺衝動を吸ってあげる
くらいはできるだろうと考えたのだ。
「……わかった、そしたらロカ先生に話して
今日その子と放課後話す時間を設けてもらうとするよ。ありがとな、栗毛色。」
そう言って切名先生は教室から去っていった。
その後私は、残りの相談者7人の自殺衝動を
吸い取り、眠くなりそうな昼休みの授業を
終え、放課後、第2理科室にいる《制御不能型》の女の子に会いに行った。
《米津高校 第2理化室の影の中にて》
「ふわぁあぁ、ここなら能力者である俺も
含めて誰にも話を聞かれないから安心しなー。んじゃ、先生はカップうどん食いながら
でんじろう先生のYoutube チャンネル見てっから終わったらこのスイッチを押して影
から出てくるように、そんじゃ、あとは若い二人でごゆっくりー。」
大きな欠伸をしながら影踏架空恋慕先生は影の外へと出ていった。
……便利だよなー。影踏先生の
《ハイドアンドシーク》。
わたしも 《わたしのR》じゃなくてこっちの能力のが よかったなー。
そんなことを考えてると相談者の女の子が
話しかけてきた。
「は、はじめまして、あるは先輩。私は白雪って言います。今日はよろしくお願いします。」
そうやって白雪ちゃんはぺこりと頭を下げた。
「あーいいっていいってそんなん。
白雪ちゃんは《制御不能型》の能力で悩んでるんだよね。もし嫌じゃなかったらどんな
能力か教えてくれる?」
白雪ちゃんは自分の能力についてたどたどしく説明した。私は言葉を失った。
4歳の時に白雪ちゃんの産みの親に恨まれ
憎まれる能力《白い雪のプリンセスは》
が発動してしまったこと。
能力の影響で 親から受けた傷が治らず、
子供を産めない体になっていたこと。
私は今まで色んな相談を受けてきたけれど白雪ちゃんの生い立ちはその中でも10本の指に入るくらいの悲惨な生い立ちだった。
「それは、辛かったっしょ。でもすごいね。
そんなしんどい思いしてるのに自殺衝動が
あんまなかった。今は前を向いてるんだね。」
白雪ちゃんの話を聞きながら、私は白雪ちゃんのの自殺衝動を 《わたしのR》で吸った。
私の喉をガラスのようなチクリとした痛みが通り抜けたが量はそこまで多くはなかった。
「今は、里親のおじいちゃんとおばあちゃんもいますから。それに、私なんかと友達に
なってくれる人達もいて、私はこれでも
結構今幸せなんです。」
私は白雪ちゃんを芯の強い子だなと思った。
私は、私が《制御不能型》から《友好型》
になるまでの経緯を話した。
「あんま…….参考になるか分からんけど、
私も《制御不能型》だったんだよね。
クラスの連中とか、町行く人とか、電車の中の 憂鬱そうな人とか……..そう言う人の
自殺衝動を全部吸ってたの。空気清浄機?
みたいなイメージ。はっきりいって最悪だった。」
「どうして耐えれたんですか?」
と白雪ちゃんが言った。
「…..私より死にそうな人がいたからかな。
私んちさ、お父さんが自殺して、お母さんも
死にたがってたから。…….もしかしたら、
それで《わたしのR》が出来たのかもしれない。…….でもほんっとゴミみたいな能力でさー。私の能力、自殺衝動は吸えても完全に消すことはできないんだよね。
…….あー、自分語りばっかしてごめんね。そうだなー、どうやって能力を制御できるようになったんだっけ…….。うーーーん。とにかく周りの情報をシャットダウンしたな。 なるべく人の顔は見ないようにして、人の声は聴かないようにして外の情報を取り入れないようにした。そしたら心にちょっと余裕ができて少しずつ《わたしのR》を コントロールできるようになった。
本当はこんな能力、さっさと捨てちゃいたいんだけどねー。」
白雪ちゃんは私の話を真剣に聴いていた。
「でも、あるは先輩はかっこいいです。
色んな人の相談に乗って、苦しんでる人を
いつも助けてて…….。」
「そんなことないよ。それにしても、
お互い、糞みたいな能力だよねーー。
はーあ。あたしさー、本当はこんな能力じゃなくて『何もないところからメロンパンを出す能力』がほしかったんだよねーー。」
「……分かります。私もこんな能力じゃなくて友達の表裏一体ちゃんや林ちゃん達みたいな楽しそうな能力がよかったです。」
「世の中ガチで理不尽だよねー。」
「……フフッ、本当ですねー。」
結局、私達はその後とりとめのない話をして
盛り上がった。多分、能力を制御する参考にはあんまりならなかったと思う。
影踏先生の影から出て、学校を後にした私たちは通学路の別れ道で解散した。
「今日は、相談に乗ってくれてありがとう
ございました。」
深々と、白雪ちゃんは頭を下げた。
「別にいいって、そんじゃね。」
私はそう言って軽く手を振った。
……..はーー、早く帰って課題やんないとなー。
そんなことを考えている時だった。
【ド派手な着地音】
「シリアスブレイカー参上!!!探したぞクリリン!!!!」
突然空からシリアスブレイカー様が降ってきた!!!?え、え、何で、ドッキリ!!!!?
「君のおかげで赤点を回避できた!!!ありがとうクリリン!!!!!何かお礼をさせてくれ!!!!」
そう言ってシリアスブレイカー様は謎のポーズをとった。お礼!!?お礼ってどこまでOKなんだ!!!?考えろ私ここが人生の分かれ目だぞ
……..やっぱ。付き合ってくださいか?……いやだめだ。断られたときに死んでしまう!!!!腹筋を触らせてください?
……いや違う!!!消えろ煩悩!!!
こうして1分ほど悩んだ末に私は
「……..渾身の一発ギャグ…..お願いします。」
という無茶振りをシリアスブレイカー様に
した。
シリアスブレイカー様は間髪いれずに
「もちろんだ!!クリリン!!!イクゾッ!!!!
《ブリキノダンス》!!!『Kick back』でトラックに跳ねられる米津玄師の真似!!!!」
といって鋼鉄の体に変身しながら綺麗な
放物線を描き跳んだ。
私はその元ネタを知らなかったが腹を抱えて笑い、動画を録らなかったことを後悔した。
「あ、ありがとうございます…….あと、
ついでに私のことあるはって呼んでほしいです。」
笑うのをこらえながら私は言った。
シリアスブレイカー様が私を呼ぶ旅
某漫画がちらついて仕方がなかったからだ。
「おう!!!!あるは!!!!また明日学校で会おう!!!
……さらばだッ!!!!!!」
そう言ってシリアスブレイカー様は
ジャンプでどこかへと跳んでいってしまった。
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