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取り残された木兎と赤葦は何を話したらいいのか分からず再び沈黙が続いていた。

赤葦は何を言っても相手を傷つけてしまうのでは無いかと考えて上手く言葉が出てこなかったがやっと木兎に話しかけることに成功した。

「あの、木兎さん…って言うんですよね。下の名前も教えて貰えませんか…?」

「光太郎だよ。木兎光太郎。」

「木兎コウタロウ…すごく聞いたことがある気がします。って当たり前ですね…」

申し訳なさそうに言った赤葦だったが聞いたことがある気がすると言ったのを聞いて木兎は1つの可能性を思いついた。

赤葦は中学の頃、梟谷の試合で木兎の活躍を見て入学を決めたと話していた。この1年の記憶がなくても昔の俺、高一の頃の俺を覚えていればそこから芋づる式に思い出せるのでは、と。

「なぁ赤葦、お前が中3の時にみた梟谷の試合は覚えてる?そこで俺の事見てるはずなんだけど…!」

「覚えてます…あの試合で梟谷行こうと思ったのも…凄いスパイカーがいたのも。…すみません。そこまでしか思い出せないです。そのスパイカーが木兎さんなんですか?」

「そのはずなんだけどな…」

赤葦は思ったより根こそぎ木兎に関する記憶を失ってしまったようでそう簡単に思い出せそうにはなかった。

そうこうしているうちに看護師がきて面会時間の終了を告げられた。

「また来る…お大事に」



木兎は見舞いの花束をもって赤葦の病室に訪れた。

ノックをすると返事があったので入る。

赤葦と目が合って木兎が感じたのはこの前とはまた別の違和感だった。

花束を受け取る手が震えていたのも見逃さなかった。

「赤葦、もしかして俺の事怖い?」

「木兎さんとがいうか…どうやら俺自分よりでかい男に恐怖心を抱くようになってしまったみたいなんです。」

赤葦に告げられた内容に木兎は驚きを隠せなかった。

「男でも小柄な看護師さんは大丈夫だったんです。でも先生はダメで…」

赤葦のことを見ている医者は木兎も赤葦の様子を聞いた時に会ったが身長も高く木兎ほどではないが鍛えていてがっしりとしていた。

犯人は赤葦を誘拐して力ずくで犯した奴だ。動画でも見たが赤葦よりデカいに決まってる。

「なんで急に…なにか思い出したの?」

「この前、木兎さんに言われて試合のこととか色々考えて事件のことも思い出そうとしてみたんです。でもやっぱり思い出せなくて…ただ気づいたらこんなことに。」

木兎は昨日赤葦に試合のことを話したのを後悔し始めた。

「自分よりでかい男って誘拐犯と関係あるんですか?事件については詳しく教えてもらえてなくて…」

木兎は確信した。

この記憶は赤葦に必要ない。

「俺も詳しくは知らないんだ…じゃあ様子も見れたし帰るね。お大事に。」

木兎は家に着くまで1度も振り返らなかった。


『おい、木兎!赤葦ともう会わないってどういうことだよ!』

着信を告げるスマホをとり通話ボタンを押すともしもしもなしに木葉の怒鳴り声が聞こえた。

電話の内容は少し前に送ったメールについてだ。

「送った通りだよ。赤葦とはもう…会えない。」

『だ、か、ら!その間!お前はぶっ飛びすぎなの。説明をしろ、説明を!』

「赤葦に色々話してさ、あいつ思い出そうと頑張ってくれたみたい。でもそしたら自分よりデカい男が怖くなっちゃったって。やっぱ思い出すべきじゃないんだよ。」

『そんな…わかんねぇじゃん。赤葦だって思い出したいって思ってんだろ?』

「知らぬが仏ってやつだよ。」

『木兎のくせに頭良さそうなこと言ってんじゃねーよ。』

「木葉なら小さいし大丈夫だろ。赤葦のことよろしくな。」

『赤葦よりはな!』

「そういうことだからじゃあな」

そこで電話は切れ木葉の

『俺はお前のことも心配してんだけどな』

という言葉は木兎に届かなかった。



それから木兎は赤葦とは距離を置いた。

赤葦に会いに行くことはなくなったが様子だけは木葉を通して聞いていた。

しかしもちろん突然木兎が来なくなれば赤葦が疑問に思わないはずがなかった。

「木葉さん、木兎さん最近来てないんですけど何か知ってますか?」

お前のためにもう会えないらしいなんて知ってても言えるはずなく木兎に言われた通り大学の用事やバイトと言って誤魔化した。

「俺が何も思い出せないからですかね…一緒にいても辛いだけですもんね。」

なんて言い出されたら木兎の嘘に加担している木葉は胸が痛んだ。

「お前のせいじゃねーって。赤葦は十分頑張ってるよ。」

木葉は木兎に協力して赤葦の様子を伝えたり適当な理由で来れないと伝えたりしていたが木兎の味方という訳ではなく赤葦にも全力で協力していた。

赤葦の木兎のことを思い出したいという願いを叶えるため木兎の話をしたり試合の動画を見せたりとやれることはやった。

思い出そうと努力する赤葦と忘れさせようと我慢する木兎、どちらが正しいかなんて分からなかったが木葉が一つだけ分かっていたのは今自分がいなくなったらこの2人を繋ぐものがなくなってしまうということだった。

めんどくさい2人の両片思いを見てきた者としてはこのまま放っておく訳には行かない…と。


そして犯人はというと解析された動画や部屋に残されていたものからあっという間に特定され捕まった。

捕まったのは良かったのだが赤葦の記憶が無いのをいいことに同意の上だった家出を手伝っただけと主張されなんと執行猶予が付いた。

さらに追い打ちをかけるように木兎の元に木葉からのメールが届く。

『赤葦の退院が決まった。今までみたいに頻繁に見舞いに行って様子見たりはただの先輩には無理だからな。』

木兎は考えていた。

どうして何も悪くない赤葦がこんなにも苦しまなくてはいけないのか。

どうして何も悪くない俺が赤葦に忘れられなければいけないのか。

そう、全ての元凶はあの誘拐犯だ。

あいつさえいなければ赤葦は自分より大きい男を怖がる必要もなくなる。

記憶が戻ってもあいつがいなければ赤葦は苦しまずに済むんだ…

世話をしてくれる赤葦から離れて大人びたように見える木兎だか人間そう簡単に変われるものではないらしい。



……To be continued

この悲劇に終わりを告げて

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