※この物語はフィクションです。
実在の人物及び団体、事件などとは一切関係ありません。
〈File19:澱〉
簡単に触れないでほしい。
見ないでほしい。
「あなたのお父様、行方不明になってしまったのよね」
それは私の世界の重心だから。
私の胸の奥でずっと息を潜めていたもの恐ろしさを、また突きつけられた心地だった。
早くこの場からいなくなりたい。
今日ここに来たことをなかったことにしたい。
急用を思い出したと言えばいい、人違いだとかわせばいい、曖昧に言葉を濁せばいい。
なのに舌が空回りして、漠然としたなにかに喉を塞がれてるみたいだった。
水野さんに不審がられる前になにか言わないと。
可哀想にと哀れまれる前に、気を落とさないでと励まされる前に、なにかなにかなにか。
なにか。
「佐伯カグヤ」
降ってくる、という言葉が相応しい声だった。
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