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それからさらに一週間が経過した。
リオンの一通りの傷は治ってきた。
病院を退院しようとしてきた丁度その時…
「え?ロゼッタ師匠から依頼?」
「はい!」
アリスがそう言った。
ロゼッタから仕事の依頼が入った。
それは『荷物の配達』だった。
今、リオンたちのいる『イアース王国』から、荒野と砂漠を超えた先にある国。
『リスター国』、その国にある魔法学園に手紙の入った小包を届けるというものらしい。
「でもなんで?」
「ロゼッタさんはリオンさんの実力を認めたんですよ!だから自分の仕事を弟子に任せたんです!」
リスター国とは距離自体は遠くは無いものの、荒野と砂漠があるためあまり交流が無い。
かなりの長旅になるだろう。
だが、リオンには断る理由などない。
むしろありがたいくらいだ。
「わかった。それじゃあ出発の準備をするよ」
「はい!」
アリスも快諾してくれた。
リオンが入院している間、ロゼッタの研究室で薬を制作していたらしい。
それを売り歩けることがうれしいのだろう。
「そういえばシルヴィは?」
「シルヴィちゃんなら、武器の準備に行きました」
一足先にアリスから話を聞いていたシルヴィ。
彼女はもう既に準備を終えているとのことだ。
リオンは納得する。
冒険者なのだから、装備を整えるのは当然の事だ。
自分も早く準備しなければと気合を入れ直す。
そして出発当日になった。
まずは最寄りの街まで向かうのだ。
そこで物資を調達してから次の目的地であるリスター国に向かう予定だ。
アリス、シルヴィ、そして…
「リスター国はあたし、行ったことないから楽しみ~」
「遊びじゃないんだぞ」
「けど、気持ちはわかりますよ。気を引き締めていきましょう」
リオン一行に加わるエリシア。
そんな彼女と話すシルヴィ、アリス。
三人を見てリオンは無言になっていた。
「(なんか増えたなぁ)」
そんなことを考えていた。
最初はアリスとの二人旅だった。
そこかシルヴィ、エリシアが加わった。
一人増えても何も変わらない。
「(賑やかでちょうどいいや)」
それがリオンの性格だった。
ちなみに、今回のメンバーの中で『戦闘』で一番頼りになりそうなのはシルヴィだと思っている。
アリスは薬師だ、直接戦闘は不向き。
だが、回復役がいない状況では一番必要な存在といえる。
対してシルヴィは騎士であり、前衛を任せられるということだ。
武器を使った戦いに強い。
彼女がいれば道中の心配はいらないだろう。
エリシアはまだ未知数。
「よし、行くか!」
準備のためにまずは、荒野の手前の村による。
村の名前は『リスタ』といった。
そこを出発するとすぐに荒野へと入る。
このような予定だ。
「ところでさ…」
リオンが切り出した。
全員馬車に乗っており、御者はシルヴィが務めている。
「エリシアの特技って?」
実はエリシアについてあまり知らないことに気がついたのだ。
この機会に聞いておこうと思ったのだ。
エリシアは指を一本立てる答えた。、
「んー?私はねー暗殺が得意だよ」
「…え?」
思わず聞き返すリオン。
「あと、毒殺とか、魔物の解体とかも得意かな」
「へぇ~、すごいですね!」
「…そ、そうだな」
笑顔で感心するアリスに対して、少し引き気味のリオン。
エリシアは続けて言う。
「だからね、リオンくんにも毒飲ませてあげようか?」
「やめてくれー」
「え~なんでだよ~?」
不満げに頬を膨らませるエリシア。
彼女の表情はとても可愛らしく、愛くるしいものだった。
さすがに冗談とは思うが…
「ま、まぁとにかく準備のためにリスタに向かおう」
「はい!」
「りょーかい!」
こうして一行はリスタの街へと向かうのであった。
リスター国に行くためにまずは、荒野に入る前に、リスタの街に立ち寄らなければならない。
荒野ではまともな物資を入手できないからだ。
「ふぅ、やっと着いた…」
「思ったより時間かかりましたねぇ」
リオンたちはようやくリスタに到着した。
道中、何度か休憩を挟みながらここまで来た。
だが、それでも予想以上に時間がかかってしまった。
「うわー!人がいっぱいいるよ!」
「リスタはこの辺りの交易の中心になっているみたいですね」
初めて見る光景なのか、目を輝かせているエリシア。
そしてそんな彼女にアリスが言った。
確かに人の往来が多く賑やかな街だ。
リスタに着いたリオンたちは早速物資の調達を始めた。
「リオン、ボクは日用品をそろえてくるよ」
「ありがとうシルヴィ、こっちは食料と水を買ってくるよ」
食料品、日用品など、生活に必要なものを買い揃えた。
エリシアは荷物持ちとして付いてきてもらった。
ちなみにエリシアは興味津々といった様子で辺りを見回している。
どうやら初めての場所が珍しいようだ。
アリスは自身の作った薬を売り歩いている。
薬はなかなかいい値段で売れた。
この辺りでは揃わない、珍しい素材で作った薬だからというのもあるだろう。
しかし、売れたのはやはりアリスの腕がいいからだろう。
「このお金でまた素材をあつめられますね」
リオンやシルヴィが倒した魔物や、回収した薬草。
それを素材にアリスが薬を作る。
それを売って一部をパーティの資金として渡す。
なかなかいいサイクルが出来上がってきた。
「あ、そういえばエリシアは何が欲しいんだ?」
「んー?」
エリシアに話しかける。
彼女はキョロキョロしながら歩いていた。
「あたしはねー、武器屋に行きたい!」
「武器か…どんな武器を使うんだ?」
「ナイフだよ」
「へぇ~」
そう言えば、以前盗賊を撃退した時にも使っていたな。
そんなことを考えながら返事をする。
「じゃ、武器屋に行こうよ!」
エリシアはリオンの手を引いて歩き出す。
リオンも特に反対することなく付いていく。
しばらく歩くと、目的の店を見つけた。
「ここだよ!」
エリシアは嬉しそうに飛び跳ねると、店の中に入っていった。
リオンもそれに続く。
店内に入ると、様々な種類のナイフが置かれていた。
「これ全部刃物か…」
思わずつぶやく。
包丁、果物ナイフ、ノコギリのような物まで置いてある。
どれも切れ味の良さそうな刃をしていた。
「どれがいいんだろうなぁ」
「んー、よくわからないから適当に選んじゃって!」
「え!?」
まさか丸投げされるとは思わなかった。
もちろん、エリシアが雑な性格だという訳では無い。
資金の問題もある。
ちょうどいいものをリオンが選んで、そこからエリシアが選ぶという感じだ。
せっかくなので色々と見て回る。
すると一つの武器が目に入った。
それは短剣だった。
「これなんてどう?」
値段も安すぎず高すぎず、ちょうど良さそうだ。
リオンはそれを手に取るとエリシアに見せる。
「んー、ちょっと小さいかな?」
「え?」
「あれなんかいいんじゃないかな?」
エリシアはそう言うと、その短剣をひょいっと取り上げてしまった。
そして別の商品を指差す。
エリシアが指差したのは、中古のナイフだった。
いちおう手入れはされているが、新品と比べると品質が落ちる。
冒険で使われていた物では無く、自警用に使われていたもの。
結局、まともに使われることの無いまま中古として流れてきたらしい。
だが、エリシアが選んだのでリオンはそれを買うことにした。
「じゃ、これを買ってくる」
「うん、お願いねー」
会計を済ませて店を後にする。
エリシアは新しいおもちゃを買ってもらった子供のように無邪気に喜んでいる。
それから二人は宿屋に向かった。
二人部屋を二つ取り、一部屋に集まる。
「日用品は一通り揃ったぞ」
「薬もいい感じに売れました!」
そう言って買って来た日用品を出すシルヴィ。
売れた薬の収益の一部を渡すアリス。
「みんなありがとう!これで準備万端だね」
「ああ」
「そうだね」
「ですね」
三人に感謝の言葉を告げるエリシア。
彼女も満足そうだ。
こうして準備を終えた一行はいよいよリスター国へと旅立つのであった。
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