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第3話
「……今、ここに来たばかりだが」
「そうですか。すみません」
「あはは……私はレジ打ち、変わってきますね」
そう言って唯ちゃんは、逃げちゃった。
……一人だけかよっ……
「私も、隣のレジ開けてきます」
また一人、逃げたのであった。
その日の帰り道。
足が痛んで自転車も漕げないから、自転車を手で押しながら帰った。
……歩くのも、痛いけど、誰にも迷惑かけられないし、私の不注意百……いや、百二十パーセント。
「あれ? 先輩、チャリ漕がないんですか?」
唯ちゃんじゃない、後輩。
高校一年生の男の子、坂上くんだ。下の中前は知らないり
あまりシフトが合わないけど、よく慕ってくれているどこかの誰かさんとは違って、可愛らしい。
ねぇ……
「あ、足をくじいちゃったから……大丈夫だよ。近いし、全然歩けないわけじゃないから」
私がふふっ、と作り笑いを向けると坂上くんは、寂しそうな表情になって「困った時は、お互い様ですから」と言って先に帰って行った。
くじけた足を引きずりながら、自転車を押して家に帰った。
……何か、視線を感じる。
治安がいいとは言えない町だから、しょうがない。それを分かって、ここに住んでいるから。
それに、つかまったって……そう簡単にやられる私でもない。一応、防犯対策はしてるつもり。
催涙スプレーに、ペン型テーザー銃。
あと、もしもの時用の最終兵器。私の相棒とも言える程、握ってきた凶器だ。
まぁ、使えるかどうかは不明。
次の日。
今日はアルバイト、休み。
……只、面倒な人に色々頼まれている。
私は頼まれた物を買って、お昼過ぎにバスに乗り込んだ。
ったく。何だよ……
病院に着いた。
あのコンビニから、徒歩数分。町の中でも一番大きな病院だ。
私は、カウンターに首から下げている面会証を見せてある病室に入った。
「紗奈。遅いわね」
白髪のヨボヨボだけど、耳と頭と口だけは達者な、おばぁちゃん――私の母だ。
あんな風だけど……一応、四十四歳。
「来ないって選択肢も私の中にはあったから」
「よく言えるわね」
「貴女の生活費も、貯金をしないどこかの誰かさんに代わって出してるんです」
そろそろ、周りの視線がマズくなってきたから、私もこの人も口を開くのはおしまい。
次は、視線での喧嘩だ。
私の行動に駄目だしをする、とても面倒な作業だ。
その作業中……隣のベットから、何だか嫌な声が聞こえた。
今は、一言も発してないし、カーテンを閉めているから、相手にはバレてないだろうし、相手は分かっても話しかける気など毛頭ないだろう。
……澤部さん――否、店長。
「コウちゃん。顔色悪いよ。仕事、順調なの?」
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店長のいる方から聞こえた。
……いいな。そうやって平和な会話ができる人って……
ってか、店長の名前、コウちゃん……? 凄い気になる。
「勿論。母さんは、心配しなくて大丈夫だ」
「子供はまだなのかい?」
「……まだ、お相手が見つからないだけ。生きてる内には顔を見せられるようにする」
「あら、無理しなくていいのよ」
母も、そんな会話を聞いているのだろう。
怪訝そうな顔で「ったく。家族なんて直ぐに崩壊するよ!」とカーテンを自ら開けて隣に、怒鳴った。
「貴女は、家族を崩壊させるプロなんだから、口出ししないで」
私は、ギロリと睨んだ。
「はぁ? なんて生意気な事をっ……」
「他の人に迷惑かけないで。本当に、お金払うの貴女の口座に変えるからね」
……店長が、状況がうまく飲み込めてないだろう。
というか、私の事、見破れたのかな?
帽子は被ってるし、コンタクトのところをメガネに変えたし、マスクも付けてるし……ってあれ? 不審者じゃん。
「私の母がご迷惑をおかけしました。本当、すみません」
私は深々と頭を下げた。
……それを見た母は、つまんなさそうな顔でそっぽ向いている。五歳児か。
「顔を上げてください。紗奈さん」
店長の声が聞こえた。
え? 名前呼んだ……?
あの店長が?
顔を上げて見たけど、やっぱり店長。
「状況は、よく分かりませんが……なぜここにいるんですか?」
「そ、それは、こっちの台詞です。私は、鬼電がかかってきたので、ここに」
「俺は、姉と一日交代で、世話を見に来ています」
「そうですか」
私が、無理矢理終わらせようとした会話を店長は、続けた。
「ここ数日、一ヶ月前より、色々とスピードが落ちています。それに、それ只事では無いですよね?」
「……もう一度言いますが、店長には関係無いはずです」
それに、とつけ足すように言った。
「このくらい気にするほどのことでもないので。私は、これで失礼します」
店長も、それからは私の事を止めること無く黙っていた。
コメント
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第3話、読了しました〜!🖤 紗奈ちゃん、足痛めてるのに自転車押しながら帰るの、なんかもう…胸がぎゅってなったよ。坂上くんの「困った時はお互い様」、優しすぎて泣ける。 病院での母親とのバトル、生きるのが大変そうなのに口だけは達者な44歳…って笑っちゃったけど、店長に名前呼ばれた瞬間の紗奈ちゃんの動揺、めっちゃ分かる。あの店長、実は結構見てるんだね。「コウちゃん」って呼ばれてるのも気になるし、続きが気になる展開…! 紗奈ちゃんの強がりと孤独がじわじわ染みる回でした。次も読みます🌙