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#異世界ファンタジー
99
クロたち三人は、鋭い刃物で抉られたような一筋の傷が着いた鉄の扉を開けた。
「うわぁー!ジャングルだ!」
植物が絡み合うように、鬱蒼と生い茂っている。それをかき分けた先には、ゆったりと流れる大きな河があった。
「『楽ダ』って、水の中にあるものなの?」
クロとウルフは身を屈めて覗き込む。
「あっ!」
小さな叫び声と同時に、ボチャーンという音が響いた。
「ああ……やっちゃった」
クロの背中から、カマが滑り落ちたのだ。
死神の持つカマには、一振りするだけで魂を身体から切り離す力がある。死神が死者の魂をあの世へ導く時に、なくてはならない大事な道具だ。そのカマが今は河底に沈んで見えなくなってしまった……。
「カマはなくても構わない、なんちゃって」
ウルフは呑気にダジャレなんて言っているが、彼はそれどころではない。困り果ててしきりに河を覗き込んでいると、水の中からおかしな声が聞こえてきた。
「あー、君が落としたのは金のカマかね?銀のカマかね?それとも、汚いカマかね?」
「……あっ、このシーン、昔……絵本で読んだことあります……」
花子が呟く。
「……ある村人が……斧を川に落として…しまうんです……。すると……川の精が出てきて……尋ねるんです……。『お前が落としたのは……金の斧か……銀の斧か』……と。『どちらも私のでない』……と答えると……川の精は……今度は粗末な……木の斧を……持ってくるんです……。『それが私の斧です』…と言うと……正直さを褒められて……金の斧も銀の斧も……全部もらえる……と言うお話でした……」
彼女の解説に、クロはニヤリ。声の主に向かって、返事した。
「俺の落としたのは、汚いカマです!」
「本当かね?」
「本当に本当です」
「本当に本当に本当なんだね?」
声がしたかと思うと、大きな水飛沫と共に流れから飛び出してきたのは、頭は魚だが人間のように二本足で立つ怪物、半魚人だ。しかもそいつの頭にはクロの落としたカマがざっくりと刺さっている。傷口から不気味な液体がドクドク流れ出ていた。
「お、お前たちか!このカマを投げ込んだのは!」
半魚人は腹立たしそうにクロを睨みつける。
「あ、いや。さっきのは嘘です。俺が落としたのは、金のカマです」
慌てて誤魔化そうとしたが、すでに周りを仲間の半魚人たちに囲まれていた。口々にクロたちを責め立てる。
「金のカマなど元々ないのだ。お前は嘘をついているな」
「犯人はお前たちに違いない!裁判にかけてやる!」
そして、カマの刺さった半魚人が偉そうに言い放つ。
「一緒に来てもらおうか。言い訳なら裁判所で聞いてやろう」
半魚人たちは三人を縛り上げ、深〜い河の底へ連行した。それから裁判が始まり、色々と尋ねられた。そして「ザックリの罪」にかけられる。
「コホン、これにて被告人の有罪が決定した」
ウォー、ウォー!歓声が薄暗い会場に響き渡った。
「うっかりカマを落としただけなのに、大袈裟すぎ……」
クロがぼやくと、半魚人たちはさらに騒ぎ立てる。裁判長であるカマの刺さった半魚人が、木槌で机を叩く。
「コホン、静粛に!ではこれより、被告人に対する刑を決定する被告人は次の質問に正直に答えるように」
「えー?刑なんか受けたくないぞ!」
不満そうなクロに、お構いなしに質問が始まった。全ての質問に応え終わると、電気椅子の刑に決まった。四十二億ボルトの電気が流れている椅子に座り続けるものだ。
結局クロの言い訳も聞いてもらえないまま、さっさと刑が決定された時、裁判長の様子がおかしくなってきた。具合が悪そうにフラフラ揺れている。
「うぐぐ……貧血か。頭の出血のせいだ!仕方がない、裁判はおしまい。え〜い。刑はいいから、この忌々しいカマをさっさと持っていけ!」
裁判長は、頭に刺さったカマを投げてよこした。
「……よかったですね……大事なもの…なんでしょ」
花子が声をかけると、彼はケロッと答える。
「うん!でも実はこのカマ、まだ一度も使ったことないんだ。へへへっ」
コメント
1件
うわあ第8話も最高だったよ〜!!😭💕「金のカマ?銀のカマ?」から始まるあの古典ネタ、まさか裁判に発展するとは思わなくて笑ったw クロの「俺が落としたのは汚いカマです!」って正直に言ったのに嘘つき扱いされて可哀想すぎるんだけど、結果オーライでカマ戻ってきて良かったね…!頭に刺さったまま裁判長やってる半魚人、ノリが軽すぎて逆に好き〜🤣✨次回も楽しみにしてるよ!