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管野アリオ
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(何か、新鮮だな……)
まるで学生の頃に戻ったようなときめきと初々しさが亜佑美の胸の奥から蘇り、これが誰かを好きになるということなのだと改めて実感する。
そんな想いに背中を押されるように、亜佑美はそっと朝陽を見上げた。
「……朝陽くん、もっと、して?」
甘えるような声に朝陽の心臓が大きく跳ねる。
先程のキスだけでも胸がいっぱいだったのに再び求められたことでどうしていいのか分からなくなっていたけれど、自分を見つめる亜佑美が愛おしくて、そんな彼女の要望に応えたいという気持ちだけははっきりしていた。
「……俺……慣れてないから」
少し照れたようにそう呟くと朝陽は亜佑美の身体をそっと抱き寄せる。
「だから、その……変だったら、ごめんなさい……」
相変わらず自信が持てないらしい朝陽を前に亜佑美は思わず笑みを零した。
「大丈夫だよ、朝陽くんの思うようにしてくれたら、私は嬉しいから」
そしてそう答えると朝陽は安心したように微笑み、もう一度ゆっくりと唇を重ねていく。
「……っん、……はぁ、……」
触れ合うたびに互いの鼓動が速くなる。
亜佑美は自然と朝陽の首の後ろへ腕を回し、その温もりを確かめるように身を寄せた。
これまで、求められたことは幾度となくあったけれど、こんな風に心の底から欲しいと思って自分から誰かを求めたことはない。
それなのに今は、もっと欲しい、離れたくないと思ってしまう。
こんな風に自ら求めるだなんて戸惑う気持ちもあるし、恥ずかしさだってある。
けれど、それ以上に胸を満たしているのは朝陽と気持ちを通わせられた喜びだった。
角度を変えながら互いを求め合うキスは徐々に深さを増していき、どこか戸惑いを見せる朝陽の舌に亜佑美は自身の舌を絡めると、より深く激しい口付けを朝陽に刻み込んでいく。
亜佑美の小さな唇が朝陽を求めて貪り、それを繰り返すうちに互いの息が荒くなる。
初めは戸惑いばかりだった朝陽も濃厚なキスの回数を重ねる毎に少しずつ慣れていき、亜佑美の背に手を回して自分からも求めていく。
息を吸おうと亜佑美がほんの少し唇を開くと、その隙間から朝陽の熱い舌が捩じ込まれてくる。
「……っんん、……はぁっ、ん、」
朝陽の方からそれをしてくるとは思っていなかった亜佑美は驚くもすぐにそれに応えていき、室内には唾液が混ざり合う厭らしい水音と、荒い息遣いや甘い吐息が響いていく。
慣れていないこともあり、少々勢い任せの荒々しいキスだけど、それでも亜佑美は自分を求めてくれることが嬉しかった。
「……っ、あさ、ひ……っくん、」
何度交わしたか分からない口付けの合間に名前を口にした亜佑美の声で我に返った朝陽。
「……はぁっ、……す、すみません……、俺……っ、」
「いいの、……謝らないで? 嬉しいよ? その、そろそろベッド、行こう?」
亜佑美にベッドへ行こうと誘われたことで蒸気していた身体は更に温度が上がる。
瞳を潤ませながら誘ってくる亜佑美の身体を抱き上げようとした、その時、ブブッという電子音が聞こえてくる。
「……電話?」
「……そうかもですけど、いいです。今は」
鳴っているのは朝陽のスマートフォンで、亜佑美は気になっているようだけれど朝陽は全く気にしていない。
勿論、このまま無視しても良いのかもしれないが、誰からなのかも気になるし、何か急用かもしれないと思った亜佑美は、
「……確認だけ、したら?」
そう助言する。
「いや、大丈夫です。ほら、切れたし。特に約束とかもしてないですから、誘いの電話なら出ると余計面倒ですし」
会話をしている間に電話が切れてしまったこともあり朝陽がそう言うなら気にするのは止めよう、そう思って彼に身を預けようとし、その時、またしても電子音が鳴り始めた。
「……すぐに掛けて来るなんて、急用なんじゃない?」
「……すみません、ちょっと確認だけ」
このままじゃ集中出来ないと諦めた朝陽は亜佑美から離れて手を伸ばしてテーブルに置いていたスマートフォンを手に取って相手を確認すると、
「……はぁ……」
深く溜め息を吐いたことで何事かと思った亜佑美が、「どうしたの? 誰から?」と訊ねると、
「弟からです……」
そう、どこか気まずそうに返してきた。
「弟くん? それなら早く出てあげないと」
亜佑美がそう促すも、朝陽は何故か出たがらない。
「朝陽くん?」
「…………メッセージが届いてて、親父と喧嘩して帰りたくないからって、どうやら今、俺の部屋の前に居るみたいで……」
「ええ!? それなら尚更出ないと」
「…………いや、いいです。出ると余計に厄介なので」
「弟くんっていくつなの?」
「十七歳の高二です」
「十七歳!? 結構歳が離れてるんだね」
「はい……」
「鍵は渡してないの?」
「ええ。鍵を渡すとそれこそいつでも来そうなのであえて渡してないんです」
「そっか……けど、それじゃあ、今日は帰った方がいいんじゃないかな?」
「嫌です! 俺、今日は亜佑美さんと一緒に居るって決めてるので、帰らないです」
「でも……」
「ちょっと説得して今日は帰ってもらうので、少し待っててください」
「うん……」
それだけ言うと、朝陽はリビングを出て廊下で電話を掛け始めた。
けれど、揉めているのかなかなか終わらない。
(お父さんと喧嘩して朝陽くんのところに来たんじゃ、弟くんだって、すんなり帰らないよね、きっと……)
朝陽が自分と一緒に過ごしたいと思ってくれていることは嬉しいし、亜佑美自身も同じ気持ちではあるものの、相手が高校生で尚且つ親と喧嘩しているとなるとすんなり家に帰るとは思えず、朝陽がここに居続けた場合、彼の弟は何処で夜を過ごすのかも気になってしまう。
悩みに悩んだ末に亜佑美はリビングのドアを開けると、「朝陽くん、ちょっと」と小声で言いながら手招きをする。
苛立っている様子の朝陽は、「一旦切る。もう一度掛け直すから」とだけ伝えて電話を切ると、亜佑美の方へ向き直った。
コメント
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いやあ、このエピソードすごく良かったです……! お互いに「離れたくない」って思ってるところが伝わってきて、特に朝陽くんの不器用な優しさにキュンとしました。弟くんの乱入でどうなるのか気になって仕方ないです! 続きが待ち遠しい〜!