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風はない。音もない。
ただ、彼と彼女がいる。
そこは忘れられた聖堂。
天界と魔界の間に存在するはずのない、誰の祈りも届かない空間だった。
崩れた柱に、干からびた蔦が這い、かつて神に捧げられた祭壇は、今では朽ちた石の残骸に過ぎない。
ラファエルはそこに立っていた。
翼は震え、足は迷い、けれど瞳だけは迷っていなかった。
どこで道を踏み外したのかも、いつから惹かれていたのかも、もう思い出せない。
「来るな」
アスモデウスの声が闇の奥から響いた。
けれどそれは拒絶ではない。
まるで、自らを律するための呪文のようだった。
「君がここにいるだけで、俺は…もう止められない」
ラファエルは近づく。
一歩、また一歩。
踏むたびに聖堂の床が軋み、過去の祈りが痛みに変わるようだった。
そして、彼の前に立った。
その瞬間、ラファエルの頬に刃のような指先が触れた。
アスモデウスの爪は黒く、鋭く、そこに触れただけで薄皮が裂け、紅い雫が滴った。
彼は慌てて手を引こうとした――が、ラファエルがその手を掴む。
「……痛くない」
いや、痛かった。けれどその痛みが、甘く胸を締めつけていた。
痛みに救われていた。
“これが罪だ”と、ようやく理解できるほどに。
アスモデウスの目が細くなる。
そして、もう何も言わず、彼はラファエルの唇を塞いだ。
舌が絡まり、呼吸が奪われ、体温が狂い始める。
翼と翼がぶつかり、天使の白は悪魔の黒に沈んでいく。
ローブが破れ、爪が肌を裂く。
ラファエルの背に刻まれるのはただの傷ではない――それは烙印だった。
穢れ、背徳、快楽、渇望、そして…救済。
アスモデウスの口づけは次第に狂気を帯び、
甘噛みは噛みつきへと変わり、血が流れる。
ラファエルは喘ぎ、震え、涙をこぼしながらも逃げなかった。
むしろその腕を、深く彼の背に回していた。
「……私は……堕ちたのか……」
「違う。俺が、お前を堕とした」
「違う……違うよ……自分で堕ちたんだ……」
互いの傷が擦れ、血と汗と涙が混ざる。
その体液のぬめりの中に、彼らは快楽と苦痛を等しく見出していた。
アスモデウスはラファエルの背を這いながら囁く。
「このまま、神に殺されるかもしれない」
「それでも……あなたに抱かれるなら……」
刹那、ラファエルの胸元――心臓の上に、彼は唇を当てた。
ちゅっと音を立て、そこに噛み跡を刻む。
その直後、ラファエルの体が痙攣した。
まるで何かが注がれたように。
アスモデウスの冷たい指先が、震えるラファエルの身体を這い上がる。
そして、彼はゆっくりと、彼女の内側へと押し入った。
その感触は鋭く、重く、身体の奥底を容赦なく侵す。
ラファエルは息を呑み、喉の奥で震える呻きがこぼれ落ちた。
「あ……だめ……っ、や……は、はあっ……」
アスモデウスはゆっくりと腰を動かし始める。
そのたびに、ラファエルの身体は甘い痛みに揺れ、快楽と苦痛の境界を彷徨った。
「おまえの中で、俺は生きている」
低く囁く声に、彼女の心がさらに溶けていく。
細く震える手が、必死に彼の背を掴んだ。
だが、体は反応を隠せず、喘ぎが増していく。
「んっ……ああっ……いや、でも……」
言葉は拒絶と欲望が交差し、絡まり合う。
その夜、彼らは互いの罪と愛を刻み込むように、身体を重ねていった。
ラファエルの内側は熱く、締めつけるように絡みつく。
「んっ……ああっ……」
彼女の喘ぎが激しくなる中、彼の腰が深く突き刺さり、
濡れた肌が触れ合う音が、静かな夜に響いた。
――じゅぷっ――
熱と湿り気が二人の間で溶け合い、ラファエルの身体は震えた。
快楽が波のように押し寄せ、喉から切なげな息が漏れる。
「あっ……ああっ……だめ……でも……」
そして、ついにその瞬間が訪れる。
――びくんっ、びくんっ――
身体の中が熱く痙攣し、アスモデウスが熱いものを放つ音が響く。
ラファエルは息を荒げ、震えながらも、彼に身を預けていた。
アスモデウスの動きが一気に激しくなる。
ラファエルの内側がぎゅっと締めつける感覚に、彼の身体は限界へと近づいていた。
「んっ……ああっ……」
震える喘ぎ声とともに、彼は深く中に吐き出す。
――ドクドクッ……ドピュッ……――
熱く濃密なものが、幾度となく彼女の奥へと溢れ出し、満たしていく。
ラファエルの体は激しく震え、熱い涙が頬を伝った。
アスモデウスはまだ余韻に浸る間もなく、すぐに身体をまた押し入れた。
ラファエルの中はまだ温かく、彼の存在を拒めなかった。
「はっ…んっ、ああっ…まだ……」
息が上がり、身体は激しく震えている。
腰をゆっくりと、しかし確実に動かすたびに、
――じゅぷっ……じゅるっ――
濡れた音が部屋に響き渡る。
「もう、離さない……」
アスモデウスの声は低く、強く、彼女の心を捕らえて離さなかった。
そして、再び身体の中で、彼は熱いものを押し出す。
ーービュルッ…ビュルビュルッーー
「 んっ…ああっ……い、いくっ……ああっ……!」
アスモデウスの腰が勢いよく突き上げられ、部屋中に響く乾いた音が鳴り渡る。
――パンッ!パンッ!パンッ!――
その一撃一撃がラファエルの身体の奥を深く揺さぶり、熱い波が何度も押し寄せる。
「んっ…ああっ…もっと……!」
彼女の喘ぎ声は甘く切なく、身体を震わせながらも抗えずに捕らわれていた。
アスモデウスは止まることなく腰を打ち付け、乾いた音と彼女の濡れた肌がぶつかり合う快感に身を委ねる。
――パンッ!パンッ!パンッ!――
アスモデウスの腰が止まらず、荒い呼吸が胸を震わせる。
「やばい…もう、イく――っ!」
身体の奥から熱く濃いものが噴き出し、ラファエルの中に溢れ出す。
彼の声は荒々しくも熱に満ちていて、ラファエルの意識もその波に飲み込まれていった。
アスモデウスの身体がゆっくりと力を抜き、ラファエルの温もりに包まれながら二人は静かな余韻に浸った。
彼の呼吸はまだ荒く、汗ばんだ肌が淡く光る。
ラファエルは微かに目を開け、彼の胸に顔を埋めた。
「……もう、離さないでね」
囁く声には、甘さと少しの切なさが混じっていた。
アスモデウスは優しく髪を撫でながら、静かに答える。
「これからもずっと、お前だけを守る……」
果実に刻まれた二人の絆は、決して消えることなく、永遠に続いていくのだった。