テラーノベル
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――春の終わり、放課後の教室。
窓から差し込む夕日が、教室を淡く染めていた。
女子生徒:「道枝くんってさ〜、顔だけで生きてそうじゃない?将来なにになるん?モデル〜?w」
女子の何気ない一言に、クラスがクスクスと笑う。
男子生徒:「うわ、出た!“顔だけ王子”!」
女子生徒:「勉強も運動も普通で、顔だけ無駄にレベル高いやつw」
駿佑は、作り笑いで軽く返す。
駿佑:「いや〜そんなん言われても困るわ〜」
女子生徒:「ほんまに?自覚あるくせに〜!」
また笑いが起きる。
駿佑:(……何がおもろいんやろ)
教室を出てからの帰り道。
歩く足取りはどこか重たかった。
駿佑:(“顔がいい”って、それだけで評価されることに、もう慣れた。でも……それ以外の自分って、なんなんやろ)
振り返ると、周りはみんな「自分の武器」を持っていた。
大吾は頭が良くて、リーダータイプ。
和也は誰にでも優しくて、包容力がある。
丈一郎は気配り上手で、兄貴分。
謙杜は元気で、人を笑顔にできる。
流星は繊細だけど芯があって、自分らしさがある。
駿佑:(……じゃあ、俺は?)
シェアハウスに帰ると、リビングには先に帰っていた真理亜と恭平がいた。
真理亜:「おかえり、駿佑くん。疲れてる?」
駿佑:「え? ああ……ちょっと、授業中寝てたからな〜」
恭平:「サボってただけやろ、それ〜」と恭平が笑う。
真理亜:「じゃあ、晩ごはんまで時間あるし、風呂でも入ってきたら?」と真理亜。
駿佑:「うん、そやな……ありがとう」
――その笑顔の裏に、誰も気づかなかった。
駿佑:(俺は、なにかをちゃんと“好き”になったこと、あるんかな“将来どうしたいか”とか、“やりたいこと”とか、ほんまはずっと空っぽやねん)
風呂場の鏡に映る自分を見つめる。
駿佑:「……顔だけ、やな」
笑ってみる。
でも、そこに自信なんてなかった。
――その夜、駿佑は日記帳を開いた。
「俺には、何もない」
「顔がよくても、評価されても、“中身”が空っぽやったら、なんの意味もない」
「でもそれを認めたら、俺、誰にも必要とされへん気がする」
日記帳の端が、涙で滲んでいった。
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