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文化祭当日、紬は朝から緊張していた。蒼太と一緒に準備してきた図書室の出し物が、ついに披露される日だ。クラスのみんなが楽しんでくれるだろうか、成功するだろうか……。不安と期待が入り混じった気持ちで、紬は学校へと向かった。教室に着くと、すでにクラスメイトたちが準備を始めていた。蒼太は、いつものように明るく振る舞い、みんなを盛り上げている。紬は、少しだけ羨ましく思いながら、自分の役割をこなした。
そして、ついに図書室の出し物がオープンした。入り口には、「図書室へようこそ」と書かれた看板が掲げられ、中に入ると、そこはまさに図書室そのものだった。静かで落ち着いた空間に、たくさんの本が並べられ、奥には、お茶を飲めるスペースが設けられていた。
「すごい!本当に図書室みたい!」
「落ち着くね。ここ、気に入った!」
お客さんたちは、思い思いに本を手に取り、お茶を飲みながら、くつろいでいた。紬は、みんなの楽しそうな様子を見て、少しだけ安心した。
蒼太は、お客さんたちに積極的に話しかけ、図書室の魅力を伝えていた。紬は、そんな蒼太の姿を、少しだけ遠くから眺めていた。
「なあ、紬。ちょっと手伝ってくれよ」
蒼太に呼ばれ、紬は慌てて駆け寄った。
「お客さんが増えてきて、お茶の準備が追いつかないんだ」
「わ、わかった。すぐ準備するね」
紬は、蒼太と一緒に、お茶の準備を始めた。2人で協力して作業をしていると、自然と会話が弾んだ。
「みんな、楽しんでくれてるみたいだね」
「ああ、頑張って準備した甲斐があったな」
「うん。橘くんのおかげだよ」
「え?俺のおかげ?」
蒼太は、少し照れくさそうに笑った。
「紬が、色々アイデアを出してくれたから、こんなに素敵な空間になったんだ」
「そ、そんなことないよ……」
紬は、顔を赤らめながら、そう答えた。
その時、クラスメイトたちが、2人を冷やかすように声をかけてきた。
「おーい、2人とも、いい雰囲気じゃん!」
「付き合っちゃえよー!」
クラスメイトたちの言葉に、紬は顔を真っ赤にした。蒼太は、少しだけ戸惑った表情を浮かべたが、すぐにいつものように明るく笑い飛ばした。
「おいおい、勘弁してくれよ。俺たちは、ただのクラスメイトだって」
しかし、その言葉を聞いた紬は、胸が締め付けられる思いがした。
(ただの、クラスメイト……)
紬は、自分の気持ちを押し殺し、笑顔で作業を続けた。
文化祭の片付けが終わり、クラスメイトたちが帰っていく中、紬と蒼太は、2人きりで図書室に残っていた。
「なあ、紬」
蒼太が、少し真剣な表情で話しかけてきた。
「何?」
紬は、少しだけドキドキしながら、蒼太を見つめた。
「あのさ……。文化祭が終わったら、話したいことがあって」
「話したいこと……?」
紬は、胸が高鳴るのを感じた。
「ああ。大事な話だ」
蒼太は、そう言いながら、少しだけ目を逸らした。
その時、図書室の扉が開く音が聞こえ、クラスメイトたちが数人、顔を出した。
「2人とも、まだいたのか?早く帰ろうぜ」
クラスメイトたちの言葉に、蒼太は、少しだけ残念そうな表情を浮かべた。
「ああ、すぐ行く」
蒼太は、紬に視線を送り、言った。
「続きは、また明日な」
「うん……」
紬は、少しだけ期待しながら、そう答えた。
文化祭の夜、紬は、ベッドの中で、蒼太の言葉を思い出していた。
「話したいこと……。一体、何を話してくれるんだろう?」
もしかしたら、蒼太も、自分のことを……。そんな期待が、胸の中に広がっていく。
しかし、同時に、不安も感じていた。人気者の蒼太と、地味な自分。2人が、本当に付き合うことなんて、ありえるのだろうか……。
紬は、期待と不安が入り混じった気持ちで、眠りについた。
文化祭が終わった。それは、2人の関係が、大きく変わる予感のする、特別な夜だった。