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「大地君、どうしたの?」と園庭で一緒に遊んでいた園児の一人が聞いた。
大地は友達とボール遊びをしていた時、急にしゃがみこんだあとに鼻血を出したのだ。
「藤井先生、大地君がたいへん、こっちにきて」とその園児が走つて、近くにいた担任の藤井を呼びに行った。
藤井は小走りで大地の方へ来ると、
「大地君、大丈夫?」と言うと、
「藤井先生、鼻から血が出たの」と大地は言った。
「もう大丈夫だからね」と藤井は言って、ポケットに入れていたティッシュペーパーで大地の鼻を拭いてやった。
しかし、いつもより大地の顔色が悪かったため、大地の手をつないで医務室へ向かった。
「大地君、ここで少し休もうか」と言って、医務室へ入ろうとした。
「もう大丈夫だよ。みんなと遊んでくる」と言って、藤井から離れて走ろうとした時、大地は段差のところで足を引っ掛けて転んでしまい、膝を少し出血してしまったのだ。
「大地君、すぐにお母さんに来てもらうからね」と藤井は言い、すぐに大地の膝を消毒した。
本来、足の擦り傷程度なら親御さんへ連絡を入れることはしないが、大地の顔色が悪かったこともあり、藤井は大地の親の携帯へ連絡を入れることにしたのだ。
「村山さんの携帯でよろしいでしょうか? こちらは緑山幼稚園、担任の藤井です。先程大地君が鼻血を出されました。
あと大地君の顔色も少し悪いようなので、少し早目に迎えに来て頂けませんか?」と藤井は言うと、
「わかりました。すぐに迎えにいきます」と大地の母親のひとみが言った。
今まで大地が、鼻血を出したことがなかっただけに、ひとみは不安に感じた。
そして、すぐにひとみは車で10分のところにある緑山幼稚園へ向かった。
ひとみが幼稚園の前にある駐車場へ車を停めると、すぐ近くに園長を見つけたため、
「こんにちは園長先生。いつも大地がお世話になっております。大地はどちらにいますか?」とひとみが聞くと、
「医務室に、藤井先生とおられますよ。怪我もたいしたことがなくて安心しました」と園長が言った。
「すみません、ご心配をかけまして」とひとみが言って医務室へ入った。
藤井はすでに大地の膝に消毒液を塗って、バンドエイドを貼ってくれていた。
それに気付いたひとみは、藤井に礼を言った後、
「大地、心配したじゃないの。大丈夫?」と聞いた。
「大丈夫だよ。僕、強いから泣かなかったよ」と大地は自慢げに言った。
「ほんとに強かったよね、大地君」と藤井が言った後、
「お母さん、念の為、病院へ連れて行かれたほうがいいかと?」
「病院は行きたくない」と大地は泣きじゃくった。
「大地は泣き虫?大地は強い男の子でしょ」とひとみは言った。
「強くないもん。だから、病院へ行きたくない」と大地は泣いて、ひとみに懇願したが、
「今から病院に連れていきます」と藤井に言い、ひとみは大地の手を引っ張った。