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冥王の死は、ただの序章に過ぎなかった。篠田が倒した冥王――その姿を見て、誰もがその強大さに驚愕した。しかし、戦いが終わった後に明らかになったのは、冥王が倒れた理由ではなかった。篠田が斬り裂いたのは、冥王のクローンだったのだ。
「お前が倒したのは、クローンだ。」鋼谷の冷徹な声が響く。篠田はその言葉に一瞬、目を見開いた。
「クローン?」篠田の問いに、鋼谷は頷く。
「冥王は何度も死んでいる。」鋼谷の言葉に、篠田は言葉を失った。
冥王は、ただの人間ではなかった。彼の異能、虚無の手は彼自身を守る力をも生み出していた。冥王は死を迎えたとしても、すぐに新たな体を作り出すことができ、彼の本体は今も別の場所に存在していた。
「冥王の本体は今、フィリピンにいる。」鋼谷が冷たく告げた。その言葉が篠田の耳に重く響く。
「フィリピン?」篠田がその言葉を繰り返す。
「冥王はすでに何度もクローンを生み出し、その度に新しい体を得てきた。だが、今も本体はフィリピンに隠れている。」鋼谷の目は冷徹であり、篠田にその事実を伝える重みを感じさせる。
「奴は不死だってことか…。」篠田が冷静に言うと、鋼谷は少しだけ頷いた。
「不死ではないが、ほとんど不死に近い。クローンは一つの手段に過ぎない。冥王の本体が直接動き出せば、俺たちの戦いはさらに厳しくなる。」鋼谷は、冥王の恐ろしさを語る。
冥王の計画は、ただの支配ではなかった。彼の真の目的は、この世界の根幹を崩し、異能を持つ者たちを統一することにあった。そのために、クローンを使って自らの力を拡大し続けていた。
「彼の目的は、支配ではない。世界そのものを、自らの手のひらで操ろうとしている。」鋼谷は言葉を選びながら説明した。
「だから、あんなに何度も死を繰り返してきたのか…。」篠田は深く納得したように呟く。
冥王は決して一度死ぬことはない。打倒されても、その本体が生きていれば、すぐに新しい体を作り出すことができる。そして、再びこの世界でその異能を振るうことができるのだ。
「フィリピンか…。そこに行けば、冥王の本体がいるというのか?」篠田は目を鋭く光らせた。
「その通りだ。冥王はただの男ではない。彼の周りには、他にも強力な者たちが控えている。」鋼谷は険しい顔をして警告する。
「それでも、行くべきだ。」篠田は断言した。彼の目に迷いはなかった。
「行けば何が待っているかはわからない。それでも、俺たちはあの冥王を倒さなければならない。」篠田は決意を込めて言った。
鋼谷はその言葉を黙って受け止めた。冥王の本体に迫るということは、並大抵の戦いではない。しかし、それでも篠田には、冥王を倒すという強い意思があった。
冥王のクローンが倒れた遺体が静かに横たわっている。その体は、冥王のものとは全く異なり、人工的に作られたものだった。だが、その顔には冥王の姿を微かに感じさせるものがあった。
「これが冥王のクローン…。」篠田はその遺体をじっと見つめる。
「だが、これで終わったわけではない。」鋼谷は篠田に言った。
「冥王の本体が待っている。」篠田の言葉に、鋼谷は黙って頷いた。
そして二人は、冥王が待つフィリピンへと向かう決意を固めた。冥王のクローンは死んだだけだったが、その死が本当の戦いの始まりであることを、誰もが知っていた。