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あぁ、最悪だ
今日は山登りへ来た日だったのに…
しかも久しぶりに会った友人とだぞ?
それなのに…
霧のせいでまさか迷ってしまうなんて
友人ともはぐれたし…
とりあえず今はいつかのテレビで見た
“迷ってしまった時は山を下るのでは
無く登れ”
というのを思い出し1人で寂しく
登っている
周りには木や岩しか無く音も熊避けの
為に着けている鈴の音しか聞こえない
この音を聞いて友人が自分を見つけて
くれないか、そんなことを思いつつ
リュックをちらりと見た
そこには鈴と祖母に貰った
お守りがあるだけだ
はぁ…とため息をつき登り続ける
すると目の前に霧のなかにぼんやりと
人の影が見えた
薄暗い霧のなかを1人で歩いていたせいか
人に会えたという事実が自分を安堵させた
相手もこちらに気づいたみたいで
話しかけて来た
名前は「カオル」というらしい
どうやらカオルも一緒に山登りに来た
友人とはぐれてしまったらしい
お互いの友人に会えるまで
一緒に登るとこになった
カオルは自分と同い年らしい
趣味も似ていて凄く話しやすい
先程の不安感が嘘のように消えていた
しばらく歩いていると霧が薄くなり
進む先に川があった
カオルは自分の前に出て川の
渡れそうな所を探し手を差し出してきた
“さぁ、早く一緒に行こう”
そう言われカオルの手をとろうとした
バヂィッ
後ろから大きな音がして驚き急いで
振り向くと振り向いた反動で
ゆらりと揺れる鈴と淡い色のお守りが
みる影もなく真っ黒に変色していた
困惑しているとカオルが声がかけてきた
“なにしているの?早く来てよ”
その声は先程と違い低く冷たい声だった
数秒前と全く違うカオルの態度に
得たいの知れない恐怖に襲われ
カオルには近づいてはならないと
直感的に思った
自分の腕を掴もうとするカオルから
離れ今まで登ってきた山道を下った
また、道に迷うかもしれない
でも今はそんなことはどうでもいい
カオルから離れなければ…!
早く…早く…!
もっと、遠くに行かなければ…
カオルから離れるために夢中で
走った
もう…無理だ…
そう思ったとき急に霧が晴れて
辺りが明るくなりとっさに目を閉じた
目を開けるとそこは真っ白の天井が
あった
どうやらここは病院のようだ
どういう事だ…?
困惑していると誰か来た
自分の母親だ
母親は自分が目を覚ましているのを
見ると
“よかった…”
とだけ言い泣き崩れた
後から聞いた話だが自分は
あの山登りの日、霧のせいで足を
踏み外し崖から落ちたらしい
それからずっと意識を失っていたと
医者から言われた
それから病院で治療を受け退院した
意識を失っていた時の夢…
もし、あのお守りが無かったら…
もし、あのカオルの手をとっていたら…
そう思うと背筋が凍る