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あまおう
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ホウ酸
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#らっだぁ
れーん🌸
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春の終わりを告げるような、静かな雨が降っていた。
窓を叩く雨音だけが部屋に響いている。
金色の彼は帰路を急いでいた。
珍しく仕事が早く終わったのだ。
上司もいない。
面倒な依頼もない。
久しぶりの平穏。
だから。
少しだけ足取りが軽かった。
帰れば、らっだぁがいる。
それが当たり前になっていた。
玄関の鍵を開ける。
扉を開く。
「ただいま」
返事はない。
静かだった。
金色の彼は止まる。
違和感。
リビングを見る。
誰もいない。
キッチン。
いない。
寝室も。
「……らっだぁ?」
返事はない。
胸の奥がざわつく。
ふと見ると、机の上に紙があった。
『買い物』
たった三文字。
それだけだった。
「……なんや」
力が抜ける。
馬鹿らしい。
買い物に行っただけだ。
それなのに。
何を焦っていたのだろう。
何を怖がっていたのだろう。
ソファに腰掛ける。
煙草を取り出して、火をつける。
落ち着かない。
時計を見る。
まだ十分も経っていない。
なのに。
部屋がやけに広く感じた。
静かだった。
いつもは紙が置いてある。
『おかえり』
『おそい』
『ざこ』
馬鹿みたいな文字ばかり。
けれど、無いことに気づくと落ち着かなかった。
「……重症やな」
自分で呟いて苦笑する。
その時。
玄関の扉が開いた。
勢いよく。
「っ」
立ち上がる。
数秒後。
らっだぁが顔を出した。
両手いっぱいの紙袋を抱えている。
髪が少し濡れていた。
どうやら雨に降られたらしい。
そして。
きょとん。
目が合う。
数秒の沈黙。
『ただいま?』
紙を差し出された。
「……アホ」
思わずそう言っていた。
らっだぁが首を傾げる。
「遅いねん」
『まだ三十分』
「三十分や」
『?』
理解していない顔。
金色の彼は視線を逸らした。
説明できるわけがなかった。
自分でも分からないのだから。
✦
数日後。
らっだぁが熱を出した。
「ほら見ろ」
本人はベッドに寝かされて不服そうだった。
非常に。
『元気』
「元気ちゃう」
『眠いだけ』
「熱あるやろ」
『ない』
「ある」
『ない』
「ある」
『ない』
「あるって言うとるやろ」
紙を取り上げる。
らっだぁが頬を膨らます。
「寝ろ」
『返して』
「寝ろ」
『ひどい』
「寝ろ」
『わがまま』
「お前や」
『暴君』
「誰がやねん」
らっだぁは不満そうだった。
けれど。
大人しく毛布に潜る。
数分後。
寝息が聞こえ始めた。
「……子供か」
金色の彼は呆れたように笑った。
そっと、らっだぁの額に手を当てる。
熱い。
心配になる。
どうしようもなく。
それが、少し悔しかった。
熱は翌日には下がった。
らっだぁは元気になった。
そして。
調子に乗った。
『勝った』
ドヤ顔で紙を見せてくる。
「何がや」
『病気との闘い』
「一日寝ただけやろ」
『勝利』
「はいはい」
嬉しそうだった。
本当に。
呆れるくらい。
その夜。
らっだぁは机に向かっていた。
何かを書いている。
真剣だった。
金色の彼は後ろから覗き込む。
「何書いとん」
慌てて隠した。
最近これが多い。
「また秘密か」
こくり。
「なんやねん」
笑う。
らっだぁも笑う。
最近はよく笑うようになった。
最初に拾った時には考えられなかった。
死にかけの獣みたいな目。
感情を殺した顔。
それしか知らなかったのに。
今は違う。
本当に、よく笑うようになって。
俺も、それにつられて笑うことが多くなっていった。
✦
ある日の夕方。
二人で夕飯を食べていた。
らっだぁの料理だった。
最近は普通に美味い。
悔しいけど、自分より上手い。
「なんでやねん」
らっだぁが首を傾げる。
「俺の家やぞ」
『知らない』
「知っとけ」
『ざこ』
「それ好きやなぁ」
らっだぁが笑う。
肩が震える。
声は出ない。
でも。
楽しそうだった。
それを見て。
金色の彼も笑った。
その時だった。
らっだぁが紙に何か書く。
さらさらと、迷いなく。
そして差し出した。
『きょーさんは』
そこで止まる。
考えるようにして、また書き始めた。
『なんでたすけたの?』
空気が静かになる。
雨の音だけが聞こえる。
金色の彼は少し考えた。
答えなんて無かった。
本当に。
無かったのだ。
金になる。
売れる。
面倒事になる。
普通なら見捨てていた。
なのに。
「……分からん」
正直に答える。
らっだぁがこちらを見つめている。
「けど、ほっとけへんかったんや」
それだけだった。
らっだぁはしばらく動かなかった。
やがて。
ゆっくり紙に書く。
『そっか』
でも、どこか嬉しそうだった。
夜。
二人とも眠っている。
静かな部屋。
月明かりだけが差し込む。
らっだぁは目を開けた。
眠れなかった。
隣を見ると、きょーさんがいる。
穏やかな寝顔。
安心する。
不思議なくらいに、安心する。
だから。
思ってしまう。
ずっと。
このままならいいのに。
朝も。
昼も。
夜も。
来年も。
十年後も。
百年後も。
ずっと。
けれど。
そんなことはありえない。
知っている。
青鬼だから。
自分が何者か知っているから。
それでも。
少しだけ。
願ってしまった。
「……きょーさん」
小さな声。
誰にも届かない声。
らっだぁは目を閉じる。
そして。
眠りにつく。
二人は知らない。
市場で。
誰かが。
青鬼の目撃情報を売っていたことを。
その情報が。
ゆっくりと。
確実に。
ある男の元へ届き始めていることを。
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コメント
9件
わー😭 🧣と🪽の会話も良いけど🪽が寝た後の🧣の反応が可愛くて好き過ぎます🫶
らっだぁ子供っぽくて可愛すぎる マジで頼むからこの平穏な空気を壊さないでくれ… この空間の空気になりたい