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第3話
気づいたら、朝になっていた。
病院の廊下に置かれたベンチ。
俺は、そこに座ったまま動けなかった。
頭が、うまく働かない。
医者の言葉も
周りの声も
全部遠くに聞こえていた。
康二が、
⋯⋯⋯⋯⋯いない?
そんなはずない。
昨日まで、一緒に笑ってた。
ソファでくっついて笑い合って、
くだらない話して。
こんな簡単に失うはずがない。
あの日々が、あの幸せが、急に終わるなんて。
そんなこと、あるわけない。
ふと、スタッフが近づいてきた。
👤「目黒さん……これ」
差し出されたのは、
黒いカメラバックだった。
👤「事故のとき、康二くんが持ってたものです」
康二は、写真が好きだった。
仕事でも、プライベートでも、
よくカメラを持ち歩いていた。
俺は震える手でバッグを受け取る。
そのまま、ファスナーを開けた。
中には、いつものカメラ。
🖤「……康二」
小さく名前を呼ぶ。
返事は、当然ない。
俺は、ゆっくりカメラの電源を入れた。
液晶に、写真が表示される。
一枚目、
スタジオのメンバー。
二枚目、
楽屋でふざけている誰か。
三枚目、
料理。
空。
街。
日光。
いつもの、康二の写真。
そして
次の写真を見た瞬間
俺の呼吸が止まった。
そこに写っていたのは、
俺だった。
家のソファで、
テレビを見ながら笑っている俺。
少しピントが甘くて、
でも、すごく優しい写真。
次の写真。
キッチンでコーヒーを入れている俺。
眠そうな顔でスマホを見ている俺。
全部。
全部。
俺だった。
🖤「……っ」
喉が詰まる。
写真はまだ続く。
寝てる俺。
笑ってる俺。
ふざけてる俺。
どの写真も、同じだった。
全部、優しい。
優しくて、愛しいものを見るみたいな写真。
最後の一枚。
そこには、
俺に気づかれて、
ちょっと照れて笑っている康二が写っていた。
🖤「……何撮ってんの?」
🧡「めめや」
🖤「俺?」
🧡「おん」
あの時の会話が蘇る。
🧡「めめ、ええ顔すんねん」
康二は、そう言って笑っていた。
🖤「……康二」
カメラを握る手が震える。
🖤「なんで⋯⋯なんで俺ばっか撮ってんだよ⋯⋯⋯⋯」
声が、かすれる。
🖤「康二の写真……もっと撮ればよかった⋯⋯⋯⋯」
涙が、ぽたっと液晶に落ちた
🖤「俺も、」
嗚咽をこらえながら呟く。
🖤「もっと……康二の笑顔を撮っておけば良かったっ、⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
画面の中で
康二は、照れた顔で笑っていた。
もう二度と
その笑顔を撮ることはできない。