テラーノベル
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朝。
目が覚める。
カーテンの隙間から差し込む光が、部屋をぼんやり照らしていた。
「……」
昨日のことを思い返す。
夜、聞こえた声。
『──やっと。』
『──一緒に。』
……疲れてたのかな。
そう結論付けるのが、一番しっくりきた。
隣を見る。
らっだぁはまだ眠っている。
少しだけ寝癖のついた前髪が揺れていて、思わず笑ってしまった。
「……おはよう。」
返事はない。
当たり前か。
まだ寝てるし。
布団から抜け出して、キッチンへ向かう。
冷蔵庫を開ける。
「……何作ろ。」
昨日買った食材を眺めながら考える。
そういえば、卵もまだ残ってたっけ。
フライパンを火にかける。
じゅう、と小さな音が鳴る。
その音だけで、いつも通りって感じがして、少し落ち着いた。
「あ……」
後ろから、小さな声。
「おはよ。」
「おはよう。」
らっだぁは目を擦りながら椅子に座る。
「今日はどうする?」
「んー⋯目玉焼きがいい。」
「らっだぁ目玉焼き好きだよね。」
「いちばん最初にレウさんに作ってもらったやつだから。」
そう言うと、らっだぁは少しだけ嬉しそうに笑った。
その笑顔を見るだけで、昨日の違和感なんてどうでもよく思えてくる。
「ごちそうさま。」
皿を重ねて流しへ運ぶ。
「今日どうする?」
「洗濯したいかな。」
「あ、俺干すよ。」
「ありがと。」
何でもない会話。
こういう時間が、少しずつ好きになってきた。
昼。
洗濯物を干し終えて、一息つく。
窓を開けると、風がゆっくり部屋を通り抜けた。
「気持ちいい〜⋯。」
「今日あったかいね。」
ベランダへ出る。
新しい街は、やっぱり静かだった。
遠くで電車が走る音。
鳥の鳴き声。
それくらいしか聞こえない。
「前の家と全然違うね。」
「うん。」
らっだぁも空を見上げている。
その横顔を見ながら思う。
やっぱり、引っ越してよかったのかもしれない。
夜。
夕飯を食べ終えて、食器を片付ける。
「ありがと。」
「今日はレウさん頑張った。」
「珍しくね。」
「自分で言うんだ。」
少し笑う。
時計を見る。
まだそんなに遅くない。
「お茶飲む?」
「飲む。」
湯気が静かに立ち上る。
ふたりで湯呑みを持って、ソファへ座る。
テレビはつけない。
静かな夜。
この家では、それが普通になりつつあった。
「……昨日さ。」
ぽつりと口を開く。
「ん?」
「なんか、⋯声?が、聞こえた気がしたんだよね。」
らっだぁがこちらを見る。
「声?」
「うん。でも疲れてただけかも。」
少し考えてから、らっだぁは小さく頷いた。
「最近ずっと忙しかったもんね。」
「……だよね。」
それだけだった。
それ以上、話は広がらない。
俺も、それでいいと思った。
きっと聞き間違いだ。
そう思うことにした。
布団へ入る。
「おやすみ。」
「おやすみ。」
電気が消える。
静かだ。
目を閉じる。
眠気が少しずつ近づいてくる。
その時。
頭の奥で、ほんの一瞬だけ。
音が鳴った。
歌ではない。
声でもない。
耳で聞いたわけでもない。
それでも確かに、どこかで聞いたことのある旋律。
夢の中で。
ずっと昔に。
「……」
目を開ける。
部屋は暗い。
隣では、らっだぁが静かに眠っている。
旋律は、もう消えていた。
「……気のせい、かぁ。」
そう呟いて、もう一度目を閉じた。
眠りは、何事もなかったようにゆっくりと訪れた。
NEXT=♡1000
雨月
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コメント
6件
目玉焼き好きな理由最初に作ってもらったからなの可愛すぎる