テラーノベル
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「お前……梶原?」
西谷は驚いた顔で俺を見る。
「お前、意識不明だったんじゃ……それに、なんだその格好……」
西谷は俺の全身を上から下まで見て、やっと違和感に気づいたようだ。
店員だと思った俺の黒いマント姿は、明らかに異質の姿。
理解が追いつかない西谷を、無言で見つめていた俺は、ゆっくりとフードを被り——冷笑を向けた。
「お前の最後の晩餐に、相応しいだろ?」
俺は腕を横に伸ばして、マントの裾を羽のように広げた。
「最後の晩餐って……何を、言っているんだ?」
西谷は動揺した顔になっていたが——
「なんだよ……ハハ。死に損なって、コスプレか?」
引き攣った笑みで、強気な姿勢を保とうとして
「何をしに来たんだ!」
と声を荒げる西谷に、俺は嘲笑いながら言う。
「お前の魂を、奪いにきたんだよ」
「——ッ?!」
目を見開いた西谷の前で、俺は手のひらから鎌を浮かび上がらせた。
西谷は俺の鎌を凝視していた。
まだ鎌は草刈り鎌ほどの大きさだが、俺はそれを難なく出せるようになっていた。
鎌を握り、俺は西谷に冷たい声で言う。
「お前は俺の弁当を、奪ったこともあったよな?
それだけなら、まだ我慢をしようと思ったよ。
だけど清水と一緒に、俺の家の噂を流してくれたよな?」
「な、なんのことだ?」
「賞味期限切れの材料を使っているとか、カビがあるとか、好き放題に言ってたよな?」
「ハッ!そんな噂、あったな。でも俺じゃねーよ!」
薄笑いをして、しらばっくれる西谷。
俺は怒りが湧き上がる気持ちを堪えて、低い声で言う。
「お前らがSNSやネットを使わずに、知り合いの人間に言って回っていたことを、知っているよ」
「何を言ってるんだ! 言いがかりも……」
「言いがかり?事実だろ」
俺は西谷の言葉を遮り、西谷に向かって吐き捨てるように言う。
「食べ物系配信者の発言は、信憑性があると思われる。それを利用して、お前は人伝てに言うことにした。
SNSなどを使えば、開示請求で特定される。
身バレを避ける為にしたことが、バレてないと思ったか?」
鎌を握りしめた俺は、料理が並べられているワゴンの一番上、豚の丸焼きに視線を向けた。
「お前の罪は、暴食に値する」
俺は西谷の顔に、鎌を突きつけた。
「ひっ!」
西谷は恐怖に慄き、尻餅をつく。
握っていたスマホは床に落ちて、
「西谷!……おい、どうした?梶原って……」
蒲生の声が、聞こえていた。
スマホに返答することも出来ず、西谷は尻をつけたまま後退りする。
声も出せずに、口だけがパクパクしている西谷の首に向けて、大きく鎌を振った。
「あああぁぁぁあ」
西谷は絶叫した。
———
「そうね。撮影を適当に切り上げるように言って、出来るだけ早く店に向かうわ」
キャバ嬢の女が電話を終えて、スマホをバッグに入れる。
女の後ろでは、店員の男が横を通り過ぎていた。
女は店員に気づかず、個室に向かう。
個室のドアは閉まっていて、中がやけに静かなのが気になったが、女はドアを開けて明るく言った。
「ごめんねぇー! ちょっと長話になっちゃったぁ」
円卓にうつ伏せになっている西谷の姿に、一瞬驚きながらも女は西谷の側に近寄った。
「やだっ!ニシジュンってば。何?寝ているの?」
女は微動だにしない西谷の肩に手を置き、揺り起こそうとした。
西谷の身体は脱力したまま、上向きになった瞬間——
「きゃああああああ!!」
女が絶叫した。
西谷は血の気のない顔で白目を剥き、口いっぱいに小籠包を含んだまま——息絶えていた。
後日、西谷の撮影用スマホの中に映ってた映像——
「梶原が悪い。俺は悪くない」
独り言を言いながら、円卓の料理を両手で掴みながら暴食する西谷の姿。
他に誰も映ってない。
映っているのは、狂ったようにむしゃぶりつく西谷——ただ一人だけだった。
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