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翠は、眠ったままだった。
呼吸は浅いけど、一定で、
保健の先生が「今は大丈夫」と静かに言ったあと。
赫は、瑞の前に立った。
さっきまで、翠を支えていた腕が、まだ少し震えている。
「……瑞」
名前を呼ばれて、瑞はびくっと肩を揺らす。
「……なに……?」
強がった声。
でも、目は不安でいっぱいだった。
赫は、一度だけ、ベッドの翠を振り返る。
それから、視線を戻した。
「……全部は、話せない」
最初に、そう言った。
瑞の眉が、きゅっと寄る。
「……なんで」
「それは……」
言葉を探して、赫は少しだけ黙る。
「……俺らも、詳しく分かってないから」
「今も……」
「翠にぃ、
“瑞ちゃんを仲間はずれにしないで”って……
それだけ言って、倒れた」
瑞の喉が、ごくっと鳴る。
「……翠にぃが……?」
赫は、頷いた。
「……翠にぃ」
「俺が思ってたより……
ずっと前から、しんどかった」
「でも……」
拳を、ぎゅっと握る。
「俺たちに、言わなかった」
瑞は、声を落とす。
「……いじめ……?」
その一言に、赫は逃げなかった。
「……ああ」
短く、はっきり。
「翠にぃも……やられてた」
瑞の目が、大きく見開かれる。
「……え」
「俺の……」
言葉が詰まる。
「……俺の代わり、みたいな形で」
それ以上、赫は言えなかった。
でも。
瑞は、もう分かっていた。
「……だから……」
小さな声。
「だから……
翠にぃ、あんなだったの……?」
赫は、ゆっくり頷く。
「……無理して、笑って」
「無理して、平気なふりして」
「でも……
身体が、先に壊れ始めてた」
瑞は、ぎゅっと袖を掴む。
「……瑞……」
声が、震える。
「瑞……何も……」
赫は、すぐに首を振った。
「違う」
きっぱり。
「それは、違う」
「……翠にぃが、選んだ」
「良い選択じゃなかったかもしれない」
瑞の目から、ぽろっと涙が落ちる。
「……ばか……」
震える声。
「……そんなの……」
赫は、少しだけ笑った。
苦くて、優しい笑い。
「……ほんとにな」
しばらく、二人とも黙った。
その沈黙の中で、
ベッドの上の翠が、かすかに寝返りを打つ。
瑞は、そっと一歩近づいた。
触れない距離で。
「……赫くん」
「……瑞、まだ全部分かんない」
「でも……」
唇を噛んでから、言った。
「……瑞も……
翠にぃの“仲間”でいい?」
赫の胸が、ぎゅっと締まる。
「……あたり前」
その答えに、瑞は小さく頷いた。
「……じゃあ……」
「瑞も、ここいる」
「分かんないままでも……
離れない」
赫は、何も言わず、そばに並んだ。
説明は、完璧じゃない。
でも──
ちゃんと、繋いだ。
翠が守ろうとした“仲間”は、
確かに、ここに残っていた。