テラーノベル
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ごきげんよう、じゃんぬです。
見てくださって感謝の極みですのよ。
また長編始めちゃいましたわよ。
スランプの苦しみから生まれた鬱作品ですわおほほほ!!
わたくし元々の所属ゼミが経済でして(私情でごめんなさい)、最近のニュースが気になって仕方なかったんですのよ。
時事問題を話題にするの良くないなぁと思いつつ、創作意欲が抑えられなかったんですのよ。
米←日の片想いと、その隙を狙った英日の関係強化……格好のネタですわごめんなさい!!!
⚠Attention⚠
歴代日本がぜんぶ同一人物だが、他国は誰も気づいていない設定
日本がとても鬱かつメンヘラ
英→日→米 要素強め
優しいアメリカ✕可愛い日本 の、ほのぼのアメ日がお好きな方はご注意ください。
政治的意図はございません。
現実の国や地域には何の関連もございません。
そっか。
僕は、貴方の一番には、なれなかったんですね。
「お前だけ特別扱いすることは、……できない」
自身の提案を、目も合わせずに素気なく断られた瞬間、心を満たしたのはそんな空虚。
感情という感情を、誰かにごそっと纏めて抜き取られたようで、取り繕うことさえ出来なかった。
「あー…うん、あのさ。お前が今まで、よく尽くしてくれたことは知ってるけどよ。これは、譲歩出来ねぇんだわ」
日米同盟。実体すら怪しいそれに、アイデンティティを見いだして、先を行く彼に幻想を抱いた。
エゴイズムとニヒリズムに溢れかえったこの世界で、愛や人情や信頼なんて、糞ほどの役にも立たないのに。
「俺も、歩み寄ろうとはしてる。だからさ……もうちょい頑張ってもらえねぇかな」
何だかんだこの国は、僕を“一番”にしてくれる。
一番、守ってくれる。一番、重宝してくれる。一番、信頼してくれる。一番、愛してくれる。
──だって、最大の同盟国だもの。
なんて心地よい虚構だろう。ぬるま湯のようで、甘い蜜のようで、いつまでも繋がっていたくなる。
だからこそ、彼に直接宣告されるまでは、気づかぬふり、知らぬふり。
日米同盟なんて、最初から存在すらしていなかったというのに。
「……オレも今、結構キツいんだよ」
僕を育てたのは彼で、彼を支えるのは僕で、だから彼は僕を絶対に捨てない、なんて。
これを世間は、自惚れと呼ぶのかもしれない。
臭いものには蓋をして、汚いものから目を背けていた、数秒前までの自分。
「だからやっぱ、お前だけ特別扱いはできねぇわ」
初めて彼が顔を上げ、アイスブルーの瞳がこちらを射抜くように見つめてくる。
その虹彩は、自信とかカリスマ性とか、僕にはない素敵なものをたっぷり含んで、キラキラと星が散ったかのように輝いていた。
嗚呼、そうか。そうなんですね。
貴方の瞳は、はなから僕を捉えてすらいなかった。
「…………はい」
このひとが見つめ目指すのは、世界。
僕はその視線の、延長上にいるに過ぎないのに。
そのブルーアイズに映るのが、何よりも幸せだなんて、舞い上がっていた頃が恥ずかしい。
「そう、ですよね」
曖昧に微笑んで是を返せば、彼は満足げな笑みを浮かべた。
さぁっと血の気が引いていって、指先は凍えるほど冷たいのに、首の後ろは変に熱い。
理解が追いつかない会話に、かろうじて相槌を打ちながら、泥のように重い体を何とか支える、この体たらく。
「…失礼、しました……」
それから、どうやって帰ったかは覚えていない。
ただ、眠れぬ夜が続くばかりだったことだけは、知覚している。
日常は、無情にも続いていく。
青白く光るディスプレイとにらめっこしながら、キーボードの上で指を躍らせた。
「………はぁ、」
嗚呼、痛いなぁ。
働き詰めて腰が痛い、首が痛い、肩が痛い。
そして何より、“僕こそが彼の隣に立っている”と、自惚れていた自分自身が、痛い。
「…ぁー……」
悩み事が多すぎて、頭も痛い。
これから、どうしろというのだ。
貿易も財政も揺らいでばかり。ずっと彼にべったりだった自分には、伝手もコネもない。
これじゃあ鎖国の頃と変わらないな、なんて小さく笑った。
漸く分かった。僕は、彼の一番にはなれない。
だから、彼が必ず守ってくれるだなんて、勘違いも甚だしいのだ。
ぬくぬくとした傘の中で、彼の背に寄りかかっていられる時は、もう過ぎ去ったのだ。
自分の足でこの地を踏みしめて、自分の力でこの地を守らねばならない。
「………さん、」
80年前までは、ちゃんとそうして生きてきたのに。
一度、道を違えてしまった自分は、そんな当たり前のことすら忘れてしまっていたようだ。
でも思い出したところで、何が変わるんだろう。
ちゃんとしなきゃ、と腹を決めた今でも、無意識に縋る相手を探している。
今更、再び刀を握るのも、……きっともう無理だ。
「……さん、………ですか?」
──与えられる餌を好んで、自分から狩りに行かない雛のようだ
僕に甘味を与えながら、そう笑ったひとがいた。
そんなところが可愛いのだが、とさえ言った彼は、誰だっただろうか。
──引きこもってんのに、寂しがりなんだな
からかうように片眉を上げて、そう笑ったひとがいた。
仕方ないから面倒見てやるよ、と約束してくれた彼は、誰だっただろうか。
──お前、思ってたより弱いんだな。……ああ、軍事力云々の話じゃなくて。
意外だと言うように目を瞬いて、そう笑ったひとがいた。
冷えた手を握って温めてくれた彼は、誰だっただろうか。
志那の彼か、蘭国の彼か、独国の彼か……もう誰だか思い出せないけれど。
随分と可愛がってもらった。その温もりが忘れられなくて、変われない痴者がここにいる。
少し触れた相手に重すぎる期待を寄せて、乞食のように心を求めてしまう愚か者が、ここに。
認めてほしくて、一番になりたくて。
二兎どころか三兎も四兎も追って、ぜんぶ失った五のつくあの日。
ちゃんとしなきゃ、と決めたのに、結局また米国の彼に縋っていた。
どうやら僕は、とっても欲深いらしい。
一人で良い。一人でもいいから、伸ばした手を、振りほどかずに握って欲しい……なんて。
「──日本」
そう、こうやって、名を呼んで欲し────
「……はへ?」
「ああ、漸く気づいてくださいましたか」
物思いに沈んでいた僕の前に、息を呑むような美形が現れた。
物腰柔らかなテノールボイス、鼻腔を擽る上品な香り、瞳を縁取る長い白睫毛。
そして極めつけは──深海のようなダークブルーの瞳。
アメリカさんと似ているけれど、アメリカさんより深い色の瞳。
「いっ、イギリスさん……っ!?」
見知った島国の彼が、僕の顔をのぞき込んでいた。
条件反射的に仰け反るが、彼はするりと近づいてくる。うっ……さすがは英国紳士、距離の詰め方がスマートだ。
それに、なんだか良い匂い。ペンハリガンだっけ。ブランドには疎い僕だが、昔教わった記憶がある。
「お疲れのようでしたから、声をおかけしたのですが……貴方ったら、全然振り向いてくださらない」
「す、すいません……ぼーっとしてました…」
酷いひと、と冗談めかして微笑まれた。
そんなにぼんやりしていただろうか。居た堪れなくて肩を竦めると、また彼は小さく笑った。
「お気になさらず。……ただ、」
「はい?」
「日本さん。貴方、無茶しすぎです」
しかし、柔らかな微笑みから一転、彼はデスクの上を一瞥して、その形の良い眉を顰めた。
時計の針は刻々と定時に近づいているものの、机上は途方もない量のタスクが占領している。
「これも……これも、貴方がやることではないでしょう。それにこれも、明日で良いはずです」
「……あはは…そうですね」
「どうして抱え込むんです?このままだと、体壊しますよ」
心配させてしまった。気まずさに目を逸らす。
でも、だって……動いていないと思考の海に溺れてしまいそうなのだ。泳いでいないと死んでしまう回遊魚のように。
いっそ、壊れてしまえばいい。
高熱に魘されて意識が朦朧としていれば、悶々と悩むことはないだろうから。
「何があったんです?」
「………な、にも、…ありません、よ?」
言えない。言えるわけない。
貴方の息子さんに振られました、なんて。
振られたどころか、告白すらする前に、無意識で一方的な執着を明らかにされて、その上でその想いを断ち切られただけだというのに。
特別扱いできません、はいそうですか残念です。
他の国ならそれで終わること。
でも僕は、彼との繫がりに存在意義を見いだしていたものだから、地盤が崩れたも同然で。
惚れた腫れたで終わることじゃなくて、でも終わらせなきゃいけないこと。
「……まぁ良いです。無理には聞きません」
ほっと、気づかれぬように息を吐いた。
しかし、もう終わると思ったのに、彼はチェアを引っ張ってきて、側に腰掛けた。
長い脚が組まれて、アーモンドアイが細められる。
「……日本さん。貴方、最近──ちゃんと眠れていますか」
どきっ、と心臓が嫌な音を立てた。
静かな水面のような瞳がこちらを捉えていて、頭の中を全て見透かされているような気持ち。
知らずして握りしめた掌に、冷たい汗がにじむ。
「悪夢で飛び起きてませんか。寝付けないまま朝を迎えてませんか。……まさか、薬に頼るなんてこと、してないでしょうね」
「そ、れは、」
してないです、と尻すぼみな返答しか返せない。
これじゃあ、その通りだと肯定しているようなものではないか。
事実、彼の一語一句は全て正しいのだけれど。
喉奥に引っかかったカプセルが、逆流してくるような心地がする。
「なぜ貴方は……いつも、ご自愛なさらないのですか」
震える声。哀しむような、慈しむような。
珍しいな、と目を見開いた僕に──彼はあろうことが、するりと手を伸ばしてきた。
少し冷えた指先が、僕の頬をなぞる。
「ぇ、あ……」
「うちの愚息が迷惑をおかけしましたね。まったく、ここまで貴方を追い込むなんて」
え?なに?なにこれ。これどういう状況?
内心パニックで、ぴしりと固まる。
それどころか彼は、親指で僕の目元をぬぐった。
「寝てないんでしょう。酷い隈ですよ」
「ねて、ます」
「誤魔化す時に瞬きする癖、変わってないですね。下手に取り繕わなくて結構。」
世紀の大嘘つきには、貴方の可愛い嘘なんてバレバレです、と言う彼は確かにこの道のプロだった。
昔もよく、こうして騙されていたっけ。
同盟国同士でのキスは当たり前です、とか言われて危うく信じ──いや、もうやめよう。
帝国だった僕は、もう死んだことになっているとはいえ、羞恥心で死ねる。
「苦労を見せないのは貴方の美徳、そんなことは分かっています。確かに、いつも笑顔の貴方は美しい」
「あ、あの……?」
「ですが、今の貴方は見ていられません。辛い時に、無理に笑う必要はないのです」
ひんやりとした掌が、熱を持った目尻に触れる。
とろりとした囁き声と、優しい手付きが、疲れた体にじわじわと染み渡っていく。
「どうか、私にも頼ってください。──私は、貴方の準同盟国なのだから」
同盟国なのだから、少しは頼りなさい。
100年近く前にも、そう言われた気がする。
右も左も分からぬ僕に、国際社会での振る舞いを教えてくれたのは、紛れもない彼だった。
手間取らせて申し訳ないと謝った当時の僕に、彼は少し怒ったような声で、そう言ったのだ。
「……は、い…」
有無を言わせぬ口調にこくりと頷くと、指先がふっと離れていく。
良いひとだ。僕と彼とはかなり離れているのに。とっても良くしてくれる。
なんでだろう?と思わなくもないが、親切を好奇心で壊すほど無分別ではないつもりだ。
「今日はもう休みなさい。目を閉じているだけで休まりますから」
「何だかイギリスさん、お母さんみたいですね」
「まあ、伊達にクソガk……失礼、困った子たちを育ててきてませんからね」
今このひと、クソガキって言ったな。
何だか可笑しくなってきて、声を上げて笑う僕に、彼もまた笑みを零す。
今日はちょっとだけ、眠れる気がした。
コメント
9件
初コメ失礼いたします!!! 新作?!神すぎて危うく天に昇りそうでした、、 イギリス様、、、貴方様はいつまで紳士なんだが、、 それを書いてくださってますじゃんぬ様には頭が上がりません!! 他の物語も好きですがこの物語も沼ってしまいそうです!!!!!! これからも頑張ってください!!じゃんぬ様💕
なんだってんだまったく!!!中世にはフライギ、近代ではイタ王ナチ、現代の「時事ネタ」では英日米ときた! 貴方なんでも尊くしちゃうんですね。 一兎、ニ兎、三兎、四兎ときて五の付くあの日。言葉選びが上手すぎますよ。 突き放す息子と歩み寄ってくれるイギリス、より冷たい方を選んでしまうのは温帯湿潤気候の性でしょうか… 温帯といえばまだまだ残暑があります故、快適な環境で筆を執ってくださいまし。
分かりますよ。誰かの特別になりたい気持ちも、誰かに縋らないと生きていけない自分への嫌悪も。絶対に日本君が悪いというわけではなくて、もちろんアメリカ君が悪いわけでもないのですから、難しいですよね。アメリカ君の言葉一つでここまで心乱されてしまうなんて、日本君の想いはなんて重いのでしょう。普通にその辺にいそうなヤンデレなのがまた、大変素晴らしい。じゃんぬ様は心情描写がとてもお上手で、毎度毎度、脱帽しております。そして比喩を多用する詩人な我が祖国は愛らしいですね。 追い詰められている時に優しくされて、嘘は全て見抜かれて、完璧なだけでなく少しの言葉遣いの悪さも見せられて。これで惚れない人など、いるのでしょうか。いません。これ以上人を誑すのはお止めになってくださいませ。きっと日本君限定なのでしょうね。直線関係どひゃーとなっています。続きが楽しみです。