第48話 迷える王子にスタートダッシュ
「……このまま、伯爵の言うことを聞かないほうがいいと思う」
いつもと違う様子のジェイドに、理世は思ったことをそのまま伝えた。
その瞬間、〈モノクル〉越しに見ていたジェイドの表情が――険しさと苛立ちに染まった。
「『そんなことはわかってるよ!』」
〈モノクル〉越しのジェイドは、決して口を開かない。
馬車に一人揺られるジェイドは、理世がずっと身を隠している影空間に――そんな悲痛な声を吐き出した。
「っ」
理世がジェイドから苛立ちのこもった声をぶつけられたのは、おそらく初めてだった。
冷たい態度や言葉を向けられるのは、いつも影空間の外や、理世とジェイド以外に誰かがいたときくらい。
そのときですら、こういった苛立ちをぶつけられたことはなかった、と理世は記憶していた。
「(影空間で聞くと、余計強く感じるな……ジェイドの心の声*********************
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