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「嘘……ねぇ、さっきの見て、嫉妬した?」
「は?す、するわけないだろ」
即座に突っぱねたのに、直哉は一歩踏み込み、至近距離からじっと俺の瞳を覗き込んできた。
「じゃあ、なんでそんなに顔が赤いの。耳まで真っ赤だよ」
「うるせぇ……!」
図星すぎて、恥ずかしすぎて、怒りさえ湧いてくる。
直哉は俺の様子を見て、ふっと優しく口元を緩めたあと
不意に俺の両手首を自分の大きな手で包み込むようにして掴んだ。
「兄さん」
低い声。
悪戯っぽさは消え、射抜くような真剣な目が俺を捉える。
「俺が、兄さん以外の人を好きになると思う?」
「……」
そんなの、分かっている。
直哉の気持ちがどれほど強くて真っ直ぐかなんて、痛いほど分かっている。分かっているけれど。
「……だって、お前、めちゃくちゃモテるから」
ぽつりと、心の奥に澱んでいた本音が溢れ出た。
自分でも驚くほど小さくて、情けない声。
男のくせに、年上のくせに、こんな子供みたいな嫉妬をして、本当にダサい。
すると直哉は一瞬だけ、予想外の言葉を聞いたように綺麗に目を丸くした。
それから───今までに見たことがないくらい、心の底から嬉しそうに、破顔した。
「兄さん……フフッ、もしかして、そんなこと気にして不安になってたの?」
「笑うな!こっちは真面目に……!」
「だって、可愛すぎじゃない?いつも素直じゃないのに…こういうときだけそんなになっちゃうんだ」
「だから、可愛いって言うな!」
すると直哉は、俺と目線を合わせるように急にぐっと腰を落とし、俺の顔を下から覗き込んできた。
「俺、兄さん以外はいらないよ。他がどんなに可愛くても、綺麗でも、一ミリも心が動かない。兄さんだけが好きだから」
「……」
「何回だって言う。俺の好きな人は、兄さんだけだよ」
真っ直ぐすぎる。
混じり気のない100%の好意が、逃げ場のない距離からぶつかってくる。
俺はもう耐えきれなくなって、恥ずかしさを誤魔化すように、ぐいっと直哉の制服の胸元を両手で掴んで引き寄せた。
「……分かった。分かったから、もう言うな」
「うん」
「だから…その、いちいち俺を、不安にさせんな……バカ」
言い切った瞬間
恥ずかしさのあまりに自分で自分の脳頭を殴って死にたくなった。
何を少女漫画のヒロインみたいな口を利いているんだ、俺は。
しかし、直哉は俺の言葉を聞いた瞬間
一瞬だけ身体を硬直させた。
それから、信じられないほど優しく、熱っぽい瞳で微笑んだ。
「ねえ兄さん」
次の瞬間、視界が遮られ、ぎゅっと強い力で抱きしめられた。
直哉の大きな身体が、俺の小さな身体を包み込む。
彼の胸に顔が埋まり、トクトクと激しく打つ直哉の心臓の音が、自分のもののように響いてきた。
「大好きだよ。本当に、死ぬほど大好き」
「バ、バカ、ここ学校の階段だぞ、離せ……!」
「無理。嬉しすぎて、絶対に離さない」
耳元でクスクスと笑う声が近い。
周りに残っている生徒たちの視線も、これから噂になるかもしれない恐怖も
恥ずかしさも、全部全部キャパオーバーで死にそうなのに。
……でも、直哉の腕の温もりが心地よくて。
ほんの少し、いや、かなり、嬉しいと思ってしまっている自分がいた。
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