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──戦場の空気が重く、震えるような緊張感が辺りを支配する。乙骨憂太は冷徹な目で目の前の敵を見据えていた。戦況は混沌としており、あらゆる術師たちが一歩も引けぬ戦いを繰り広げていたが、乙骨にとってはこの瞬間こそが最も重要な局面だ。
「……模倣。」
乙骨が呟く。その言葉と共に、彼の周囲の空気が一変した。彼が模倣してきた術式は、ただの力ではない。あの「宿儺」が使う次元を斬り裂くような技、それを模倣し、宿儺に匹敵する力を手に入れようとしているのだ。
「次元斬。」
乙骨の眼差しが鋭くなると、次の瞬間、彼の手の中に集まる膨大なエネルギー。まるで空間を引き裂くかのような波動が渦巻き、乙骨の周囲の空気が一気に膨れ上がる。次元が歪み、時間すらも感じさせないその力が、彼の手から放たれる。
「――ヒット!」
突如として、乙骨の目の前に立っていた敵が次元斬の一撃をまともに食らう。空間が一瞬で裂け、敵の体が半分に分かれ、爆発的な衝撃とともに煙とともに消え去った。
その技はアドリブで放たれたものではあるが、威力は宿儺の使うそれと寸分違わぬほどの破壊力を持っていた。
「……これで終わりだ。」
乙骨の冷徹な声が響く。その瞬間、彼は再び周囲を見渡し、次なる行動に移ろうとした。
だが、その前に、彼の耳に届いたのは、仲間の声だった。
狗巻棘:「……しゃけ。」
狗巻棘が、静かに歩み寄る。彼の口元がわずかに動き、口を閉じたまま言葉を紡いだ。言葉を発するたびに呪力が渦を巻き、彼の周囲に圧倒的な威圧感を放つ。
乙骨はその動きを見逃さなかった。狗巻が戦う姿は、まさに無敵そのもの。彼は言葉を使う呪術師として、言霊の力で敵を封じ込め、物理的な攻撃ではなく、精神的、呪力的な戦いで優位に立つことができる。
狗巻:「ずっとねむれ」
言霊の力が放たれた瞬間、雷鳴のような轟音とともに空間が震え、目の前の敵がその呪力に圧倒される。口を開けることなく呪言が敵の耳に届き、瞬く間にその体が石のように固まり、動きを封じられる。
狗巻は一歩前に踏み出し、その動作の無駄な力を一切感じさせずに、静かに攻撃を完遂する。
その敵は完全に動きを止め、その場に崩れ落ちる。
乙骨は、その戦いの流れに安堵し、改めて狗巻に感謝の視線を向ける。互いの力を認め合う、そんな瞬間が確かにそこにあった。
乙骨:「……お疲れ様。」
狗巻は一度頷き、静かに戦いの余韻に浸る。彼の表情には一切の余裕があり、戦いの終息を告げるかのような落ち着きが漂う。