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上野文
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都築七美
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てく
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四方八方に飛び交う氷柱のように歪に尖った鉄らしい塊を、蛇珀は腕で弾きながら先を進む。
「痛ってえ! 痛て痛て痛てい——痛てえっつってんだろうが!!」
大きく振り上げた左腕を勢いよく下ろすと、風が起き、鉄の刃が吹き飛んでゆく。
裂かれた衣類が煩わしく、蛇珀は上半身の白い布を自ら破り捨て袴一枚の格好になる。
普段は若草色の狩衣で隠れているその上半身は、実に均整の取れた眩い肉体であった。
空間には夥しいほどの勾玉に似た半透明色の魂が浮遊しており、常に耳を塞ぎたくなるような陰鬱なうめき声が響いていた。
蛇珀はそんなことを気に留めるでもなく、ただ前だけを見て走っていたが——。
ふと、気になる言葉を聴覚が拾い、曲がり道の縁に乗り、足を止めた。
「……どうして、あたしは何も悪くない、ただ好きになったのが神だっただけなのに……」
呪いのように同じことを繰り返しながら、蛇珀の元に近づいてくる悲しげな魂。
「あんなの抗えるはずがないわ、あたしは騙されたのよ、ひどい、ひどい、なのに三百年も前から、ずっと、逃げられない、永遠にここを彷徨って、神に恋なんてしなければこんな目に遭わなかったのに、恨めしい、恨めしい、神と人との愛なんて成立するはずがない、ただ自分を不幸にするだけ……」
蛇珀は物事を深く考えない性格だが、これには思い当たる節があった。
三百年前、神と人の恋——。
悲恋となった当時の戦神の、想い人だったのであろう、と。