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「……あのノア先輩が…」
入社した時からだ。
テキパキ働くダレイを裏に、いつもフラフラどこかへ消えてしまうノア
それを不満に思っている人も多く、時々愚痴をしてる人を時たま聞いたことがあるくらいだ
しかし、カードの表裏があるように,仕事にも裏表の作業をする人が必要なものだ
裏で支えてた人こそが、ノアだった
彼は頑張っている、人の見えないところで
_泥酔__🥀𓈒 𓏸
突然、机の上のスマホから着信が響いた
「誰だ…?」
「はい…もしもし」
「レオンちゃ〜ん~…やっほ〜」
(はぁ?嘘でしょう?)
電話の相手は泥酔しきったノアだった
今彼は取引先に行っているはずなのに…何故こうも飲んでしまうのか…
「……飲み過ぎなんじゃないですか?…一体何時だと……」
「わぁ!子供だぁ〜!」
「なっ!?僕は子供じゃないです!!明日の仕事に備えて体を休ませておかなければ……」
「あのね〜レオンちゃん〜仕事仕事ってさぁ…君は仕事だらけの刑事さんになりたかったのかい?」
ノアに言われた一言に驚かされたのは初めてでは無い。
ましては泥酔した人の言葉など気にする事無いはずなのに、こうもグッと来る言葉を言われたのは、初めてだった
「はっ………僕は…」
「まぁ…俺が言えたことじゃないッけど〜!」
「どういうことです?」
「おれは刑事になりたかったわけじャッないし〜、なんなら歌手になりたかったもん」
「えっ……」
「刑事の身が言えたわけじゃないけろ,親がきびしかったんだよ~…おれの人生ほとんどとられちまったもんさ」
「だってあんなに仕事を…」
「そりゃ〜ダレイにまけたくないもん」
「…はい?」
「みんな見るのはダレイなんだもん〜先輩さみしいよ〜…でもこうやって仕事をやろうと思えるのはあのやろーのせいだからなぁ」
「野郎って…悪くいうのはよしてくださいよ」
「ふん!」
電話越しから布が動く音がする
布団の上にいるようだ
「…早く寝て下さい。明日帰りなんでしょう?」
「うん!かえらない!」
「帰って来なさいよ…話は明日聞きます。おやすみなさい」
「えぇ!もう?」
電話を切る流れになると話し相手が消えて寂しいのか、ノアは嫌がる
「寝る前の酔っぱらい相手する気持ちも考えて下さい。」
「冷たい!レオンちゃんのレモンめ!」
「それは酸っぱいでしょうが」
「アッハハッ!レモンちゃんおもしろいね〜」
「名前変わってます」
電話からノアの楽しそうな笑い声が聞こえる
段々とレオンの口からも笑みが零れるようになった
「あれ〜?レオンちゃん笑ってる?」
「貴方が面白いのでつい…ふふっ」
「……それバカにしてるのか〜?また先輩を~」
「してませ……いえ,してるかもですね、」
「先輩泣いちゃいそう」
「実は僕も、親が厳しかったんです。夢なんて…生まれた時から決められていました」
今まで自分の家計の話は誰にも話したことはなかった。
ただあまりにも自分と先輩が似ていたもの…
泥酔している相手に話してしまった
「…同じだね、レオンくん」
大人しくなったノアは同情するように一言呟いた
その態度の変わりように、まるでしっかり聞いてくれていたかのような気持ちに感じて、長年のモヤモヤがスッキリとした
「……寝ますよ!もうおしまいです!」
「えー!固くならず気楽に行くのも大切だよ〜!」
「仕事でしょう!!」
半分強制に、レオンはブチッと電話を切った
今日はトラブルだらけだったが、
何より久しぶりに心から笑えたのがレオンにとって驚いた事だった
(本気で面白くて笑った日なんて…いつぶりでしょう)
電気を消し、布団に潜ってレオンは睡眠をしたのだった
今日も仕事だ。
と言っても、もう昼頃だった
トラブルは度々あったが、しっかり調べない人が悪いと心で片付け、レオンは席を立ちご飯に向かった
その途中の廊下、新入生2人と先輩1人が大きな声で喋ってるのを見かけた
どうやら内容は部署の愚痴らしい
「てか…私の同期のノアって人。今出張中なんだけどさ、よく行けたものだよね?サボりまくってんのに」
「噂がありますよね!ダレイ先輩の代わりとか何とか!」
「そうでもしないと出世できないでしょ〜」
レオンはそんな3人の目の前を通り過ぎるが、
その中の先輩がレオンに声をかけた
「あれ?レオンくん?お疲れ様!」
「お疲れ様です」
「君働きすぎだよ〜?若いんだから遊んじゃっていいのに〜」
「仕事ですから」
「真面目ね〜それに比べてノアは…ねぇレオンくんはどう思う??」
「……はぁ…」
半強制的に関わってしまった事にレオンは大きくため息をついた
その様子を見て先輩の女性は不機嫌気味になる
「何ため息なんてついちゃって…」
「これだから嫌なんですよ…貴方達みたいな鳥頭達は」
「はぁ!?なんですって!!」
「もう時期に知る時が来ると思って無視しようと思っていたのに」
眼鏡をくいっと上げ、女達を見つめる
「先輩、貴方…一昨日の資料まだ出されていないようですが……」
「えっ……何故それを」
「私は情報整理担当です。そんなのも知らないで名前だけ知っていたのですか?」
「知るわけないでしょ!!」
「おサボり先輩に良い情報です。この後カンカンに怒ったあなたの上司が資料を今すぐ出せと命じるでしょう」
「はぁっ…?なんでそんなことがわかるのよ…!」
「ノア先輩が帰ってくるからですよ」
すると、先輩の後ろにいた新人2人はどこかへと消えてしまう
それに気付かず、先輩はレオンを睨みつけ怒鳴る
「あんたまだまだひよこのくせに!調子乗るんじゃないわよ!」
女の手のひらが宙に止まる
ぶたれるようだ
レオンは避けようとしない,手のひらはそのままレオンに目掛け……そして
「……痛った…」
ぶたれたのはレオンじゃない。女の方だった
レオンの横を女性が立っており、その女性が女をぶったのだ
サングラスをかけた女性はレオンの前に出る
「……!!課長……?どうして…!」
課長と呼ばれた女性は,黒いヒールを鳴らしながら女に近付く
「ノアは…私の部下よ」
聞いた事がある…ノア先輩は課長の部下だって事をどこかで…真実は曖昧だったが…今ここで初めて知った
「まだまだ馬鹿な犬だけれど…誰よりもサポートが上手い。現にここにいるお前達…全員彼のおかげで助かっているでだろう?」
「……ッ!」
「お前には仕事をサボったことと、私の部下を侮辱した事で罰がある。後で来なさい」
「……はい…」
女が消えた後、課長とレオンだけがその場に残った
レオンは課長をじっと見つめると、課長もレオンを見つめる
滅多にお目にかからない上の人
ダレイ先輩が言ってた憧れの人…ノア先輩が言ってた鬼みたいに怖い人がこの人だ
課長はレオンの元へ行くと
ポンっと頭に手を置いた
「……噂は聞いている。頑張ってるようだな、レオン」
しばらく頭を撫でられる
「……よしてください…髪が乱れます……」
レオンは照れくさそうにゆっくり課長の手を退かす
課長の目にまだまだ新人だった頃のノアと姿が重なる
「……」
「赤ん坊じゃないんすから…」
「お前はいい刑事になれる、その才能を私が認めましょう」
「え…」
「お前に出会えて良かった。今後の活躍に期待しています」
「…レオン、お前はノアをどう思っている?」
「……えっ…?」
ノアは…仕事も雑だし、ダレイ先輩にだる絡みをするし…僕の髪をいつも乱して時間を無駄にさせる,
仕事が終わったあと,いつもご飯に誘ってくれて、酔った先輩はそれは面白い
「……分からないです」
「……そうか」
「ですが、あの人は刑事に欠かせない重要な人だと思います」
「保証は?」
「僕がします」
「!」
その場に無言の空気が流れる
腕を組んだ課長のサングラスの奥が微笑む
「優秀ね…ダレイが育てたからか?」
「……それだけじゃないですよ」
課長にお辞儀をするとレオンはそのまま廊下の奥へと進んで行った
課長は携帯を取り出すと、どこかへ電話をかける
「……もしもし、私だ……ええ、寄り道をせずさっさと戻りなさい,貴方がいないと回らないわ……お土産?勿論、もらうわ」