テラーノベル
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第38話
「もっと伸びますよ! 速く! 風の抵抗を最小限に!」
そう言われながら、決闘? をやっている。
完全に、指導みたいになっている。
何がどうなってこうなった?
僕はそう思いながら、言われた通りやってみた。
「そうそう! さっきよりも良くなったです!」
敬語を使いながらも、上から目線。確かに、彼女は強い。僕には倒せない程に。
この世界では僕なんか、ミジンコだろう。たいして影響力の無い。ただの息をする獣。
でも、産まれながら強く、不本意に恵まれた。友達は、この十五年の間は相変わらず皆無。
「はあっ、はぁっ……僕は、バケモノって言われたけどっ……君はどんな、風にっ……言われていたんだい?」
肩で息をしながら言葉を並べていった。酸素が足りない……
「超人。疾うの昔の話だけど、そう言われていたのは覚えています。独りだったから、この力に気付けないようにお願いしたけど……このザマで……」
彼女は、寂しそうな目をした。
「それを思い出す前までは、この何億倍かは、弱かったですね。強くなれたから、弱くなった。少し期待しすぎてしまったみたいです」
期待……絶対に、応える。
「あぁ。君は、とても強い。僕も同じで、とても強いけれど、強いと共に最弱なんだ。だから、その期待に応えたい」
本音を言った。初めて誰かに本音を言うかもしれない。だけど、抵抗が無かった。
共感を一瞬だけでもしてもらったんだから。
「ふふっ。その意気です!」
それから、しばらく剣をぶつけ合って彼女は、息が切れている。
長期戦は苦手みたい……いや、そんな事はバケモノと比喩された僕が、何歳も歳下の女の子に言う事じゃないけれど……
でも、相手も超人。僕は時々、回復魔法を自分にかけながら、追いかける。僕も、傷口が塞がりきらなくて、体力は削り取られる。
「はあっ……流石に体力は、少ないですっ……」
「それは、僕もっ……同感だね……」
でも彼女は肩で息をしながら、瞬時に僕の後ろを取った。
僕は、剣を振るわれた後に振り向いた。これでも、無敗だったのだから。
ちゃんと立った。だけど、立つのがギリギリ。
彼女は、疲れ切っているけれど、魔力はあまり減っていない。僕は、魔力もバケモノだから感覚がバグってたけれど、彼女も平均は越しているはずだ。
でも、細かい粒子をずっと剣に纏わせているから、かなり減ってきている。パワーを誤魔化すためだろう。
さっきから、強い回復魔法と、治癒魔法を重複していて、最大に溜まった彼女の魔力量と同じくらいになった。
僕は、治癒魔法だけかけて、剣を構え直した。
「へぇ……しぶといですね」
「ははっ。負け知らずのバケモノをなめない方がいいよ」
今なら本領を出せる。
「ふふっ。最初から舐めてなんかいません」
そう言いながら今まで以上のスピードでかかってきた。
でも、僕は避けられた。魔力は、体質なのか偶に全回復する。
一日に数回。その時間帯が被ったみたい。こんな計算してなかったけれど……ま、直ぐに片付けられる予定だったから。
「え? 魔力回復……もっと、出していいのかもしれませんね」
そう言いながら彼女は、剣をとんでもない鋭さの電気の刃にした。
「ヒントですけど、剣の自己回復機能が付いてると、魔法の付き方がとっても良くなるんですよ」
彼女は最初の倍くらいのスピードを出した。光と表すのも勿体ないくらいに、速い。人間の域を超えていると思うけれど、一応、彼女も上手く使ってるのだ。
自分のある空間を無重量空間にする事でこのスピードを実現させている。それも、魔力を食うが、最低限で出来ている。
パワーも、さっきの倍くらい。僕は、構えていたから飛ばせたけれど、やっと一撃だ。
起き上がって、気づけば背後を取られていた。
そのままの勢いで僕は、ゴロゴロと訓練場を転がっている。
頭がぼんやりとしていて、あまり動けそうに無い。
治癒魔法でも、間に合わないだろう。
僕は、最初から本気を出していて、今は、本気の域を超えている。それでも敵わない。
吐血をして倒れていると「私の勝ち、それで良いですか?」と言いながら僕を回復させた。
「ふふっ。もう一回戦してもいいですけど」
そんな、怖い事を言う女の子も、僕を怖がらない人も、僕を敗れさせた人間も、初めて。というか、そもそもだけど、魔道具職人……見習いかな? そんな人がいるのすら、初めて知った。
「冗談ですよ。申し遅れました。私は、サントラップ従業員、セリーナと申します」
そう言いながらセリーナは、僕に向かって手を差し伸べた。
#魔道具職人
こはる
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#切ない
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コメント
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第39話読みました! 主人公とセリーナの戦闘、すごく熱くて、でもどこか切ない空気が流れてて…“強くなれたから弱くなった”ってセリーナの言葉が胸に刺さりました。お互い孤独を抱えてるのに、本音を言い合える瞬間が美しくて。続きがすごく気になります🤍🥀