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──────めめさん視点──────
私は語り始める。懐かしい、あの記憶を。
「おい!めめ!油断すんなって言ってるだろ?」
「別にいーじゃん!死ぬわけじゃないし!」
「2人とも…。この後任務だからな?はしゃぎすぎるなよー?」
「はいはーい!わかってるよ!」
───私たち3人は幼なじみというやつであった。ルカと、イエモンとそして私の3人組。私たち3人は強欲の悪魔の軍に入っており、よく3人で任務に行っていたため、自然と仲が良くなったわけだ。
もちろん、そうなった経緯はある。あれは私は戦場の中、禁忌を使って生み出された悪魔で、育ててくれる人も、頼れる人もいない中戦場をさまよっていた時に、ルカによって保護されたのがきっかけであった。私とほぼ同年代だった彼は、私にもう一人、イエモンについて紹介してくれて、それからずっと3人組で過ごしていた。
イエモンは強欲の悪魔の実の息子らしいが、それを盾にして何か言ってるくることも、自慢することもなかった。ただ、父親のことを話すイエモンの目はいつもキラキラと輝いていた。何も言われずとも尊敬していることくらいわかってた。
そんな父親を私は殺してしまったのだ。
最近、強欲の軍にいる女性悪魔が敵に攫われる事件が多発していた。天使と思えぬ所行に、ほかの悪魔によって狙われている可能性がある、と軍全体に連絡がされていた。正直、私はそんな事件関係ないと思っていたし、最悪死ねばいいか、なんて軽く考えていた。3人組で行った任務の報告しに、私が軍長である強欲の悪魔の部屋を訪ねた。いつ見ても豪勢な部屋は好きなものをなんでも手に入れる強欲の悪魔らしく、金銀財宝によって部屋が飾り付けられていた。
「ご報告にまいりました。」
私がひと声かける。その悪魔は振り返り、私を見下ろす。その巨体とボロボロの翼からも歴戦の悪魔というものの風格が漂っていた。
「ふむ。その前に、めめ。最近イエモンとはどうだ?」
「普段通りですよ。まーた息子さんの心配ですか?少しはご自身の心配を───」
相変わらずの親バカだな、なんて思いながら私はその悪魔に視線を移す。───笑っていた。始めてみる、気味の悪い笑みだった。私の背筋がこおる。生理的な拒否反応で体が震える、という無意識の行動でようやく私はその悪魔のことを『気持ち悪い』と思ったことを自覚する。始めていた。今までずっと尊敬していた悪魔の、親友の父親にそんな感情を抱いてしまったことが嫌で嫌で吐き気がしてくる。
その間にここの部屋はどろりと溶けて、その様子を変える。緑色の光が辺りを満たしていく。壁に飾られていた金で作られた装飾の代わりに出てきたのは───ホロマリン漬けの目玉。生身の腕、指、足、下半身、顔───。様々な女性の、しかもこの軍に所属していた女性悪魔の1部であることがわかってしまう。───だって、そのホロマリン漬けのひとつに、私の後輩であるレイラーの顔と腕だけがぶくぶくと泡立った容器の中に入っていたから。
「…あ、え───?」
声が出せなかった。悲鳴も、何も出せなかった。
けど、この事実を認める訳にも行けなくて、精一杯の力を振り絞って声を出す。違うと願って、そんな訳ないと思って。
「えと、誘拐犯を捕まえたんですよね?その証拠なんですよね、これ…?えと、私を、驚かせるために、ですよね…?」
精一杯力を振り絞った声も、最後の方には弱々しい、聞き取りにくい声になってしまった。けれど、現実は非情で。
「そんなわけないじゃないか。私は強欲の悪魔。あらゆる悪魔の美しい部分が欲しかった。だから手に入れた。それだけだ。───お前も十分美しく、そして実った。収穫の時期なんだよ。」
そう言って、そいつは槍を大振りに構えて、見せつけるかのように大きくふるった。
───やらなければ、やられてしまう。そこからの私は自分でも信じられないほど早かった。屈むことで攻撃を交わし、その時最も得意だった───師から教わった炎魔法で全てを焼き払った。体の一部だけ生かされ続けるものも、全部、全部破壊して燃やして灰にして。やるしかなかった。───気づいた時には、部屋はあらゆるところが燃えて、強欲の悪魔の死体と、その返り血だけが残った。───私は無傷だった。圧倒したのだ。七つの大罪が1柱を。まだ100年も生きてない私が。
そして、後ろからドサッという音が聞こえた。イエモンが資料を落とす音だった。そして、そのまま座り込んだ音だった。
傍から見た私はどんなやつだったのだろうか。けど、イエモンからみた私は、父親を殺して、その遺品すら残さぬようにもやし尽くしたただの悪党だったのではないだろうか。
その日から、イエモンは私を避けるようになった。感情に任せて怒るでもなく、状況を聞くでもなく、ただ、距離を取るだけだった。父親が殺されて、殺した犯人は親友のように仲の良かった人。───イエモンもどうすればいいか分からなかったし、私もどうすればいいか分からなかった。ただ、すれ違う度に感情がすり減っていくイエモンを見るのは辛かった。
ルカが私とイエモンの仲を取り持とうと奮闘していたが、イエモンは完全に塞ぎ込んでしまっていたし、私もほぼ放心状態だった。
あの時、本当にルカには申し訳なかった。イエモンに余裕がないように、私にも余裕がなかったのだ。
行き場のない私を拾って、育ててくれたのは紛れもない、強欲の悪魔で、イエモンの父親だった。ご飯をくれて、住む場所をくれたのは私が殺した悪魔だった。恩人だったんだ。その人を、自分の手で殺してしまったのだ。
でも、それ以上に。イエモンに申し訳が立たなかった。尊敬してる人を、親友に殺されたイエモンはどう思ったのだろうか。恨みを殺した犯人にぶつけたいのに、その犯人が親友で、どうすればいいか分からなかったのではないか。
その感情をイエモンはどうすればよかったのか。
強欲の悪魔が死んだ影響で、私たちの軍隊の責任者は1時怠惰の悪魔が務めることになった。私たちは何事も無かったかのように任務を淡々とこなした。その間、イエモンと目を合わせることができなかった。
私が戦場で天使の不意打ちにあって、生き返ろうとしていた時だった。
───その時、そいつは現れた。美しい扇を持った、色素の薄い水色の髪の女性。純白の翼をばさりと広げ、目元を布で被うという明らかに異質なその天使が現れた。そいつは雲の上から舞い降りて、彼女の後ろからは天界からの光が差し込んでいた。近くの雲には援軍であろう天使たちが弓を構えていた。
その天使が扇を一振りすると、死んでいた天使たちが蘇り、猛攻を仕掛けてきた。その光景に私は唖然とした。───今までの天使は蘇生させる力なんて持っていなかったから。なんで生き返ったのか理由がわからなかった。悪魔有利に進んでいたその戦場はそいつの登場によって一気に風向きが変わっていった。天使を殺しても殺してもそいつらはすぐに蘇り、また猛威を振るう。やられていった仲間は生き返らせられ、仲間を殺そうと猛威を振るう。
天使は死んでも生き返るくせに、私たちの味方はどんどん敵へと姿を変えていく。そこには地獄絵図が広がっていた。
私は瓦礫で隠れた場所で体を再生させていた。なるべく早く、戦場に復帰しなければならない。そんなことわかっているのに、まだ慣れていない再生には信じられないほどの時間を要した。
その時、ルカがきた。いや、来た、という言葉では正しくない。敵の攻撃を受けて、その反動で瓦礫に体を打ち付けたルカがちょうど真横にやってきた。
酷い怪我だった。胸元をバッサリと切られ、胸から、口から血が吐き出していた。目は虚ろになってきて、こと切れそうな人形のように思えた。
その時、目と目があった。ルカは途端に目を見開き、ほふく前進で私に近づいてくる。───よく見たら、ルカの足はもうなかった。再生もできていない。それは、つまり。魔力切れ、という意味だった。魔力がなければ再生できず、大量出血を防ぐこともできない。あとは、死を待つのみだった。
私の足は再生できていない。だからルカを担いで逃げることはできない。私の手はまだない。魔力を分けることも、ルカを労ることもできない。私の口はまだ再生できていなかった。慰めの言葉も、鼓舞する言葉も、死を弔う言葉も言えなかった。
私は、その時久しぶりにルカの笑顔を見た。3人組で任務をこなしていたとき以来だった。
───その笑顔は涙と血とでぐちゃぐちゃだったけれど。
「ハハッ…。俺も…もう……終わりみたいですね。……呆気ないなぁ。まだ、2人と……ピクニック……いけてないのに…。ヒナに……バッグを…買ってあげる…予定だったんですよ。……もう、ダメだなぁ……。」
わたしは、自身の再生の遅さを恨んだ。なぜ、脳と耳と目しか再生し終えていないんだ。口はなんで目よりも下にあるのだ。なんで、私の体は上から再生しているんだ。下からだったら、足だったら逃げられたのに。手だったら魔力をあげられたのに。口だったら、励ましの言葉を言えたのに。
どうして、なんで。耐えない疑問とそういうもんだから、という冷たい返答が脳みそをぐるぐるとまわる。能が再生してなければ、こんな、こんなに後悔することもないのだろうか。
「メメ、さん……。最後に、お願いを……聞いてくれ、ませんか?」
ルカは腕をこちらに伸ばす。私に手があれば、その手に触れられたのに。私は何回も瞬きをして、うん、と必死に伝える。ルカは目を閉じて笑う。目の中に溜まっていた涙がルカの綺麗な頬をつたい、血と混ざり合い、溶けて、なくなる。
「イエモンと……仲直り…してください、…ね?唯一の…親友……に、なるんです……から。」
そう言って、また、笑う。───酷い酷い酷い。どうして。あなたは、ルカは、なんで…!!
───私を置いていくんだ。
私は、そのままルカの死を看取る。
そう思っていたのに。突然、天使が私たちの下に舞い降りて、ルカをさっさと回収していく。
何が、起きたのか分からなかった。ルカが、天使に攫われた?え、え?
ああ、神様。私は親友の死すら看取ることを許しては貰えないのですか?
ここで切ります!この話のデータ1回消えて書き直したので時間全然ないし、なんなら9時超えちゃいました!!すみません!!
それでは!おつはる!
コメント
2件
感情あったんだなぁ