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耳に唇を押し付けられて、ささやかれた。とびきりエロい声で…。
びくびくっと鳥肌が立って、腰が砕けそうになるけど…蒼にばれないように、必死に背筋に力を入れる。
なによもう…。
いい加減…離れなきゃ、身が持たないと、手を突っぱねようとした、けど。
ゴロゴロゴロ…!
「きゃっ」
突然また雷が鳴って、つい蒼の胸にしがみついてしまった…。
低く笑って、蒼はそんな私の背中を子供をあやすように撫でる。
「誰だって怖いものはあるよな。大丈夫。俺がずっとこうしてるから安心して」
「……」
「蓮には、俺がいるからな。独りなんかじゃ、ないよ」
…『独り』だなんて、ちょっと前までは感じてなかったよ…。
いつも同じ学校生活を送って、いつだって蒼はただの幼なじみだったから…。
『独り』だなんて思ったのは、蒼のせいだよ。
蒼が急に『ずっと好きだった』なんて言うから、急に日常が違う世界にシフトしちゃって、置いてきぼりって感じたんじゃない…。
それなのに、『俺がいるから独りじゃない』なんて…俺サマな台詞言って、振り回して…。
もう、ドキドキが止まらない…。蒼の言動ひとつひとつに、胸が壊れそうになる…。
私…変わってく。
蒼のせいで、今まで知らなかった私に、どんどん変わっていくのを感じる…。
私…もう蒼のこと…。
背中を撫でながら、蒼がささやいた。
「身体、びしょぬれだな。すげー冷えてる」
「私も傘忘れちゃったから…」
「風邪ひくぞ。早く温まらないと…」
と言われるや否や、ふわりと身体が浮き上がった。
「え…っ、ちょっ・・蒼…!?」
蒼に、いとも簡単に抱きかかえられてしまった。
しかも、女の子なら一度は憧れる、『お姫様抱っこ』…。
「やだっ…下ろしてよッ」
「っおい…ジタバタするなよ、落ちるだろ」
と言いつつも、余裕の足取りでリビングに入る蒼。
あ、温まるって…どこに連れて行くの…?ヘンなこと…しないよね…??
「ねぇ…下ろしてよ…!どこいくの??」
「このままじゃ冷えるだろ。風呂場だよ。シャワーでも浴びてあったまった方がいい」
「…」
からかうように、蒼はあの流し目をよこした。
「なに?もしかしてどさくさに紛れて、ヘンなことでもすると思った?」
「だ…誰がそんなこ」
「俺はしたいけどー。いつだってそういうことばっかり考えてたから」
「…」
「でも言ってるだろ。嫌がるのを無理矢理するのは不本意だ、って」
けどさ、とささやいて、蒼は私に顔を近づけた。
「おまえが俺を好きになったら…ヤバい、ってことたくさんするから、覚悟しろよ」
ドン!!
突然、その蒼の宣言に呼応するように、ひときわ大きな雷が鳴り渡った。
かと思うと、
「え…?」
急に辺りが真っ暗になった。
「え、なに…なに?」
「…停電か」
蒼の声は相変わらず落ち着いていた。
けど私は、急に訪れた漆黒の闇に、すっかり萎縮してしまう。
だって、電気が完全に消えた世界は、本当に真っ暗で静かなんだもん…。
かすかな表示ランプや、冷蔵庫の音も聞こえない。
雨と雷の音が暗闇の中でやけにはっきりと聞こえて、雷の光がチカチカと容赦なく家の中に差し込んでくる…。
蒼はゆっくりと私をソファに下ろした。
「懐中電灯もってくるよ。たしか、玄関に置いてたろ?」
「うん…」
「ちょっと待ってろ」
と行こうとした蒼だけど、ぴた、と動きが止まった。
ついつい…私が蒼の袖をつかんでしまったから…。
さっきよりもずっと大きく聞こえる雷の音が、私に無意識に手を動かさせていた…。
ああもう…私の意気地なし…!こんな時まで怖気づいてどうするのよ…っ。
くす、と蒼の短い笑い声が聞こえた。
「やっぱ怖い?俺と離れるの不安?」
「そ、そんなんじゃ…」
「ああそう。じゃあちょっと行ってくるから、この手離して?」
手首がつかまれる。
けど、理性とは裏腹に、手はなかなか袖を離そうとしない…。
蒼の指が、その私の指に絡まった。
「…やっぱおまえって、昔からそうだよな。ほんとはすげー臆病なくせに、強がっちゃって」
今ばかりは、真っ暗で良かったと思う。
図星を言われて、こんなに火照った顔なんか見られたくないよ…。
「…あー。やっぱ可愛いな、くそ…」
不意に、握られた手に重みを感じた。
え…なに…?
かと思うと、身体全体に、重みと熱を感じた。
暗闇でもわかるくらい近くに、蒼の綺麗な顔があった。
え…私…ソファに押し倒されてる…?
「おまえのそういうところ、好きなんだよな…。たまにムカつくけど、やっぱ、可愛い…」
可愛い…?
私が??私…明姫奈みたいなコじゃないのに…??
「からかわないでよ…」
「からかってない。好きな女を可愛いって思わない男がいる?」
「……」
「蓮は…?」
うかがうように、慎重な声が降ってきた。
「おまえはどう思う…?俺に『可愛い』って言われて…」
うるさいって思う。
もう二度と言わないでよ。
胸がぎゅうってなって、おかしくなりそうだから…。
思わず顔を背けると、ふっ…と蒼が苦しげに吐息した。
「ああもう我慢きかね…」
え…
重みがさらに増して、ソファに両手が押さえつけられた。
それだけにとどまらず、苦しげに思いつめた蒼の顔が、暗闇の中でもわかるくらいに、近くまで迫ってくる…。
「キス、させて、蓮」
「…え…」
「もう我慢できない。キスさせて…」