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久々の外は怖かった。

いつもと変わらない景色。いつもと変わらない人々。


「はっ、はっ…!!」


けど、それらは少しずつ変化してて。

白い雪に包まれた外。肌寒い外気。変わっていく服。老いてゆく人々。何かが少しずつ変わっているのに、人々はそれを”当たり前”と認識し、”当然”だとでもいうような顔をする。

それでも俺は、”当たり前”とは認識できなくて、”当然”だと言えない。


「っ、うわっ…?!」


大人達は”当たり前”のようにこう言う。

『サンタさんなんているわけない』『夢を叶えられるなんてありゃしない』『夢を語るだけ無駄』『優しい人なんていない』

なぜこうも嫌な世界を見せてくるのか。


「っ……いっ、てぇ……」


それは多分、今のうちに汚い世界を知っておかないと損すると思っているから。


「……ふぅ。」


だからこそ。


(立ち上がれ、俺!!)


だからこそ、俺たちは変わらない。

春夏秋冬なんて関係なしに夏でも冬の時の動画を上げるし、流行りが終わりかけでも自分の中のブームにするし、みんなが嬉しそうであればこちらも楽しそうにする。

だって日常組は、世界の”当たり前”が通用しないのだから。


「…っ!しにがみ!」

「! ぺいんとさん…って、何ですか?!その足の怪我!」


俺は息遣いを荒くしながらもしにがみのもとへ行くと、先ほど転けたせいでできた傷跡にしにがみは驚いた顔をしていた。確かに痛いけど、今までの痛みに比べたら全然で。

それよりも今は、目の前にある崩れそうなこの壁が壊れることがどんな怪我よりも痛いんだろうと思う。痛くて、怖くて、悲しいと思う。


「んなことどうでもいいから!早く行くぞ!」


俺はしにがみに手を伸ばしてそう言うと、しにがみは俺の手を取らずにその場に立ち尽くして下を向いている。


「……ぺいんとさんは、自分のこともちゃんと考えてください。」

「はぁ?おまっ…今はクロノアさんを____!」

「確かにそうですけど!!!」


俺が喋ろうとすると、相手は大声で俺を制する。相手は焦ったような、怖いような、不安のような顔をしてこちらを見た。


「…クロノアさんの精神が壊れそうなのも怖いですけど…僕は何より、全部背負いこんじゃうみんなのことが怖いですよ…!!」


しにがみの両手は服を握りしめ、微かに震えていた。


「僕は、どうしたら貴方達を救えますか?!」


真剣な顔つきで。でも、泣きそうな顔をしていて。 彼の頬には汗が伝い、俺に答えを求めているようだった。

_____久々だと、感じた。

元リーダーだった俺のこの感覚。みんなの正答用紙のような存在に感じる重荷。活動休止をしてちゃんと話し合って、みんなはそれぞれの重荷から解放されたけれどまだ不慣れな部分はある。こんな風に、もう俺はリーダーじゃないのに答えを求められていることとか。

でも。

でも、俺はリーダーを辞めてから気づいた。リーダーは正答用紙のような存在じゃなくて、大きな存在だけど心配になっちゃうような存在だってことに。だからこそ余計に意見を聞いてしまって、”正解を求めているように見えてしまう”のだ。


「じゃあさ。」


俺が一言呟くと、相手はこちらを見た。

これは俺の個人的な意見だけれど、俺が救われるような行動だけど。

でも、まぁ…しにがみは少し勘違いをしている。


「みんなを信じろ。それだけで、心はくっそ軽くなるから!!」


俺達が背負いこんでも、しにがみ1人が背負いこんでも、みんなを信じているだけで心が軽くなる。


「だから、俺のことも信じろ!俺は今、めちゃくちゃ幸せだ!!!」


大声で言いながらも、再度しにがみに手を差し伸べる。その手には、がっちりとしにがみの手が置かれた。その次の瞬間に、俺達は走り出した。


「……ぺいんとさん、僕のことも信じてくれますか?…僕が今、めちゃくちゃハッピーな人間だってこと!」


涙を流しながらも笑顔で言うしにがみに、俺は答えた。


「嫌なくらい信じてる!!」

クラリネットの音

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コメント

11

ユーザー

うわぁー😭✨めちゃめちゃ好きです…!

ユーザー

絆が更に深まるお話だなと 思いました!!もう この作品大好き〜!✨

ユーザー

フォロー失礼します!!

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