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《王宮内の軍事訓練施設にて》
「はっ!!!!ふっ!!!!せいぃぃぃぃ!!!!!」
容疑者の一人であるギャンビットは
勇ましい声とともにナイト•クラウンに
三回、剣を振るった
「ふっ……くっ…..だああああ!!!!!!」
ナイト•クラウンはなんとか二回レイピアで
攻撃を受け流したが、三回目の攻撃でレイピアを弾かれてしまった。お互いが使っている剣は どちらも真剣、ギャンビットは
残心の構えを 取った。そして、剣を納めて
「見事な腕前だった。」
と、筋骨隆々の手で握手した。
【数十分前、女王ロカの寝室から通ずる
秘密の地下室にて】
女王ロカはギャンビットに
「暇だから最近買った奴隷のナイト•クラウンと剣で戦いなさい。お互い真剣で戦うこと、この オモチャは陛下のチェス相手として買ったものだから腕と頭だけは残して置くように。」
と嘘の予定を言ってギャンビットとナイト•
クラウンを軍事訓練施設へと誘導した。
女王ロカは特権を使用し人払いを済ませた。
そうやって、探偵ナイト•クラウンとギャンビットが二人きりで話し会える機会を用意したのである。
一方、マカロンからの事情聴取を終えた
ナイト•クラウンは一度女王ロカの元に戻り、 【バルザード十二世毒殺事件】の実行犯
マカロンの涙のついたハンカチとマカロンの
動機に関する考察を披露した。
その後、探偵ナイト•クラウンは女王ロカに命じられすぐさま ギャンビットの待つ軍事
訓練施設に足を運んだ。
(ああいそがしいいそがしい、私はまるで
働きアリでさぁ。)
とナイト•クラウンは人生の悲哀に満ちた
表情をした。
【回想終了】
ナイト•ブラウンは
(こういうマッチョ系も捨てがたいでさぁねぇ。)
と考えながら、ガッチリと力強く握手を仕返した。
その間には身分や立場を超えた友情のようなものが芽生えていた。
(……さてと、仕事をはじめやすかねぇ。)
それはそれとしてナイト•クラウンは女王ロカの忠実なる探偵騎士である。
探偵として容疑者ギャンビットの素性を暴こうとした。
「いやぁ、それにしても動いたら喉渇きやしたよー。マカロン様からいただいたハチミツレモンを一切れいただいてもよろしいですかい?」
そうやってナイト•クラウンはお道化てみせた。その行動はこの差し入れには毒がないというある種のアピールだった。
「おいおい、女王陛下にバレたらおっかねーぞぉ?」
そう言って、ギャンビットは屈託なく笑った。 お茶会でのギャンビットは女王ロカの色香に あてられて興奮状態にあった。
(案外この方は本来、こういう快活な方なのかもしれやせんねぇー。)
とナイト•クラウンは呑気に考えた。
(ここは少し、心理的ゆさぶり
をかけてみやすかぁ。)
とナイト•クラウンは考えた。
「いやーそれにしても、ロカ様って性格クソ
パワハラ処刑女ですけど身体めっちゃえっっろいですよねー。私ホモなんですけど匂いかぐ度にえっっっっっろってなりやすもん。」
と言ったのちギャンビットの反応を伺った。
勿論、ナイト•ブラウンのこの言葉は嘘である。 ナイト•ブラウンはホモなので女王ロカのことをクソパワハラ処刑女だと思っていても エッチだとは思ってなかった。
ナイト•ブラウンの真意は別にあった。
(『俺はあんたに惚れている!!!!!!』)
お茶会で聞いたギャンビットの発言、この
真意をナイト•クラウンは探りたかった。
はたしてギャンビットは女王ロカのことをどう思ってるのか、バルザード十二世をどう思っていたのか?それは事件の謎を読み解く鍵であるとナイト•クラウンは確信していた。
「あぁ!!!!!!俺は今まで沢山の女を抱きまくってきたがあれほどいい女を見たことはない!!!!!」
軍事訓練施設が揺れるほどの大きな声で
ギャンビットが言った。ギャンビットの股間を 観察するとものすごく勃起していた。
(自分の下半身に正直な方でさぁねぇ。)
ナイト•クラウンは半ば呆れながら
ギャンビットの様子を探った。
そこで更にナイト•クラウンはギャンビットの 懐に入ろうとした。虎穴に入らずんば虎子を 得ず。女王ロカの忠実なるナイト•クラウンは 猛虎に腸(はらわた)を引き裂かれてでも
女王ロカに情報を持って帰ろうとした。
「そんなに惚れてらっしゃるなら、ロカ様を
抱いちゃえばいいんじゃねぇですかい?
ロカ様の淫乱ぶりを見ればギャンビット様の
でっかいイチモツ使えば一発で堕ちると思うんですがねー。」
ものすごく下卑た顔をして揉み手をしながら
ナイト•クラウンはギャンビットの顔色を
伺った。
(さて、同意するか、否定するか、激昂するか、あるいは私を不敬だとして殺しにかかるか?)
いずれにせよ何かしらの反応があれば
そこから事件を紐解く情報が 見つかるかもしれない。
(まあ、私のイケメンパラダイスのためにも
こんなとこじゃ死ねやせんけどねぇ。)
ナイ卜•クラウンがそんなことを考えながら
ギャンビットをそれとなく観察していると ……..。
ギャンビットは無表情になった。
その表情はちょうど、女王ロカとルーク•グリッツファー
が口論した時、あるいは女王ロカに尋問された 時と同じ反応だった。
そしてギャンビットは、
「ちょうど尿意を催してたところだ。
一緒に小便でもいかないか?」
といってナイト•クラウンに笑いかけた。
それは腹を割って話そうというギャンビットなりの意志表示なのかもしれない。あるいは、お前の腹をまっぷたつにするぞ
という殺意表明かもしれなかった。
(はてさて、鬼が出るか。蛇が出るか。)
かくして、
探偵ナイト•クラウンと容疑者ギャンビットに よる恋バナが始まった。そしてその恋バナの 行く末が
後にシトラス王国の滅亡を決定づけることに
なる。
《ギャンビットの残心》
『俺がロカ王女に一目惚れをした時、ロカ王女にはすでに結婚相手がいた。それがバルザード十二世だった。』
王宮内の厠で 滝のような小便をしながら
ギャンビットは 言った。探偵ナイト•クラウンはそれを 綺麗に放物線を描く小便をしながら黙って聞いていた。
『二人の仲はよー、揺るぎねぇように見えたなぁ。お互いがお互いのことを考えていて
そこに誰も付け入れない感じだったさ。』
ギャンビットはそう言って少し切なそうに
笑った。ナイト•クラウンはその表情が
女王ロカに対する切ない恋心に苦しんでいる
ようにも今はなきバルザード十二世に思いを
馳せているようにも見えた。
(あるいは私を騙すための偽りの表情か。)
慎重なナイト•クラウンはあらゆる可能性を
検討しつつ、更に情報を探った。
「バルザード十二世様はどんな方だったんでさぁ?」
そう言ってナイト•クラウンは
それとなく容疑者ギャンビットと毒殺された
バルザード十二世の関係性に探りを入れた。
「恩人さ。」
小便を終えたギャンビットはクソデカイチモツを晒したままバルザードとの出会いを振り返った。
「俺は身分の低い足軽兵卒だった。命が簡単に吹き飛ぶ戦場で、戦友達とシトラス王国のために命を散らしながら戦った。戦場だけが俺が 呼吸できる場所だ。命がけで敵を討ち取り、 命がけで我が国の領土を拡大していった。」
そんな勇敢なるギャンビットの才を若い内から見抜き、先々代の王バルザード十一世に
シトラス王国軍の指揮官へと抜擢するよう進言したのが、当時皇太子であったバルザード十二世だ。…..とギャンビットは付け加えた。
(ふむ、少しずつ被害者であるバルザード十二世様の人となりが分かってきやしたねぇ。)
ナイト•クラウンは残った尿をピッピッと
出しきりながらギャンビットの話に耳を傾けた。
ギャンビットは続けた。
「バルザード十二世様は人の才を見抜く目に
優れていた。俺や、当時地方領主の元で執事としていたルークを登用したのもそうさ。
そして、バルザード十二世様はいつだって民を愛し、国を愛し、国中を見渡すように遠くを 見つめているような方だった。マカロンさんの 門外不出だったレシピを国中に配り、国民の 食生活と健康水準をあげるようバルザード十一世様に進言したのもあのお方だったなぁ。」
小便をすませ、手洗いをすませた後、ギャンビットとナイト•クラウンは軍事訓練施設の隅で マカロンお手製のハチミツレモンを食べていた。
(人の才を見抜く目に優れ、博愛主義者の王。)
マカロンとの会話とギャンビットの会話と
ハチミツレモンを咀嚼しながらナイト•クラウンはバルザード十二世の性格をこうプロファイリングした。
「だが王はあまりにも理想主義者で、現実が
まるで見れていない男だった。」
ギャンビットは無表情で言った。その顔は
数々の血生臭い戦場を渡り歩いてきた彼の
軍人としての一面を物語っていた。
「《争いを辞め、貧しい民を飢えから救い、
身分や国籍に関係なく好きな人と自由に結婚
できる国を作る。》
たしかに素晴らしい理想だ。
……だが現実は甘くはない。戦争はなくならない。それは長い間ずっと戦場で戦い続けた俺の結論だ。貧富の差はなくならない。それは王宮内と悲惨な戦場を行ったり来たりしてきた俺の結論だ。当然、バルザード十二世様と女王陛下の結婚も反対したさ。うまくいくはずがない。 ってな。…….バルザード十二世様と女王陛下 の行く末がどうなったか、ナイト•クラウン殿もよくご存知だろう?」
そう言って自嘲気味にギャンビットは
笑った。
ナイト•クラウンは毒殺されたバルザード
十二世と夫を失った怒りで『悪政のロカ』へと変貌した女王ロカに思いを馳せた。
ナイト•クラウンは容疑者ギャンビットの
情報を少しでも得るべく質問をした。
「…….ギャンビット様は女王陛下のどこに
惚れたんですかい?やっぱりおっぱいですかぃ?」
ナイト•クラウンは胸の前で大きくおっぱいの ポーズをして見せた。女王ロカがこの光景を 目撃していればロカはナイト•クラウンを
拳でボコボコにしながら虐殺していただろう。
「あぁおっぱいもめちゃくちゃエッロいさ。だが一番は一途なところだ。
俺はバルザード十二世様に
『なぜあのような身分の低い女に入れ込むのですか?』
と尋ねたさ。
そしたらバルザード十二世様は、
『僕は皇太子として、色々な女性と交流してきた。そしてその中でロカに出会った。しばらく会う内に確信した。これほど一途に僕のことを愛してくれる女性はいない。』ってね。」
(おっぱいで選んだじゃねぇんでさぁねぇ。
……にしてもうんめぇなこのハチミツレモン。)
マカロンお手製ハチミツレモンを食べながら
バルザード十二世とギャンビットが女王ロカに惚れた理由を聞いていた。
「実際、バルザード十二世様の見立ては
正しかった。バルザード十二世様が毒殺されるまで女王陛下は国中の反対に晒されながらも 懸命にバルザード十二世様を支えていた。
俺ももちろん反対していたが内心、あんな風に おっぱいのでけぇ女に一途に愛されるバルザード十二世様が羨ましかったもんさ。」
(やっぱりおっぱいなんでさぁねぇ。)
そう思いながらナイト•クラウンは容疑者
ギャンビットの話に耳を傾けた。
「…….バルザード十二世様を守れなかったことを、今でも後悔している。バルザード十二世様が毒殺されたことを、俺は隣国との戦場で知らされた。俺は急いで馬を走らせ王宮へと向かった。おかげで敵国にかなりの領土を奪われてしまった。」
後悔の念を浮かべ、ギャンビットはそう語った。
ナイト•クラウンは同情してる風を装いながらも彼が裏で手を引き、バルザード十二世の毒殺を計画していることを頭の片隅に置いていた。
「俺は臣下として、王を守れなかった。俺には何も言う資格も、陛下の死を悲しむ資格もない。」
ギャンビットはそう言って無表情で話を締め括った。
こうしてギャンビットとナイト•クラウンの恋バナは終わった。
(ふむ……,どうやらギャンビットはバルザード十二世が死んだことに心残りがあるようでさぁねぇ。そして、おぞましい復讐鬼とかした姫様にも…..。)
そう考えながらナイト•クラウンは頭の探偵メモにこう書き記した。
【推理タイム12 まとめ】
•被害者バルザード十二世は人の才を見抜く目があり、博愛主義者だった。しかし、その理想主義が原因で多くの臣下に反発されていた。
•ギャンビットはバルザード十二世を守れなかったことを後悔しているようだ。私の見る限り、その表情に嘘はないように見える。
【推理タイム12 終了】
こうして容疑者ギャンビットの事情聴取を終えたナイト•クラウンは
「またよければ手合わせをおねがいしやす。」
と礼をしギャンビットの元を去った。
ギャンビットは屈託なく笑って
「ああ、お互い生きていれば
また会おう。国王陛下(バルザード十三世)と女王陛下をよろしく頼むよ。」
と言った。