テラーノベル
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『うぉぉぉぉ!』
弾かれた槍の持ち手を無理やり捻り、コアに届くギリギリのところでフィニスの剣を槍の柄で弾く。
ガキーン!
「ちっくしょ!」
弾かれた反動のまま身体を後ろに回転させ、再び距離を取るフィニス。バリルシウスも体勢を持ち直し、盾と槍をしっかりと構える。
『今のは……少し危なかったのではないですか?』
バリルシウスに向けていた両手をそっと下ろすアルドムリア。
『……問題無い。お前こそ、その魔法を解くなよ』
『それは……貴方様次第でございます』
ずっとバリルシウスの後ろに隠れるアルドムリア。
「あと少しだったのに……」
「おいフィニス……」
ルシオが親指を立てて後ろを指差す。
「っ……!」
武器を持つ手の力すら入らないほど身体が痺れているのだろう。座ったまま武器を手放して動けずにいるニティア達。
「私達……のことはいいから……はやくあいつ……らを……」
歯を食いしばりながら何とか口を動かすニティア。
魔力を感じ取れなくても、ニティアが今無理やり魔法を使おうと無茶をしていることが手に取るように分かった。
「分かったからお前は魔力を使うな!侵食が余計に早まる!」
「うるっ……さい……!」
ニティアが魔法を使い、杖を浮かばせて自分の手で受け取り、アルドムリアを睨みつけるニティア。
『あら、やはりあ……なたは抵抗してきますか……貴方が1番厄介ですので、もう少しだけ大人しくしていてください』
両手を合わせ、祈るような仕草を取るアルドムリア。
「うっ……!」
ニティアの持つ杖がより一層カタカタと震え出した。
「おいやめろ!」
「落ち着け!」
怒鳴るフィニスを叱咤するルシオ。
「いいから落ち着けって……あいつらは抵抗しなければ殺さないと言った。にも関わらず、抵抗をしたニティア達は無事……。つまりこの魔法は最初から拘束用の呪いって事だ。殺すつもりならとっくに殺せているはず」
「くっ……」
「それに気のせいかもしれないが、呪いの力がニティアに集中したせいか、気持ちこっちの侵食が遅くなった気がする。ニティアには少し辛いかもしれないが、今のうちに仕留めるぞ」
「……わかった」
もう一度だけ後ろを見るフィニス。歯を食いしばりながらも杖を構え、必死に術式を構築しようと思考を巡らせているのだろう。そんなニティアの姿を見たフィニスの胸が焼けるように熱くなっていくのを感じていた。
呪いに抵抗しようとするニティア。その後ろで震えながらも目を閉じ、必死に呪いの解析を続けているアルテア。
その更に1番奥で、ただひとり。指一つ動かさずに膝をついて俯いているエラリスがいた……。
「次こそ頼むぜ……」
「あぁ。さっきはタイミングが見つからなかったけど、呪いが少し弱まった今なら狙える!」
そう言うと、ルシオが再び盾を構えてバリルシウスへ突進していく。
『来ますよ?』
『分かっている。馬鹿の一つ覚えが……この距離なら!』
バリルシウスが槍を構え、振り抜こうとしたその時……
ストン!
『!』
バリルシウスの腕に突き刺さる一本の矢。盾の死角から放たれたエラリスの矢であった。
『あいつ……なぜ動ける!』
腕に矢が突き刺さった為、槍を振り抜くのが遅れたバリルシウス。しかし、ルシオにとってはその一瞬で十分だった。
「おりゃ!」
ガキーン!!
盾と盾が衝突し、金属音が鳴り響く。
『ちぃ!』
グググ……
しかし、徐々に押し込まれてゆくルシオ。
『呪いが効いているな……力が入らなくなってるんじゃ無いか……?』
そのまま槍を構え、ルシオに向ける。
「確かに……結構限界かもな……」
周りを見るバリルシウス。フィニスはまだ少し距離がある。槍を振り抜くまでにこちらには来られないだろう。
奥の魔法使い達。ニティアは杖を構えてはいるが、相変わらずカタカタと震えている。呪いの影響を1番に受けている。大した魔法を打てはしないだろう。
目を閉じたまま小刻みに震えているアルテア。自身の回復すらできていないのならば、仲間の回復などもってのほか。
そして先程矢を射ってきたエラリス。理由はわからないが、魔力は込められないのだろう。もしまた矢を撃てたとしても、魔力の無い矢であればこちらのダメージも大したことはない。
『ここまでだな』
#魔王
チタコロ
48
#探偵
橘靖竜
6,432
自転車和尚
1,223
#魔道具職人
こはる
1,904
槍をルシオ目掛けて振り抜く。
「待ってたぜ……ナイスタイミングだ」
『!?』
槍を構えるルシオ。
「魔力を込めるのは大変そうだけど……これはただ強制的に持っていかれるだけなんでな!」
そう言いながらバリルシウスの槍に合わせ、自分の槍を振り抜いた。
互いの槍がぶつかり合おうとしたその瞬間、ルシオの槍から放たれる高密度の魔力の固まり。
ドゴォー!
バリルシウスの腕が槍ごと吹き飛ばされた。
『ぐっ!』
その隙を狙っていたのだろう。フィニスが一気に加速する。
『ふざけるなっ!』
盾でルシオを強引に吹き飛ばし、フィニスを迎え撃とうとするバリルシウス。しかし……
ピューー!
ドゴォーン!
風切音がしたと思った次の瞬間、盾を持つ腕に衝撃が走る。
衝撃を受けた腕には燃え盛る炎の矢。
『なぜ……!?』
⸻
数分前
「エラリスさん……一体どうやって矢を?!」
目を閉じたまま矢を放ったエラリスに驚くアルテア。ニティアに呪いが集中しているせいだろう。呪いの勢いが少し弱まったとはいえ、あくまで侵食のスピードが遅くなっただけ。魔力を込められず、身体の痺れは増すばかりである。
「エラリスさっき言ってたでしょ。私たちの魔力に悪さをするウイルスみたいなものだって」
「それが……どうしたのよ……!」
歯を食いしばりながらも無理に術式を構築しようとあの手この手で魔力を込めているニティア。
「だから、呪いの魔力に合わせてるの。私の魔力とぶつからないように、私の魔力を呪いに合わせる」
「はぁ?!……言ってる意味が……分からないんだけど……!!」
「確かに……理論上はわかりますが……。しかし、それが出来るのは魔力の波長を感じ取り、自分の魔力波長を変化させられるエラリスさんだけでしょうね……」
ゆっくりと目を開けて2人を見るエラリス。
「うん。私も魔力は込められない。少しでも私の魔力を感じ取ると呪いが暴れ出すから。だから私は抵抗をせず、ゆっくりと身体を動かすだけ。だから他は2人に協力してもらう」
その発言に震えながらも視線を向けるニティア。
「何すれば……いいわけ?!」
エラリスが再び目を閉じ、ゆっくりと弓を構える。
「貴方の魔法を私の矢に込めて」
「それが出来たら……苦労しないんだけどっ!!」
「わかってる。だからアルテア」
「はい」
「ニティアの呪い。少しでもいいから和らげることはできない?」
エラリスの発言に、再び目を閉じて自分の中の呪いを見つめるアルテア。
「回復は現状無理です」
アルテアの言葉に被せるようにエラリスが問う。
「回復はってことは?」
少しだけ口角が上がるアルテア。
「3秒……いえ、2秒くらいでしたら……一時的に呪いを止めることなら出来るかと」
「だってさニティア」
「2秒じゃ……大した魔法は込められないわよ……!」
目を閉じながら笑うエラリス。
「倒せなくてもいい。きっとトドメはフィニス達が何とかしてくれる。だから……」
「軽く……吹き飛ばすくらいの……魔法を込めろって事ね」
ニティアも口元が少しだけ緩んでいた。
「上等じゃない……ほんと……いい加減……むしゃくしゃしてたのよね……」
「それじゃよろしく」
「初めての共同作業ですね」
⸻
『ぐっ……!』
槍を持つ腕は吹き飛ばされ、反対の腕は爆発の衝撃。盾を手放してしまっている。
完全無防備の状態で、胸元のコア目掛けてまさに突き刺さろうとしているフィニスの剣。
もはやここまで……そうバリルシウスが諦めかけたその時……
トンっ
肩に走る小さな衝撃。そして……
パキーン!
フィニスの剣が、正確にアルドムリアのコアを貫いていた。
コメント
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110話、読み終わりました…!今回の連携、本当に痺れました。エラリスが「魔力を呪いに合わせる」って発想、めちゃくちゃエラリスらしくてグッときました。ニティアの「軽く吹き飛ばすくらいの魔法を込めろって事ね」の台詞、職人っぽくてカッコよかったです。あと最後、まさかフィニスの剣がアルドムリアのコアを貫くとは…!あの一瞬で味方か敵かを見極めた判断力、鳥肌立ちました🕊️