今日はスーパーに来ている
まぁ特になにか買う訳じゃないが
見ているだけでも楽しいものだろ?
まぁ回ってるうちにいいものを見つけたんだ
そう でっかい卵だ
最初はなんだろうな これ 程度にしか見ていなかったが 段々と興味が湧いてきた
そりゃあ 製品の説明のところに
(何が生まれるか 分からない)
なんて書いてあったら誰だって気になるじゃないか。
好奇心に耐えきれず つい買ってしまった
明日からはもやし生活だ そう思わせるほど
財布の中身は寒かった
だがまぁ 最近流行ってるらしいからな
この国がキメラ実験で作った動物を
国債のために商品にした 闇の深いものだが
なかなかに面白いらしい
前にネットで見たやつだと
((餌が要らない猫))
なんてものも出てくるらしい
まぁ この卵を買った理由のひとつに
面白い生物が出てくれれば ネットで有名に
なれるかもしれないな
そんな程度の考えだったが いざ 孵化時期が
近づくとそうとも言ってられなくなった
まぁ とにかく部屋の温度に気をつけたり
空気清浄機 観葉植物 少し大きめのゲージ
なんてものを買って 環境を整えた
自分でもなぜここまでしたかは分からない
でも
産まれてくる動物に期待を持っていたことは紛れもない真実だ
その日は突然だった
朝 目が覚めると卵が少し震えているように見えたんだ
気のせいか と思い仕事の準備をしていると
その揺れが段々大きくなっているように
感じたんだ 正直焦ったさ 待ち望んだ動物の孵化を見たい 見れる嬉しさと
今日の仕事の大切さが混ざって
頭がどうにかなりそうだった
気づいたら電車に乗っていた
やはり今日の仕事を遅刻してしまうと
今後の生活に影響が出ると思ったからだ
金がないと餌も買えない
そう自分に言い聞かせ 家を出たんだ
でもまぁ 仕事が手につかない 本当に
卵が気になって仕方がなかった
まだ休んだ方が損害は少なかったと言っても過言では無いほどの失態をしてしまった
絶望感で満たされた
卵のことなど忘れてしまうほどに
家に帰った 玄関を開けると異様な風景が
目に飛び込んできた
散乱した服 バラバラになった書類
少し前に買った 大好きなキャラのフィギュア
全て床に叩きつけられ バラバラになっていた
そこで思い出した
卵のことを
額から嫌な汗が流れた
『もう家から脱走した』
なんて嫌な妄想が膨らむ 元々保管していた
机の上の日当たりの良い場所には
やはり卵の殻が散らばっていた
仕事の疲れと味わったことの無い恐怖で
意識が朦朧としてきた どうすればいいのか
あれだけお金をかけた卵を
こんな形で失うなんて
なぜこんなに上手くいかないんだ…
………後頭部が暖かい このまま一生を終えたい
そんな心地良さが襲ってきた
でもこうしては居られない 卵を探さなければ
目を開ける 見慣れない白い…なんだろうか
猫の毛のようなものが見えた
………… なんだろうか 状況が読み込めない
気づいたら外は明るくなっていて
昨日の出来事は鮮明に思い出せなくて
でも 目の前にいるのは 孵化した動物だと
すぐにわかった 飲み込めた
その動物は思っていたよりも大きく
卵から出たとは思えないサイズだった
おそらく卵の3倍 いや それ以上に大きい
小学生1年生ほどの身長ほどはあるだろうか
そして見た目だが 全体的に白い 本当に白い
まるでアニメなどから出てきたような色だ
そして当たり前のように手足があった
なにか どこかで見たような気がした
そう 私が持っていた犬のフィギュアそのものだった 誰がどう見てもアニメからそのまま飛び出してきたように見えるだろう
それほどまでに 同じだった
でも ちょっと大きい
家に収まるかな なんて考えていたら
犬が低い声で唸っている
威嚇というのだろうか
いや 痛がっているようにも見える
よくよく考えたら先程から感じている
後頭部の温かさはなんだ?
相手が犬なことを考えるとしっぽ
というのが頭に浮かんだが
少し気づくのが遅かったようだ
目の前に犬の肉球が見え…
なかなかに大きい犬の攻撃を受けてしまったからだろう 少し腕の当たりがジンジン痛むが
犬のことをどうするか考えた
まず ゲージに入れてみようと思ったが
暴れて入ろうとはしなかった
そもそもゲージの大きさも足りなかったのもあるだろうが 課題の1つ目だ
それで餌を与えてみようと思い
昆虫ゼリーからドッグフードまで一通り与えてみたが 何一つ食べようとはしなかった
まぁ 餌を食べなくても生きていけるキメラもいる というか見たのでそこは心配していない
とにかくまずは大きいゲージを買わなければ
そう思い 買い物に出かけたが そうそういい
感じのものは見つけられなかった
生き物に詳しい友達に相談したが キメラ動物についての飼育方法などはわからなかった
だが キメラ動物専門のグッズを売っている店を紹介してもらえた 近場だったので
すぐに向かった
店に入ると 目に入ったのはあの猫だった
よくテレビで見かける 一時期バズっていた
((エサがいらない猫))だ 何故か店の入口に居た
早速 少し混乱していたが 店員さんに話をした
すぐにゲージは用意してもらえることになったが 飯が必要かどうか 適切な温度その他諸々に関しては精密に検査をしないと分からない
らしい
その後も店員さんに話を聞いた
例の猫の話
キメラ動物の危険性
お金の面など
一通り教えてもらった
まぁ それで例の猫は 『元の飼い主を食べた』と聞いた 最初に聞いた時はびっくりしたさ
でも 話を聞くうちに納得してしまった
なんでも その飼い主は何度も この店に
来店していたらしい その度にキメラ動物の
精密検査を勧めたが 断ったと言うわけだ
そのおかげで例の猫の凶暴性に気づけずに
襲われてしまった
そう言うわけで 精密検査を勧められたが
こんな話を聞いたあとでは断れるはずもなく 検査の予約までしてしまった
もう財布どころか口座まで凍りつきそうだ
それで お金の面は キメラ動物保護法によって
申請すればお金が貰えるらしいので
気にしなくて良いとの事だった
国に感謝したのはこの日が初めてだった
もう少しで検査の日だ
これまで過ごしてきて気になったことは
あまり無かった 獣臭などもほぼなく
餌もあまり食べないので楽だった
初日こそ怪我を負ったものの基本は温厚な犬だ あまり鳴かず 噛んだりすることも少ない
そう ただの犬のように見えていたんだ
いや 見せられていたのかもな
検査の日だ
車に乗って 前に予約したキメラ動物研究連に向かう 検査の内容も何が判明するのかも
何もわかっていなかった
でも 例の猫の
二の舞にならないように念には念を入れよう
そう思ったら少しは心配が安らぐだろうか
今まで過ごしてきて
ただ置いてあるだけの物から
失いたくない大切な命
そういった考えに変わった
初めてだった 失いたくないものができたのは
「この個体は本当に凄いな 革命的だ」
そういった声が研究室内に響き渡る
渋い まさに悪役のような声だ
しかも 立場上も国に関係している人なので
本当に悪役にしか見えないと つくづく思う
検査の結果わかったのは 固有の能力
それとある程度の知能がある事だった
まるで善悪をわかっているかのように
顔をしかめたり 睨みつけたりしてきたのだ
「まるで犬の皮を被った人間だなぁ」
「結果は後で 資料にまとめて渡します」
長かった検査も終わり 家に帰る
この3日間 本当に疲れた
犬と一緒にベッドに潜る
「お前にも 名前…つけないとな」
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