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「ここが、紡さんの部屋なんですね。へー、何か小物一杯ですね。好きなんですか?」
「ま、まあ、可愛いものが好きだから、すぐに部屋ものが一杯になっちゃって」
「えー綺麗ですって。僕の部屋に比べれば」
と、自虐ネタをいうゆず君。
そうだ、ゆず君は片付けが苦手で始めて部屋を訪れたとき、汚っと、思わず声が出たほどだった。もしかして、またゴミがたまっているんじゃ……と思って、今度またいって掃除しなきゃいけないかなあ、なんて考えていた。そんなことを考えているうちに、部屋の中をうろつきはじめたゆず君は俺のベッドの下を覗き出す。
「な、何してるの」
「エロ本探してるんです」
「え、エロ……本!? な、ないよ」
「エロ本ってベッドの下に隠すものじゃないんですか!? もしかして、紡さん、大胆に本棚に……」
「いやいや、ないない。エロ本なんて持ってないから」
「そんな……恋人の部屋に行ってエロ本見つけるのって醍醐味じゃないんですか」
がくりと肩を落とすゆず君。何に夢を見ているんだ、と思いつつ、俺は、エロ本を持っていると思われているのかと、そっちの方が驚きだった。それに、まず部屋に来てエロ本を探す神経を疑ってしまう。まあ、それが、ゆず君だっていうのは理解しているんだけど、矢っ張り自由すぎるとも思う。他の人にもこうなのだろうか。
俺は、肩を落としているゆず君を見て、ふと、先ほどの事を思い出してしまった。
「ねえ、ゆず君」
「何ですか、朝音さん。なんか、真剣な顔、ウケますね」
と、プッと小さく吹き出したゆず君は何処か、馬鹿にしたように俺を見ていた。
きっと彼にとっては、先ほどの事はそれくらいのことなんだろう。
「あのさ……ゆず君が、俺のこと紡って呼ぶようになったのって……なったの、とか、じゃなくて、何て言うんだろう。紡って呼ぶの、下の名前で呼ぼうと思ったのって、恋人役だから?」
「ん? ああ、さっきのですか。まあ、差別化っていうのはありますよね。だって、どっちも朝音さんでしたし。でも、それは考えてなかったかも。恋人役だからーとか。というか、紡さん、そんなこと気にしていたんですね」
なんて、ゆず君は眉を下げていった。
矢っ張り、そんなこと、だったんだ、と俺は痛めなくてもいい胸を痛めて、ぎゅっと服を握りしめた。何か、期待している自分がいて、恥ずかしくて、虚しかった。
それを感じ取ったのかどうかは知らないけど、ゆず君は、「でも」と話を続けた。
「紡って名前、僕好きですよ。まあ、なんかこんな形で、下の名前呼びになっちゃいましたけど……前から、よんでみたいなとは思ってたので」
「そう……俺もゆうってよんだ方が良い?」
「いえ、ゆず君ってなにげに気に入ってるので。それに、そう呼ぶの紡さんだけ何で、なんか特別って感じがして好きです」
と、ゆず君は言ってくれた。
それが本心だったのかは、分からないが、そういわれて俺は少しだけ、心が救われるような気がした。その言葉だけを自分を騙して。
「あっ、そうだ。お家デートしたいっていいましたよね、僕」
「え、ああ、うん。言ったけど……え」
気づきました? と微笑むゆず君。ゆっくりと近付いてきて、そのまま一気に俺をベッドに押し倒す。ラブホより小さいベッドはスプリングのきしみがかなり大きく聞える。
するりと、ゆず君は俺の服の中に手を忍び込ませ、突起に触れ、俺はびくっと体を震わせた。ツンと触れるだけだったのが、キュッと抓んだり、カリカリと引っ掻いてきて、だんだんと、身体が熱を持ち始める。もう、すっかり気持ちいいのを覚えてしまった身体だから、いうことを聞かなかった。
(こんなの、反応しないって言う方が……むりじゃ……っ!)
服を上まであげられ、露わになった胸に舌を這わせるゆず君。俺の反応を楽しむように舌で転がしてから、つぅっと糸を引いて離れていく。
それから、ゆず君の指先はどんどん下に下がっていく。ズボンに手をかけられ、慌てて俺はゆず君の手を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待って、鍵、してない」
「鍵はかけました」
「い、いつの間に!? じゃ、じゃなくて、隣、あや君いるから……っ」
そう言って、どうにかゆず君に退いて貰おうとしたが、ゆず君の瞳には熱がこもり始めていて、このままだと本当に最後までされてしまいそうで怖かった。
「大丈夫です。声出さなかったらバレませんよ」
「そういう問題じゃな……っ」
そう言いながら、俺の言葉を無視して、俺の下半身に顔を近づけていく。
「いけない事してる気分になって、逆に興奮しません?」
「し、しな……」
「じゃあ、何で紡さんの勃ってるんですか?」
と、ちょんと膨らんだズボンの中心を触られ、俺は、息を飲んだ。
やるでしょ? なんて、目で見られて、俺はグッと下唇を噛むしかなかった。きっと、ゆず君は止らないから。
「……紡さん、良い子。『俺』がちゃんと気持ちよくしてあげるから」
スイッチの入ったゆず君は髪を掻上げると、妖艶な笑みを浮かべた。