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【能力者名】 白雪毒林檎
【能力名】 白い雪のプリンセスは
《タイプ:制御不能型》
【能力】 ???
【以下、細菌達の記録】
小テストの間、ロカ先生は生徒達一人一人のことを注視していた。
故に、白雪毒林檎が わざと赤点をとったことも当然理解していた。
ロカは優しく、白雪ちゃんを落ち着かせるようにゆっくりと言った。
「あなたが赤点をとったのには何か事情が
あるのでしょう?それはあなたの能力が関係することかしら?ゆっくりでいいから、先生に話してみて?」
白雪ちゃんはゆっくりと深呼吸をした。
そしてゆっくりと彼女の能力について話した。
「私の『白い雪のプリンセスは』は、《制御不能型》の能力です。能力は……..の、能力は………。」
白雪ちゃんは過呼吸を起こしそうになっていた。ロカ先生は優しく白雪ちゃんの背中をなでて、
「大丈夫、大丈夫だから。」
と白雪ちゃんを落ち着かせた。
そして白雪ちゃんに砂糖入りの紅茶を呑ませた。
少し落ち着いた白雪ちゃんはまたゆっくりと
話し始めた。
「能力は『親から憎まれ、恨まれる能力』です……..!!」
そう言い切ると白雪ちゃんは静かに泣き出した。その姿は冬の日に誰にも拾われずに雪に怯える捨て猫のようだった。
「能力のせいなのか……あの人達から受けた傷が消えないんです……。お医者さんにも
見て貰いました……。能力者にも頼りました…… でも…..でも…….!!!」
白雪ちゃんは服を脱いだ。
白雪ちゃんの身体には複数の打撲の跡と火傷の跡、腕には煙草を押し付けられた跡が複数。そしておなかには大きな傷があった。
能力の中には制御が出来ず、その人を不幸にしてしまう能力もあることをロカ先生は知っていた。
だからロカ先生は黙って白雪ちゃんの話を聞いていた。
「お医者さんに言われました。私はこのままだと赤ちゃんを産めないそうです…….嫌です…..!!!嫌……!!!私だって幸せになりたい……!!!絵本で見た幸せな家族みたいに
幸せになりたい …….!!!先生、どうか
私の能力を壊してください…..!!!私の傷を
どうか……治してください…….!!!!」
きっと彼女にとって幸せな家庭とは絵本で見たような夢物語なのだろう。
ロカ先生は白雪ちゃんを助けてあげたかった。
しかし、ロカ先生には彼女を救ってあげることはできないのだった。
「……ごめんなさい、白雪さん。私の
『エンプレス•ディスコ』は心をへし折る
ことは出来ても治すことは出来ないの。
だからあなたのような《制御不能型》の
能力を壊すことは私にはできないの。」
「そんな………。」
ロカ先生の能力《エンプレス•ディスコ》は能力を破壊する能力では なかった。
正確には《能力の強さが心の強さに依存する》ことを利用して、相手の心を 折ることで能力を使えなくしているだけなのだった。
故にロカ先生は《友好型》、《擬態型》の能力者の能力は破壊できても《制御不能型》、つまりは能力で苦しむ能力者を救うことはできないのだった。
白雪ちゃんはひどく暗い顔をしていた。
この世の全てに絶望した顔だった。
ロカ先生は先生として、自分に何が出来るかを考えた。
そこでロカ先生は彼女に少しでも明るい可能性を提示することにした。
ロカ先生はスーツとワイシャツを脱いでブラジャーとズボンだけの姿になった。
ロカ先生の 身体は全身傷だらけだった。
「あなたと環境は違うけど、私も一時期
《制御不能型》だった時期があるの。私は第2次能力者戦争の生き残りで、終戦後はよく戦争の記憶がフラッシュバックしていたわ。それが きっかけで能力を制御出来なくなった。《目で見た敵の心と身体をへし折る》
能力が制御出来なくなった私は人を殺さないために常に自分で目を隠して自分で腕を縛って、まるで罪人のような 格好でずっと生活していたわ。」
いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)
によって、当時のロカ先生は自分の能力を
制御できなくなっていたのだ。
壮絶なロカ先生の過去を、 白雪ちゃんは泣きながらも 真剣に聞いていた。
「そんな時に今の夫に出会ったの。夫はその時私の国に留学していた教育学部の留学生で当時の私のような 《制御不能型》の能力者の苦しみを緩和するにはどうすればいいかを研究してたの。そこで私達は出会ったわ。夫は私の苦しみを自分の苦しみのように感じてくれて、時々日本の物語を私に教えてくれて。そうやって少しずつ、少しずつ、心を癒していく内に私は能力を制御できるようになったの。」
そこまで言い終えてロカ先生は服を着なおした。
「だからあなたの能力もきっと制御できるようになるわ。あなたの傷も、完全には治らないかもだけど、いつかきっと治るわ。….
この学校の生徒に栗毛色あるはちゃんという先輩がいるの。私は現代文の切名先生から
よくその子の話を聞いていたわ。
その子も元《制御不能型》の 能力者で、自分の能力に苦しみながら、悩みながらなんとか自分の意志で能力を制御できる《友好型》に変わっていったそうよ。いつか話を聞いてみるといいわ。あるいはお昼休みに死にたい生徒達の 悩みを聞いているみたいだから私が切名先生に取り次いで話を聞いてもらえるか取り次いであげようかしら?」
「そんな先輩がいるんですね…..すごいなぁ。」
少し心に余裕の出た白雪ちゃんは林檎柄のついたティッシュで涙を拭った。
「あなたも充分すごいのよ。ずっと苦しかったのに勉強も頑張って友達も作って本当に
えらいわ。」
「そんなこと…….ないですよ。」
白雪ちゃんは照れたようにはにかんだ。
「私も…..先生やその先輩みたいに強い女性になりたいです。」
スカートの袖をぎゅっとつかみながら
白雪ちゃんは言った。
「そしたら肩を出して頂戴。あなたの傷や
痛みがいつかあなたの力になりますように。
《エンプレス•ディスコ》。」
そうやってロカ先生は白雪ちゃんの肩を指で優しく撫でた。
能力は、発動しなかった。
生徒指導室を出た白雪ちゃんを恋原表裏一体と酒池肉林が出迎えた。
恋原表裏一体は 白雪ちゃんに飛び込むようにして抱き締めた。
「白雪ちゃーーん!!!よかったぁ生きててーー。あの鬼のロカ先生に酷いことされなかった!!?白雪ちゃんに酷いことしたらあたしらクラスの女子全員でロカ先生に悪鬼退治しかけにいくからね!!!」
勝手にクラス全員を巻き込みながら
恋原表裏一体は白雪ちゃんの胸にうずくまった。
「どくりんが赤点なんてめずらしいよなー!!!
こういう時はパーッとファミレスいこうぜ
パーッとー。最近おもしろいサービスしてる
ファミレスができたんだとよー。どろりん達も連れて小テストお疲れ様パーティーしようぜぇー!!」
あっけらかんに笑いながら林が言った。
「いいねー!!そしたらどろり達のおごりーもうスマホで予約したもんねー☆」
どろり達を勝手に巻き込みながら表裏一体が
笑った。
白雪ちゃんは少し泣きながら
「それは流石に悪いよー。」
と爽やかに笑った。