TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

「ちぃっ!ルイ!隠せ!早く!」

「おうっ!しっかりしろ!」

シスターを抱き抱えたベルモンドの声に反応したルイスが、大急ぎで撃たれて倒れたエーリカを路地裏へと引き込む。

「エーリカ!?」

「コイツは不味いっ!」

エーリカは首を撃たれており、呼吸も荒く出血も酷い。どう見ても一刻を争う状態であった。

駆け寄ったシャーリィは直ぐに傷口を自らの手で抑える。

「ベルさん!首をやられてる!」

「なんだと!?ちぃっ!嫌な場所を!」

「っ!……ぁっ!」

エーリカは荒く呼吸しながら、駆け寄ったシャーリィの服を掴む。まるで覚悟を決めたような目を向ける幼馴染みを見て、シャーリィも別の覚悟を決めた。

「許しませんよ、エーリカ。こんな結末は許しません。もう大切なものを失うのは嫌ですからね!我慢して貰います!」

「おいシャーリィ!?」

「ーっ!!!!」

腰に下げた勇者の剣を握って魔力を込め、小さな炎の刃を生み出して、エーリカの傷口へ押さえ付けた。

エーリカの声になら無い悲鳴が響き渡り、ルイスはシャーリィの行動に衝撃を受けた。傷口を焼くことで無理矢理止血したのだ。

「シスター、時間がありません。今すぐにエーリカをロメオ君に見せないと」

「待ちなさい、ここでは目立ち過ぎます。貴女の魔法を大勢に見られることになります」

「このままではエーリカを失います。それなら『聖光教会』に喧嘩を売る道を選びますよ」

「貴女は……」

「分かった、お嬢。俺達のことは心配すんな。必ず黄昏に戻る。エーリカを頼むぞ」

「ベルこそ、シスターとルイのことをお願いします」

「任せとけ、お嬢。後でな」

手短に言葉を交わすと、シャーリィはエーリカを抱きしめて勇者の剣を強く握る。

「ブースト!」

魔力を身体中に行き渡らせる身体強化の魔法を自らに付与する。

「ブースト!ブースト!ブースト!ブースト!」

レイミから規格外と言われる所以は、自らの無尽蔵とまで称される魔力にものを言わせて、次々と重ね掛けを行える点である。

極限まで重ね掛けを済ませたシャーリィは脚に力を込めて跳躍。

地面が陥没するほどの脚力は、ビルを優に越える程の高さまでシャーリィとエーリカを運ぶ。

直ぐ様常日頃から持ち歩いている飛空石に魔力を流し込み浮力を得たシャーリィは、右手でしっかりとエーリカを抱きしめて左手に握った勇者の剣を後ろへ向けて魔力を流し込む。

「テンペスト!」

荒れ狂う暴風が彼女達の推進力となり、凄まじい速度で黄昏へ向けて二人を運ぶ。

その様子は十六番街中の人々に注目され、誰もが驚愕して混乱を招いた。

同時にオータムリゾートの治安維持部隊が派遣され、暴れていた血塗られた戦旗残党の鎮圧を開始。

「この騒ぎに紛れるぞ。シスター、もう少し我慢してくれ」

「抱えなくても走るくらいはできますよ」

「そう言うなよ、あんまり無茶して傷が悪化したらお嬢が泣くぜ?」

「むっ……」

「ベルさん!俺が先導する!」

残された三人は騒ぎに乗じて別口から大通りに出て黄昏を目指す。

一方恐ろしい速度で黄昏まで飛んだシャーリィは、勢いをそのままに黄昏病院正面にある広場へと飛び込んだ。

派手に大地を削りながら減速。履いていたサンダルが完全にすり減ってしまう程の摩擦を生じさせたが、その甲斐あって急ブレーキに成功する。

「なんだなんだ!?」

「お嬢様!?」

周囲に居た人々や警備兵達が慌てて駆け寄る。

「医師を早く!エーリカが大怪我を負いました!」

「はっ、はっ!担架を持ってこい!急げーっ!!!!」

「ドクター!緊急手術用意!急患だーっ!!!!」

途端に周囲は慌ただしくなり、病院から医師や看護師達が飛び出してくる。

「ボス!なんの騒ぎだよ!?」

「ロメオくん!エーリカを!エーリカを直ぐに診てください!」

飛び出してきたロメオはシャーリィに抱き抱えられたエーリカを見て直ぐに表情を引き締める。

「回復薬を際限無く使うぞ、良いか!?」

「構いません!全て任せます!その代わり必ずエーリカを救ってください!」

「分かった!担架だ!早くしろ!それと、倉庫から回復薬をありったけ用意してくれ!」

直ぐに用意された担架にエーリカを寝かせて、ロメオ達は病院へと駆け込む。

「お嬢様も手当てを!」

無理矢理急ブレーキをかけたため、シャーリィの脚も傷だらけとなっており、医師の一人が駆け寄る。

「私は構いません。そう掛からない内に、シスター達も来ますから手当ての用意を!」

「お嬢様、手当てを受けていただきたく!」

騒ぎを聞き付けたマクベスが駆け寄りシャーリィに言葉を掛けるが。

「いいえ、私は後回しで構いません。マクベスさん、厳戒態勢を。私は、エーリカとシスターを傷付けた奴を始末してきます!ウインド!」

「お嬢様!?ぬっ!」

突如吹き荒れた突風がシャーリィを飛ばし、空へと彼女を戻した。

狙撃されたことを瞬時に見抜いていたシャーリィは、直ぐ様現場へと戻る。下手人はまだそこまで遠くに離れていないと考えたためである。

そしてその考えは正しかった。 

「旦那、やったぜ。頭は外しちまったが、首を撃ち抜いた。あれじゃ助からねぇよ」

「お手柄だな、ズラかるぞ」

「おうよ」

狙撃手とジェームズはオータムリゾートの介入で騒がしくなった十六番街で下手に動くと目立ってしまうため、その場でしばらく待機していた。

シャーリィを仕留めたと判断して気を緩めた為か、シャーリィの跳躍や飛行にも気付かないと言うミスを犯してしまう。

そしてそれは、エーリカが撃たれた位置から狙撃方向をある程度絞っていたシャーリィにとって好都合となる。

更に言えば狙撃手がライフルを上に向けていたため、夕陽の僅かな明かりではあったが上空からその反射が良く見えた。

「見付けたっ!」

狙撃手に見覚えはないが、傍に居るジェームズを確かに確認したシャーリィは、そのまま上空に留まり魔力を収束させていく。

「お姉さま……!?」

治安維持のため十六番街へと駆け付けたレイミも、空から姉の魔力を感じ取る。

空を漂う姉を素早く見付けて、その視線の先に敵が居ると判断。

「ジーベックさん!後をお願いします!お姉さまの加勢に向かいますから!」

「なんだと?シャーリィが居るのか?」

「はい、おそらくこの騒ぎの元凶もそこに居るかもしれません!」

「分かった、ボスには伝えとく!」

指揮を執るジーベックから許可を貰い、レイミも騒ぎの渦中へ飛び込む。

殺し屋スネーク・アイとアーキハクト姉妹の死闘が始まろうとしていた。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

41

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚