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管野アリオ
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「すみません、お待たせしてしまって……」
「ううん、それはいいけど、弟くんどう? 納得してくれそう?」
「それが……帰らないの一点張りで……」
「そっか……それじゃあやっぱり、今日は帰った方がいいよ」
「なら、こうします! 一旦帰って部屋に入れて、俺、また戻って来ます」
「そんなの大変だし、弟くんを優先してあげて。ね?」
「だけど……」
離れたく無い気持ちは二人とも同じ。
それは痛い程に伝わってくる。
「ねぇ、朝陽くん」
「はい」
「来週の土曜日、空いてる?」
「はい、勿論」
「それじゃあ、来週の土曜日は……一日中、一緒に居てくれる?」
「……それは、勿論」
「それじゃあ決まり! 淋しいけど、今日は止めにしよう。それで、来週は絶対、何があっても……一緒に居てね?」
そう口にした亜佑美は朝陽にギュッと抱きついた。
「……本当にすみません……。来週は絶対、何があっても必ず亜佑美さんの傍に居ます! 約束します!」
「うん、約束ね」
朝陽も亜佑美の背に手を回すと優しく抱きしめながら来週は何があろうと傍に居ることを伝えた。
暫く抱き合っていると、再び朝陽のスマートフォンが震え出した。
「……ったく、掛け直すって言ったのに……」
ウンザリ気味の朝陽がポツリと言葉を漏らすと、
「そんなこと言わないであげて。弟くんだって一人で心細いんじゃないかな? ね?」
「……そんなことは無いと思いますけど……本当にすみません」
申し訳なさそうに項垂れる朝陽に亜佑美は、
「朝陽くん」
そう名前を呼ぶと、朝陽の頬に手を添えてチュッと自ら唇を重ね合わせた。
「……あ、亜佑美、さん?」
「朝陽くんは悪くないんだから、もう謝らない! ね?」
「……はい」
突然キスをされて戸惑いつつも、亜佑美の気遣いが嬉しかった朝陽は素直に頷いて笑顔を見せた。
「これ以上待たせるとうるさいので、帰ります」
「うん、気をつけてね」
「ありがとうございます」
玄関まで見送った亜佑美に朝陽は、
「ここで大丈夫ですから」
と外へ出て見送ろうとする亜佑美を制止する。
「ううん、エレベーターの前まで見送らせて? 少しでも一緒がいいから……」
一方の亜佑美は外まで見送りたいと靴を履こうとするけれど、
「駄目です! そんな格好で外に出たら危険ですから! 俺が出たらすぐに戸締りしてください! いいですね?」
「……分かった」
部屋着というラフで薄着をしている亜佑美を外へ出したくない朝陽が強く止めたことで、亜佑美は外へ出ることを諦めた。
「それじゃあ、また」
靴を履いて玄関のドアを開けようとした、その時、
「――ッん、」
朝陽はくるりと振り返ると名残惜しそうな顔をしていた亜佑美の頬に手を添えてそっと口付けた。
「また連絡します。おやすみなさい、亜佑美さん」
「……うん、待ってるね」
触れるだけの軽いキスを交わした二人は笑顔で別れ、ドアが閉まると亜佑美は朝陽に言われた通りすぐに鍵を掛けてリビングへと戻っていった。
「……はぁ……、つい年上ぶって帰らせちゃったけど……やっぱり淋しいな……」
ベッドに倒れ込んだ亜佑美は朝陽を帰らせてしまったことを少しだけ後悔していた。
勿論、朝陽の弟のことも心配な気持ちはあるけれど、本音を言えば傍に居て欲しかったのだ。
スマートフォンを手にベッドで横になっていると、帰ったはずの朝陽から電話が掛かってきた。
「もしもし、朝陽くん?」
『あ、亜佑美さん、早いですね』
「ちょうどスマホ見てたから」
『そうでしたか』
「それで、どうかしたの?」
『あ、その、洋服なんですけど……』
「服?」
『亜佑美さんが用意してくれた服を着てきてしまって、着ていた服、置いていってしまったことに気付いて……』
「あ、そういえば!」
言われて気づいたが、朝陽は亜佑美が用意した部屋着を着て帰ってしまっただけでは無く、着てきた服を脱衣場に置いたままにしてしまったのだ。
『すみません』
「良いって、そんなの気にしないで」
『それじゃあ、また』
「朝陽くん」
『はい?』
「……声聞けて、嬉しかった」
『……っ! 俺もです。それじゃあ、また』
「うん、またね」
電話を終えた亜佑美は切れてしまった画面を見つめながら、
「……好き……別れたばっかりなのに、会いたくて仕方ないよ……」
本音をポツリと呟いていた。
一方の亜佑美との電話を終えた朝陽は、
「……亜佑美さん、本当に可愛いなぁ……はぁ……帰りたく無かったな……」
こちらも本音が漏れ出ていた。
そんな時、朝陽のスマートフォンに着信が入ると、
「もしもし」
ワイヤレスイヤホンで繋いでいることからすぐに電話に出る。
『兄ちゃん、何で電話出ねぇんだよ?』
「こっちにも都合があるんだよ。今帰ってるから待ってて」
『マジで? やっぱり兄ちゃんは優しいな。サンキュー』
それだけ言って電話は切れてしまう。
「……はぁ、俺ってやっぱり甘いんだよな……これからはもう少し厳しめにいかないと……亜佑美さんと居る時にこんなのが続いたらたまったもんじゃないし」
歳が離れていることもあって弟にはどこか甘いと自覚している朝陽は今後について考えながら帰路に着いたのだった。
コメント
1件
みぅです🖤 ああ……もう、この2人、尊すぎるでしょ……。「来週の土曜日」って約束、すごく切ないけどちゃんと未来を見てる感じがして、胸がぎゅってなったよ。弟くんに振り回されてる朝陽くんも、年上ぶって帰らせたけど後悔してる亜佑美さんも、どっちも相手想いで甘くて苦しい。 電話で「声聞けて嬉しかった」って素直に言えるの、すごくいい……。離れたくない気持ちが画面越しにビリビリ伝わってきた。次回、絶対会えるといいな。待ってます📖