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春の陽と小鳥

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春の陽と小鳥

20 - 🌸第17話 思い出したくなかった名前

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2026年03月08日

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🌸第17話 思い出したくなかった名前

その日、

夕方のキャンパスは、少し冷たい風が吹いていた。


ひよりは講義棟を出て、ノートを抱えたまま帰り道を歩いていた。


「……小鳥遊さん?」


ふいに背中に、

聞き覚えのない声が落ちてきた。


ひよりは振り返る。

そこには、見覚えのない男子学生が立っていた。


「えっと……ごめん。急に声かけて。俺、佐伯っていうんだけど」


(……知らない人)


ひよりは軽く会釈した。


「あの……すみません。私、どこかで……?」


佐伯は少しだけ息を吸い込んだ。

覚悟を決めるように。


「小学生のとき……同じクラスだった。

小鳥遊さんのこと、覚えてる」


その瞬間、

ひよりの胸の奥で、何かが“ぱちん”と弾けた。


(……佐伯……?)


名前を聞いた途端、

忘れていたはずの記憶が、

一気に色を取り戻して押し寄せてくる。


教室のざわめき。

机に落ちた影。

笑い声。

視線。

痛み。


(……やだ)


ひよりの呼吸が浅くなる。


佐伯は続けた。


「ずっと……謝りたかった。

あのとき、俺──」


「っ……!」


ひよりの身体が反射的に後ろへ下がった。


逃げなきゃ。


理由なんていらない。


思い出した瞬間、身体が勝手に動いた。


「ご、ごめんなさい……!

あの、私……行かないと……!」


声が震えていた。

自分でも驚くほど。


佐伯は慌てて手を伸ばしかけたが、

すぐに止めた。


「……ごめん。無理に話すつもりはない。

ただ……本当に、ずっと後悔してたんだ」


ひよりは首を振り、

そのまま背を向けて歩き出した。


足が速くなる。

胸が痛い。

息が苦しい。


(なんで……思い出したくなかったのに……)

夕日の光が滲んで見えた。

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