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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。無事にライデン会長との会談を終わらせることができました。
取り敢えず軍艦アークロイアルを購入。またそれ以外にも今現在ある最新兵器の試作品や設計図を次回持ってきてくださることが決まりました。これらはドルマンさん達に渡して研究開発を行うつもりです。
さて、抗争が一段落して『オータムリゾート』も一年間十六番街の開発に費やす方針ですから、我々としても一年を目安に更なる組織の強化を図る必要があります。
現在進めている街の建設は引き続き急ピッチで行う必要があるので、余剰人員を注ぎ込んで建設を急がせます。
次に収益を増加させるために農園の更なる拡大を図ります。こちらはロウを中心に段階的に拡張していくとのこと。
そして密かに開発した紙と石鹸ですが、これらも本格的に市場へ流すことを決定しました。これらは今回『ターラン商会』から流れてきた二百名の中から適性を見て専用の人員を配置。一年以内に量産体制確立を目指します。
次に薬草園ですが、これには心強い専門家が管理を申し出てくれました。エレノアさんの弟ロメオ君です。
「薬草園を見てみたが、不要な奴がたくさん混じってた。俺が管理するから、代わりに研究用にいくつか提供してくれないか?」
「許可しますよ、ロメオ君。密貿易の主力商品ですから一定の数は揃えていただきますけど」
「分かってる、その辺は姉貴と相談しながらやるさ」
今回の抗争で備蓄していた薬草は使い果たしてしまいましたからね。実際には使い方が分からなくて死蔵していたのですが、有効活用できて何よりです。
なにより医療の発展を図れるなら望むところです。
「普通はかご一杯集めるなんて不可能なんだがなぁ」
「『大樹』のお陰ですよ」
南方では薬草は貴重みたいです。一枚だけでも大金が動くのだとか。だからボロ儲けできるんですけどね。
ただ、今回の密貿易で魔石は手に入りませんでした。
「どうやらあっちの帝室の抗争は内乱になりそうでね、魔石は戦いに備えてかき集められてるみたいだ。その代わり、薬草の需要はうなぎ登りさ」
「次はアークロイアルの処女航海も兼ねてお願いしますね、エレノアさん」
「ああ、噂に聞いた蒸気船だ。しかも最新鋭なんだろう?船乗りとして興味があるね」
「それは何よりです」
「けど、燃料はどうするんだい?燃焼石が要るんだろう?」
「それがですね、石切場で燃焼石が山ほど採掘できることが判明しまして」
「……そりゃまた、シャーリィちゃんにとって都合が良いねぇ。『大樹』のおかげかな?」
「影響範囲内ですから、おそらく。助かるので気にはしませんが」
理屈が気になりますが、今のところ不利益はないので放置。拝んでおきます。
それから数日後、港湾エリアにあるうちの桟橋に巨大な船が停泊しました。アークロイアルです。エレノアさんの船の倍はありますね。
「では、確かに引き渡しました」
「ご苦労様です」
私は回航してきた『ライデン社』の皆さんを労いお土産として農産物を提供しました。
「蒸気機関の運用については、数名の専門家を残しました。彼らから教育を受けてください」
「そりゃ助かるよ、当てにさせて貰うさ。器用な奴を当てる。野郎共!まずは乗り込みな!新しい船だよ!」
「「「へい!!!」」」
早速エレノアさん達が乗り込んで説明を受けています。興味はありますが、私は船乗りではないので今回は見送ります。
「あら、これは蒸気船かしら?随分と大きいわね」
しばらく作業風景を桟橋から眺めていると、相変わらず紫のローブと三角帽子を被ったサリアさんがやってきました。
「サリアさん、ごきげんよう」
「ごきげんよう、シャーリィ。これは?」
相変わらず眠そうな目をして居ます。
「アークロイアルです。『ライデン社』から購入しました」
「やっぱりアークロイアルだったのね」
「ご存知でしたか」
「海の世界じゃ有名な話よ。『ライデン社』が最新鋭の軍艦を建造してるってね。それをあっさり買い取れる貴女にビックリしたけれど」
眠そうな表情はそのままアークロイアルを眺めるサリアさん。
「色々ありました」
「本当、貴女を見ていると退屈しないわ……あら?貴女、その魔力……」
「それも色々ありまして」
「興味深いわね、これまで隠されていたのに。それに貴女、後天的なものね?」
「詳しいことは分かりません。今学んでいるところです」
「ワイトキングにでしょ?私も教えてあげられるわよ。いや、興味深いから私にも教えさせなさい」
「分かりました」
私を対象とした研究が協定の条件ですからね。断る理由もありません。サリアさんは魔女、魔法の専門家なのですから。
「それじゃ、これを渡しておくわ」
サリアさんはゆったりしたローブの中から小さな水晶玉を取り出しました。
……お胸さまおっきい……サリアさんも巨乳でした。ふぁっく。
「これは?」
「連絡用の水晶よ。魔力がないと扱えない代物だけど、貴女なら使えるわよね」
「連絡用の水晶……どう使うのですか?」
興味深い。
「こうするのよ。魔力を込めて……こんにちは」
サリアさんがもうひとつ水晶を取り出して話し掛けると、私が持っている水晶からサリアさんの声が!
「これは凄い!離れていてもお話ができるのですか!?」
「ええ、そうよ。距離に制限はないわ。お互いに魔力を持ってることが大前提だけれど」
凄い!こんなものがあれば連絡手段に革命が起きますよ!
「サリアさん、もうひとつありませんか?妹に持たせたいんです」
「魔力がなければ意味がないわよ?」
「ご安心を、妹も魔法が使えますから」
「……本当に退屈しないわね。妹さんまで規格外なのかしら?」
あっ、サリアさんが目を細めた。
「私も詳しいことは分かりません。ですが、私に魔力があると教えてくれたのは、妹なんです」
「興味深いわね。幾らでもあるから渡すのは構わないけれど、条件があるわ」
「妹を連れてこい、ですね?」
「ふふっ、分かってるじゃない。別に危害を加えるつもりはないわよ?」
「そこは信頼していますのでご安心を。近いうちに連れてきますね」
これをレイミに持たせれば、いつでも自由に連絡が取れます!
組織にとってもかなり重要なものになりますね。
私は新しく手に入れた魔法具の活用を考えながら、軍艦アークロイアルを眺めるのでした。