反吐が出そうなくらいに甘い話ばかり聞かされて、思わずため息が出る。
曰くずいぶん久しぶりにできた恋人だそうで、それはもう可愛がっている。見ている僕が恥ずかしくなるほどに。
「聞いてます?俺がかっこよくって近くで見れないって!可愛くないですか?」
途中までは聞いていたが、途中からは聞いていない。大切な相棒と可愛い後輩の惚気なんて進んで聞きたがる方がどうかしている。
そりゃ僕だってぼんさんに恋愛相談をしたことはある。だがぼんさんのそれは相談ではない、惚気なのだ。
というかそもそも
「本人に言ってやればいいじゃないですか。そんなに愛されてるって知ったら喜ぶと思いますよ、MENも。」
可愛いと思ったときにその場で可愛いと言えばいい。僕もMENもその方が幸せでしょ。
そう思うのにぼんさんはなぜか首を横に振り、大きなため息をつく。
「いやいやいや、ドズさん。」
「はい、なんですか?」
「わかってないのよ。」
「…わかってないってなにが、」
ぼんさんのこともMENのこともそれなりにわかったつもりでいる。だからこそ直接言えばいいと言っているのに。
「MENは可愛いって言われるのは嫌いって言ってるでしょ?」
「…そうですね」
「だからよ」
「あれって嫌よ嫌よも好きのうちみたいなもんじゃないですか?ぼんさんなら喜ぶと思いますよ」
「……えへへ〜、そう?」
いい歳したおっさんがえへへって。
MENのあれはアイドルのように扱われるのが嫌だ、という意味だと思ってるけど。言われ慣れてないのもあるかな。
「でもさぁ〜。もし、もしもよ?」
「…はい」
「もし本当に嫌がってたらどうすんのよ?俺MENに嫌われたらかなりショックなんだけど」
今日何度目かのため息が出る。
でもだってが多いのだ、この男は。
「大丈夫ですって。ウジウジしてる方が嫌われますよ。」
「うっ、痛いとこ突くねぇ…」
別にぼんさんがMENに可愛いと言おうが言うまいが僕には関係ないんだけど。でもぼんさんがこんなにMENに溺愛してることは僕じゃなくってMENが知っておくべきだろう。
「……今度、今度ね。がんばります」
「今度っていつですか?」
「今度は今度よ。明日デートの約束あるから♡」
「おおー、がんばってください」
「感情がこもってないのよ」
なんだかんだ2人には幸せになって欲しいんですよ。
「無理はさせないでくださいね?」
「やかましい!」
でも、明後日の撮影に支障が出たら適わない。
コメント
1件