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「お前は市来組の夜永だったか? 探していた女を匿ってた糞野郎はよぉ!」
そして、郁斗の方に視線を移した黛は言いながら銃を取り出すや否や、何の躊躇いもなく郁斗の手首目掛けて弾を撃ち込むと、郁斗の手から拳銃を落とした。
「……っ、」
「郁斗さん!? いやぁっ!!」
撃たれた場所からは血が流れ、それを見ていた詩歌は悲痛な叫び声を上げた。
「おい、迅。さっさとその女を運べ」
「あ、ああ。分かってる」
「止めろっ!」
郁斗は痛みを堪えつつ、詩歌を守る為近付こうとするも、
「うるせぇ。次動いたら女を殺す。いいのか? コイツは大切なんだろ? なら、その場で大人しくしてろ」
「……っく……」
黛は迅に抱えられた詩歌に銃を向けながら郁斗を牽制する。
「迅、早く行け」
「お、おう」
「い、郁斗さん!!」
「詩歌!」
迅の姿が見えなくなった瞬間、郁斗が動こうとした、その時、
「女の事は心配すんな。俺の元で可愛がってやる。花房や四条は始末するから、もう誰も女を探す奴はいねぇよ」
笑みを浮かべながらそう言い放った黛は、郁斗の心臓を狙って引き金を引き、パンッという乾いた音と共に郁斗の体が崩れ落ちていくのを見届けてその場を後にした。
「黛さん……殺ったのか?」
「ああ」
「そうっすか」
車に戻ってきた黛に郁斗を殺したのかと尋ねた迅。
そんな二人の会話を聞いていた詩歌は、黛が肯定した事によって全身から血の気が引いていくのを感じていた。
そして、
「……嘘……ですよね?」
「あ?」
何とか絞り出して言葉を発した詩歌に、横に座り眉を顰めながら迅が彼女を見やる。
「郁斗さんを、殺したなんて……嘘、ですよね?」
震える唇で再度問い掛ける彼女に、助手席に座っている黛は斜め後ろに座る詩歌に笑みを見せながら言う。
「嘘じゃねぇよ。この手で始末してやった。鬱陶しい蝿は始末しねぇとだろ」と。
それを聞いた詩歌は窓の外に視線を向けながら、
「嘘っ…………いやっ!! 郁斗さんっ!! 郁斗さん!!」
届かないと分かっていてもそう叫ばずには居られず、何度も郁斗の名前を呼んだ。
そんな詩歌を鬱陶しく感じた黛は迅に、
「おい、その女を黙らせろ」
そう指示をする。
一瞬面倒そうな表情を浮かべた迅は窓の外に顔を向けて叫び続ける詩歌の後頭部に拳銃を突き付け、
「おい、それ以上騒ぐな。郁斗はもう死んだ。お前がどんなに叫んだところで生き返りはしねぇんだよ」
追い打ちを掛けるように郁斗が死んだ事を伝えると、諦めたように黙り込んでしまった詩歌は静かに涙を流す事しか出来なくなってしまうのだった。
一方、撃たれて倒れた郁斗の元へ恭輔が手当を終えた美澄や小竹を連れて現場に辿り着くと、血溜まりの中に倒れている郁斗を見付けた瞬間、三人の顔から血の気が引いていく。
「郁斗!?」
「郁斗さん!!」
「しっかりしてください!」
状況から見て、郁斗はもう死んでしまったのではないか、恭輔が郁斗の身体を抱き起こした――次の瞬間、
「…………っ…………」
小さく呻き声を上げながら眉を顰めた郁斗を見て、まだ生きてる事を知ると三人は安堵した。
「郁斗! 平気か?」
「…………、恭……輔、さん……」
「すぐに病院に運ぶ。おい美澄、車をすぐ側に付けろ」
「はい!」
「小竹、お前は車にあるタオル持ってこい、止血に使う」
「はい!」
恭輔に指示された二人は急いで車に戻って行く中、徐々に状況把握をした郁斗が苦しそうにしながらも辺りを見回そうとする。
「おい郁斗、動くな」
「……、し、いか……は……」
「残念ながら、ここには居ないようだ」
「……恭輔……さん、詩歌は、黛の……野郎に……」
「黛? アイツがやったのか?」
「そう、っす……」
「どうやら急所は外れているようだが、弾が残ってるかもしれねぇ。とにかくもう話すな、動くな」
「けど……、このままだと、詩歌が……」
「俺の方ですぐ捜索する。とにかくお前は病院が先だ!」
再び美澄や小竹がやって来たのと同時に郁斗の意識は遠のいていき、詩歌を心配したまま意識を失ってしまった。