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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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貴方視点


シーンと静まり返った教室には、カッ…カッ…っとチョークの音だけが大きく聞こえる。


一時間目からみんなと一緒に自分の席に座って授業を受けていた。


とは言ってもみんなからワタシのことは見えてないけど。


普通のことなのに、少し寂しさを感じるのは生きていた頃にみんなから頼りにされていた証拠。


時々、みんながワタシの席の方をチラチラと伺うようにみてくる。


その顔からは、「信じられない」「悲しい」などの感情が読み取れる。


そしてワタシは、そんなことは一つも気にとめずに数学の計算式を解いていた。


相変わらず数学のこの定理だけは理解することができない。


どうやったらそうなんのよ。


めっちゃ分かりやすい説明聞いても見ても教えてもらっても理解できない。


テストにこれがでたらその度にボロボロの点数で返ってきてたなぁ…。


心の中でそう呟く。


呟くというかもう愚痴に近い。


おばあちゃんになったわけじゃないのに、生きていた頃の記憶が懐かしく感じる。


こうやって、幽霊になってもつまらない授業を聞いているワタシは本当に暇なのだろうか。


そういえば、、、いまだにトン氏が保健室に行ったきり帰ってきていない。


ワタシは昼になっても帰ってこないトン氏が心配になって保健室へ向かった。


あ、言うのが遅れたけれど、今は四時間目の数学の授業中。


寝不足って言ったっていくらなんでも遅すぎる。


朝から行っているため余計に心配だ。


落ち込んでいたようにも、苦しそうにも見えたし…。


大体、授業を抜け出してサボるなんてトン氏らしくない。


トン氏なら一時間も経てばすぐに帰ってくるだろうから。


不安に不安が重なって居ても立ってもいられなくなった。


急いで教室から出て保健室に向かう。


数学?数学なんていつでもできるからいいよ。


今はトン氏の方が大事なんだから。




一階まで降り、保健室の扉をすり抜ける。


二個あるうちの一つのベッドのカーテンが閉められていた。


保健室の先生は不在のようだった。


カーテンが閉まってる方のベッドへ近づいてみる。


あ、トン氏だ。


・・・え?なんで分かったかって?


そりゃ長年ずっと一緒にいた幼馴染だからだよ。


喧嘩しても次の日にはケロッとしてる。


それがワタシたち。


そんなワタシたち幼馴染を舐めないでよね?(笑)


カーテンの少しの隙間から覗くと案の定トン氏がいた。


すやすやと気持ちよさそうに眠っている。


最近夜寝ることができなかったのかな…?


目の下に濃い隈ができてる。


カーテンをくぐり抜け中に入る。


すぐそこに置いてあった丸椅子に腰掛けた。


すると、トン氏が急に唸り声を上げだした。


だ、大丈夫かな…?


眉もひそめて苦しそうにしている。


トントン「うー…ん、んん。〇〇ちゃん…。」


え、ワタシ?


今、呼ばれたよね…?


夢の中に出てきてるのかな。


“トントンくん…。”


トントン「うー…ん。」


久しぶりにこの名前を呼んだ気がする。


だって中学生になってまでくん呼びはちょっと嫌かなと思ったから。


中学生になってから今まではずっとトン氏って呼んでた。


これも勝手なワタシの気遣い。


みんなに対しては要らない気遣いだったかな?


そこら辺はどう思ってるんだろう…。


こんな大事な話は全くしてこなかった。


それは中学に上がってから彼らがワタシに対して冷たくなったから。


別に何もしていないのに…。


覚えていないだけで何かしてしまったのかな…。


トントンにはお世話になったなぁ…。


ワタシ達がまだ小さい時に、夜遅いのにも関わらず公園に連れていったこともあったっけ?笑


トントンはそれを文句も言わずに着いてきてくれたよね…。


結局は直ぐに家に帰されたな。


昔の思い出に浸っていた時に四時間目終了の合図のチャイムが鳴った。


(キーンコーンカーンコーン…


あ、そういえばお昼は屋上で食べてたんだっけ?


トン氏には申し訳ないけどちょっとみんなのとこに行ってこようかな。


“おやすみ、ゆっくり休んでね。”


それだけ言い、ワタシは保健室をでた。



階段を登っていき屋上の扉をすり抜ける。


すると、もう既にみんながいた。


でも、何人かにいつもの元気さがなかった。


やっぱり、ワタシが死んだことを引きずってしまってるのだろうか。


それは、自惚れすぎかな。笑


シャオロン「なあ、お前ら元気出せや。」


きっと、シャオのこの言葉は自分に向けたものであろう。


終始下を向いている鬱、ゾムにも向けられたものでもある。


エーミールは相変わらず難しそうな本を読んでいて。


ショッピは小さい一口でご飯を頬張っている。


シッマは時々食べない日があって、今日はその日なのか手すりに腕をのせて運動場を眺めている。


チーノは少し気まずそうにシャオの横でご飯を食べていた。


ロボロはというと、、、ゾムと鬱の間に挟まれている。


とても気まずそうだけどなんとか元気づけようと声をかけていた。


ロボロ「なぁゾム、鬱?そんな暗い顔しとったらきっと〇〇ちゃんも悲しむで?」


そういうロボロはワタシの事を何でも知ってる。


ワタシの思ってることをズバッと当ててきてなんでも解決してしまうから。


鬱「そう、、、やな、うん。」


ゾム「おん、、、。」


返事はしたものの二人とも顔は暗いまま。


もしも彼らに触れることができるなら、今すぐにでも抱きしめて元気づけてあげたい。


そんな願いが叶うこともなく、ワタシの手は彼らの身体をすり抜けた。


(キーンコーンカーンコーン…


昼休みが始まったチャイムが校内に響く。


ゾム「俺、外遊びに行ってくる。」


コネシマ「待てや俺も行く!」


チーノ「ちょっと二人とも!?昼飯全然食ってませんよね、!?」


ゾムとシッマはそんなチーノの言葉に耳を傾けることなく、屋上から飛びだして行った。


ショッピ「チーノ、一週間もすれば元通りになるで、きっと。」


鬱「そうやといいんやけどな。」


チーノを慰めてるショッピの横を、鬱はふらっとしながら通り過ぎて屋上をでていった。


(ギィィ…バタン


屋上の重たい扉が閉められた。


シャオロン「なんやねん、あいつら。せっかく俺頑張って元気ださせようとしてやったんに。」


ロボロ「まあまあ、今は無理あるで。」


エーミール「ちょっとずつ、受け入れていったらいい。ここにいる俺らだけでも元気出そうや。」


ずっと本を読んでいたエミさん。


読みながらも話は聞いていたのか、なるべく明るい声でそう口にする。


なんだか、いつものみんなじゃないみたい。


いつか、ばらばらになってしまいそうな…。


そんな感じがしてたまらない。


どうか、みんなが仲良く笑いあっている日が戻ってきますように。


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