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「まって…いかないで…」


少年の声は虚しく空気に溶けていった。

声は、届かなかった。


少年とすら呼べるのか怪しい歳だが皆は少年と呼ぶ。親しいもの以外が名を呼んだら数秒後にはこの世に居ないからだ。

そんな少年の名は藤。見つけられた時に見つけてくれた人の服が藤色だったからという何とも曖昧な理由で付けられた。

少年は産んだ親からあるクラブの店の前に捨てられていた。オーナー代理が見つけれくれなかったら今頃この世に居ない。

そのクラブには殺しを生業とする人が大勢いた。もちろんこのクラブを作ったオーナーも殺しをするという。

そんな所に拾われればもちろん教えられるのは殺しである。

幸い、少年には才能があった。どれだけ効率的に人殺しができるかを常日頃から考えた。

少年は表情が顔に出ないタイプだった。だから殺す時だって慈悲などない。

何故、少年は”効率的”に人殺しをしようとするのか。それは少年を拾い育て上げたオーナー代理とその友人にすら分からなかった。

少年すらも気がついていない。だが、ひとつ言えるのは少年だって拾って育ててくれた恩を感じない程馬鹿ではない。そして少年はオーナー代理が大事にしているクラブが少年自身にとっても大事なことに残念ながらこの世界で知る人は少ない。

ある日、オーナー代理とその友人が急用で店から丸一日居なくなる事件があった。

店は大慌てになり少年のことを気にする人などいなかった。

この時少年は外に放置されていた。そこで待ってろと言われ律儀にそれを守っているのだ。

季節はもう既に真冬である。そんな時に外にまだ少年とすら呼べるのか怪しい子供を放置すれば当然…。

残念なことに少年は死んだ。

少年の遺体を見たクラブのオーナーは激怒したという。


数年後、またしてもクラブの前に子供が捨てられた。それをオーナー代理は”初めて子供を見たような驚いた表情で”見つめていた。


あったかもしれない世界へようこそ。

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