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#4 残された映像
〜山林・遺体発見現場〜
『…勇斗くん』
その一言が流れた瞬間、その場にいた人全員が息を飲んだ。
🩷「……え」
画面は激しく荒れる。
ノイズ、砂嵐。そして映像は途切れた。
鑑識「終わりです」
誰も動けない。
🩷「今……」
🤍「聞こえたね」
🩷「俺の名前」
課長は腕を組み、モニターを見つめたまま口を開く。
課長「もう一度再生しろ」
鑑識「はい」
映像が最初から流れる。
少年がこちらを見る。震えた声。
『もし誰かがこの映像を見つけたら――』
ノイズ。そして、『…勇斗くん』ブツッ。
映像が止まる。
課長「間違いないな」
鑑識「はい」
🩷「なんで…」
柔太朗は画面から目を離さなかった。
🤍「勇ちゃん」
🩷「ん?」
🤍「焦らないで」
🩷「でもさ、」
🤍「分かるよ」
🩷「知らない子なんだよ?」
「なのに名前呼ばれてる」
🤍「だからこそ調べるんじゃん」
「答えは絶対あるから」
その落ち着いた声を聞いて、少しだけ冷静になる。
柔太朗は事件になると変わる。
感情に流されない。今はその冷静さがありがたかった。
〜現場周辺〜
規制線の外まで歩く。
雨上がりの山道はぬかるんでいた。
🩷「なあ、俺さ」
「ほんとにこの事件知らないんだよ」
🤍「知ってるよ」
🩷「でもあんな映像見せられたら、自信なくなってきた」
柔太朗は足を止めた。
そして俺の方を見る。
🤍「勇ちゃん」
「覚えてないことを責めなくていいよ」
🩷「……」
🤍「俺も覚えてなんかない」
「冷静に見てるだけ」
🩷「え?」
🤍「内心は結構いっぱいいっぱいだよ」
「勇ちゃんの前だから言うけどね」
俺は思わず笑った。
🩷「俺限定?笑」
🤍「うん」
🩷「ちょっと嬉しい」
🤍「嬉しがるところじゃない笑」
🩷「でもさ」
「柔太朗がひとりで抱え込んでなくて安心したわ」
柔太朗は少し照れくさそうに笑う。
🤍「抱え込んでも勇ちゃんにバレるし」
🩷「まぁね笑」
🤍「だから最初から隠さないことにした」
🩷「それが助かる」
🤍「俺も笑」
ふたりで笑う。
重たい事件の中で、その時間だけは少しだけいつも通りだった。
課長「佐野、山中」
🩷「はい」
課長が1枚の資料を差し出す。
課長「映像が解析した」
🤍「もうですか」
課長「映像の最後」
課長は静かに写真を置く。
🩷「これ……」
止まった映像だった。
少年の後ろ、フードの人物、その人物の足元。
🩷「なにか落ちてる?」
柔太朗は資料を手に取る。
じっと見つめる。数秒後。
🤍「課長」
「これ警察手帳です」
🩷「え?」
課長「本当か?」
🤍「間違いないと思います」
🩷「じゃあ警察官?」
🤍「少なくとも可能性は低くないよね」
空気が一気に張り詰めた。
🩷「嘘だろ……」
課長「7年前の事件に警察関係者が関わっていた可能性がある」
誰も言葉を発しない。
そんな中、俺のスマホが震えた。
知らない番号。
🩷「誰だろ」
🤍「出る?」
🩷「まぁ一応」
通話ボタンを押す。
🩷「もしもし」
返事はない。
聞こえるのは息遣いだけ。
🩷「もしもし?」
数秒後、低い男の人の声が聞こえた。
『やっと動き始めたな』
🩷「誰?」
『勇斗』
心臓が大きく鳴る。
『思い出せ』
🩷「何を!」
『思い出さないと』
一瞬の沈黙。
そして、男は笑った。
『今度は守れないぞ』
ブツッ。通話が切れる。
🩷「……」
🤍「勇ちゃん?」
俺はスマホを握りしめたまま動けなかった。
🤍「誰だったの?」
🩷「わかんない」
🤍「なんて言われた?」
俺はゆっくりと顔を上げた。
🩷「『今度は守れないぞ』って」
その瞬間、柔太朗の表情から笑顔が消えた。
いつも穏やかな目な鋭くなる。
🤍「課長」
課長「聞こえてた」
🤍「完全に勇ちゃんを狙ってます」
柔太朗は俺の前に1歩でた。
まるで自然に庇うように。
🩷「柔太朗?」
🤍「勇ちゃん」 「今日から一人で動かないで」
🩷「そんな大袈裟な」
🤍「大袈裟じゃない」
🩷「……」
🤍「俺がいる時だけ動こう」
🩷「心配しすぎじゃね?」
柔太朗は少し困ったように笑う。
🤍「そうかもしれない…笑」
🩷「じゃあ」
🤍「でも、それくらいがちょうどいい気がする」
「勇ちゃんに何かあったら嫌だから」
その言葉は静かだった。
だけど、いつもよりずっと強かった。
俺は何も言えず、小さく頷く。
その頃─。
誰もいない山奥。
黒いフードを被った人物が、一本の木にもたれながらスマホをしまう。
その口元だけがゆっくりと笑った。
「…もうすぐだ笑」
その声は風に消えた。
【#4 残された映像 終】
コメント
1件
うわあ、怖くなってきた……! 「今度は守れないぞ」の電話、背筋がぞっとしました。柔太朗くんが「内心はいっぱいいっぱい」って正直に言える関係性がすごく好きです。重い空気の中でも、二人で笑うシーンにほっとさせられました。でもラストの不気味な人物――本当に誰なんだろう。続きが気になります!