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翌朝、私は学園の廊下を歩いていた。
横には、死ぬほど嫌そうな顔で鏡を掲げるゼノ君。
「いい、ゼノ君。鏡は常に私を真ん中に映してね。あ、今の光の入り方、最高よ!」
「……こうか。なぜ俺は、王国一の隠密技術を『令嬢と並んで歩く』ために使っているんだ……」
すれ違う生徒たちは、鏡を覗き込みながらポーズを決める私と、それに付き合わされる美少年を見て、ヒソヒソと囁き合う。
「見なさいよ、リリアーナ様……ついに頭が……」
「隣の男の子、可哀想に。魔法の道具の実験台にされてるんじゃなくて?」
だが、鏡の中は違った。視聴者たちは、初めて見る【動くリリアーナと美少年】に衝撃を受けていたのだ。
『なんだこれ、魔法か!?』
『リリアーナ様、隣の男誰だよ! イケメンすぎだろ!』
そこへ、私を目の敵にしている令嬢、ベアトリスとクララが立ちはだかった。
「あらリリアーナ様、その不気味な鏡は何かしら? 殿下に捨てられて、ついに鏡の精霊とお友達になったの?」
二人はクスクスと笑いながら、私に泥水をかけようと魔法を構える。
けれど、横にいたゼノ君が、鏡を片手で持ったまま、もう片方の手で小石を弾いた。
石は魔法の軌道を狂わせ、泥水はベアトリス自身の頭にかかった。
「……え? べ、ベアトリスさん、頭から泥を被って……。最新の泥パックかしら? お肌に良さそうですわね」
「なっ、なんですってええ!?」
私は本気で感心して声をかけたのだけれど、彼女は顔を真っ赤にして叫んだ。
鏡の向こうでは『リリアーナ様、天然すぎて最強w』『泥パックは草』と、かつてない盛り上がりを見せている。
「お顔が真っ赤だわ。ゼノ君、もっと近くで撮って差し上げて。きっと、とっても恥ずかしがり屋さんなんですのね」
「……ああ。ドアップで押さえてやる」
ゼノ君の冷徹なカメラワークが、泥まみれで激怒する令嬢の顔を克明に映し出した